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宝塚歌劇雪組東京公演「星逢一夜」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル・ノスタルジー
「星逢一夜」

作・演出:上田久美子
作曲・編曲:高橋城、青木朝子、高橋恵
音楽指揮:西野淳
振付:若央りさ、峰さを理
殺陣:清家三彦
装置:新宮有紀
衣装:任田幾英
照明:勝柴次朗
音響:実吉英一
小道具:加藤侑子
歌唱指導:山口正義
演出助手:指田珠子
衣装補:加藤真美
舞台進行:片桐喜芳

バウホール公演「月雲の皇子」でデビュー、ドラマシティ公演「翼ある人びと」を経て、3作目で大劇場にデビューしてしまうという、21世紀の宝塚期待の星、上田久美子先生のオリジナル作品。

舞台は九州中部にある三日月藩という小藩。
いつものように遊んでいた村の少年少女。その中に、源太(望海風斗)という少年と、泉(せん・咲妃みゆ)という少女がいた。二人は、星逢(七夕)祭の前に、不思議な少年に出会う。彼は、星を見る櫓を作りたいと言う。とても一人で作れそうにない少年のために、源太が率先して、村の少年少女を動員して櫓を完成させた。
櫓からは、星が見えた。
その不思議な少年が、藩主の息子、紀之介(早霧せいな)だった。それを聞いて泉が色めき立つ。この村の子供たちは、数年前の一揆で親を殺された者が多かった。しかし、庶子の紀之介は、藩の事情をなにひとつ知らなかった。
少年たちは、紀之介と一緒に仲良く育った。しかし、突然、紀之介の周りの環境が変わった。跡継ぎの兄が死に、本来そんな立場になかった紀之介が藩主の跡取りとして江戸に行くことになったのだ。
江戸で将軍、徳川吉宗(英真なおき)に謁見した時、ものおじしない、利発な晴興(紀之介)は、将軍に気に入られて、どんどん出世。後ろ盾のない晴興が出世するためには、徳川家の姫と結婚する必要があり、吉宗の姪にあたる貴姫(大湖せしる)と婚約し、一度故郷に帰る。
その時、祭りで成長した泉と再会し、美しくなった泉に激しい思慕を抱く。泉と源太はこの時、既に祝言が決まっていたが、泉を嫁にしてくれるなら、自分は身を引く、と源太に言われ、既にそうできない自身の身の上を晴興は自覚する。そんな晴興を見て、泉はすべてを悟って、晴興を忘れて源太との幸せを築こうと決める。
時が流れ、晴興は、享保の改革に邁進するが、その改革は、三日月藩のような貧しい藩には、命取りとも言えるものだった。源太たちは、再び一揆の相談を始める。吉宗は、晴興自身に一揆を鎮めるように命じる。そして―

トップと2番手がトップ娘役を争う…宝塚の典型的な芝居のパターンだが、これほど、美しく、哀しいドラマがあっただろうか。
二人の男が女を争う、だけでなく、その二人の男の間にも、感情の行き来がある。それも、きっぱり親友というのではないところがニクい。主人公の紀之介が現れなければ、普通に結ばれていただろう村の少年少女。ところが、そこに藩主の息子である紀之介が現れ、少年の心にも、少女の心にも強烈な印象を残す。
一方的な憧れではない。星を見る少年に託す夢と、どこかズレたところのある少年の世話をやきたい気持ちと、どんどん少年に惹かれていく少女の想いと、そんな少女の想いを切なく感じる少年の複雑な感情と…
星逢の祭の夜、晴興は、泉を見て、自分の恋心を自覚する。
その時、源太が突きつけたのは、「お前が嫁にもらってくれるなら、俺は諦める」という言葉。それまで、晴興の頭の中に去来していた思いはなんだったか―藩主として当然のこと、泉を側室に…という考えではなかったか。自らも側室の子として、誰からも期待されることなく、寂しい少年時代を送ってきたというのに。
土下座する源太を見て、晴興は自分の心の貧しさを激しく自覚したと思う。
その二人を見て、泉は、すべてに気づいたんじゃないだろうか。
どんなに激しい恋心を抱いても、側室にする、以外の選択肢を考えもしない藩主と、それに気づかせるために、敢えてできもしないことをしろと言って土下座も厭わない許嫁と。源太と結婚すると決めたくせに、晴興に求められたら、側室でも構わないと思ってしまうだろう自分の本心と。
それは、でも、人の心の穢さではないと思う。誰もが抱いてしまう感情。晴興も、源太も、泉も、みんなやさしい。そして、美しい心を持っている。その中にほんの少し混じった澱のような思いを、彼らは一生忘れない。それほどに、清らかな三人だから、結末が悲しい。切ない。そして苦しい。

大劇場にこんなに美しい物語を乗せた久美子先生の次回作が、今から楽しみでならない。

出演者は、誰も彼もみーーんな、美しくて切なかった。雪組のみなさん、ありがとう[黒ハート]
(詳細は次の記事で)


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