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東京宝塚劇場花組新人公演(カリスタの海に抱かれて)ミニ感想 [┣宝塚観劇]

本公演の「カリスタ」の駄作感がハンパないので、新公は大変だろうなーと思っていたら、これが意外と「ザ・タカラヅカ」的な作品に仕上がっていて、脚本・演出・出演者の組み合わせの妙を感じる一夜だった。
大石静先生は、それなりに知名度のある一流の脚本家でいらっしゃるが、宝塚の脚本家としては、まだデビュー2作目。それも演出助手などの仕事をせずに脚本を書いているのだから、宝塚の脚本家としては、「全然なっていない」。それを石田先生が、今の花組で上演できるような作品にするため、何度も大先生に脚本を直してもらい、自身も手を入れて最終的に大先生を説得し、八方丸く収めてようやく日の目を見る作品となった(と推察する)。
だから、さすがに、28歳の大人の男が、中二病みたいな恋をしている話ってどうよ[爆弾]などという根幹的な部分にまでチャチャを入れることは許されない。
大石先生は、テレビドラマの脚本を主に担当されているから、出演者の実年齢とかけ離れた年齢設定をすることに躊躇があるのかもしれない。それに、今の若者はとても幼くて、28歳で中二病も十分あり得るもんね[爆弾][爆弾][爆弾]
で、新人公演担当田渕先生は、大石静大先生脚本であることよりも、フラットに1本のミュージカル台本を読み解くようにこの芝居を再構成してくれた。登場人物の年齢設定を忠実に描き出すことよりも、出演者の等身大の姿を投影することにエネルギーを注いでくれた。
そして出演者は百戦錬磨の本役ではなく、フレッシュな新人たち。
脚本の問題点がハッキリし、同時に脚本に問題がなかった部分もハッキリした。本公演の感想を書く時のよい指標になったような気がする。

水美舞斗(シャルル・ヴィルヌーブ・ドゥ・リベルタ=カルロ・ヴィラーニ)…今回が初主演で、しかも長の挨拶も兼ねるということで、終演後の挨拶のとっちらかりっぷりはものすごかったが、公演は落ち着いていて、とてもよい出来だったと思う。
なにより、カルロ役とは、本来こういう役だったのではないか、という自然な役作りに好感が持てた。
設定年齢は28歳だったが、水美は、28歳だと思って演じてはいなかったような気がする。士官学校を出てすぐフランス革命に遭遇し、なり手のなかったカリスタ島の司令官に立候補して、うまい具合に潜り込めたような感じ。年齢・階級的に司令官は無理なら、司令官補佐みたいな役職で、無理やり乗り込んだ的でもいい。
そんなマイティ=カルロの長所は、圧倒的な人への優しさだろう。傷ついている人には、言葉をかけずにはいられない、見知らぬ誰かの幸せのために喜んで命を投げ出すような。揺れる瞳がとても魅力的なカルロだった。

城妃美伶(アリシア・グランディー)…本公演のヒロインが、あまりにも素っ頓狂キャラなので、脚本家のヒロインの描き方に問題があるのではないか、と思っていたが、城妃は、難なくクリア。とても愛らしいヒロイン像を作っていた。そっか、典型的な宝塚の娘役ができる子なら、逆にこの手のヒロインは新鮮な魅力になるのか!という発見があった。
今回から大劇場で主演することになる花乃まりあが、典型的なヒロインキャラじゃないことなど、大石先生にはわからなくて当然なので、本公演のミスマッチは、運が悪かったと思うしかない。
城妃は、声のトーンが落ち着いていて、きゃぴきゃぴしたセリフにも嫌味がなく、主人公にドレスをおねだりする場面も、ダンスの相手をせがむ場面も、可愛いからすべて許せる。ロベルトを好きじゃなくて、だからこそ、この島では行き場がなくて…という役作りに見えたが、新公は、そういう作り方があってもいいと思った。
実力に穴がない素敵な娘役さんなので、今後一層の活躍を期待したい。

優波慧(ロベルト・ゴルジ)…表情の作り方が悪役顔なところが、非常に気になった。
その結果、悪いロベルトに横恋慕されて困っている可愛いヒロイン・アリシア、という図式が、それなりに納得できてしまったのは、結果オーライなのかな。(ラストシーンへの急展開は、心やさしいカルロの「信じる心」がロベルトの「邪悪な心」を改心させました、という、まるで「白夜伝説」みたいなオチか[exclamation&question][あせあせ(飛び散る汗)])2番手が悪役(最後改心)設定の方が、本役(芹香斗亜)版より、座りはいいかも…。
優波には、本気で悪役を目指すのなら、それはそれで応援したいが、真ん中付近を目指しているのであれば、早急にメイクの改善をしてもらいたい。

乙羽映見(アニータ・ロッカ)…専科の美穂圭子おねえさまの役を、見事に演じ切った。
歌声がとても美しい。大人っぽい美貌の持ち主なので、片目が隠れていたのはちょっと可哀想だったが、存在感があって素晴らしかった。
「あたしの男」は、本役さんの艶っぽさはなかったが、その分、真剣さが伝わって来て、これはこれでアリだと思った。
「生きることは、あきらめること」の歌は、若さが出てしまったが、四重唱を支えた歌唱力は見事だった。

高峰潤(アルド・アルフォンソ)…組長さんの印象的な役をしっかりと演じていた。まだ研3[exclamation&question]すごい立派[exclamation]

峰果とわ(ブリエンヌ提督)…勘違い貴族(典型的なフランス貴族)のブリエンヌさんは、研4の峰果に…なんか、花組の下級生、みんなデキるなぁ~[あせあせ(飛び散る汗)]

綺城ひか理(セルジオ・グランディー)…今回のお目当てです[揺れるハート]
アリシアの兄で、ロベルトの片腕。
頭にバンダナを巻いたら、ますます顔が小さくなって、スタイル抜群。
たぶん、あんまり頭はよくないけど、威勢だけはよくて、ベラに頭が上がらない、目の前のことにめいっぱい一喜一憂して人生を過ごしちゃう男なんだろうなぁ~[黒ハート]彼を愛しく思うベラの気持ちがわかるな~[かわいい]
必要があれば、嘘もつく本役(瀬戸かずや)とは違って、「アリシアを抱いた」の「抱いた」が小声になってるあたり、嘘もつけないんだろうなぁ~[わーい(嬉しい顔)]大統領には決して向かないけど、でも、あんたにはベラがいるから、幸せだよ~[揺れるハート]と思う、そんなセルジオでした。
得意の歌がなかったのが、ちょっと残念。

紅羽真希(クラウディオ・カレーラ)…シモーヌとのラブラブぶりがとても可愛かった。集団芝居で、少々埋没感があるように思ったが、セルジオを観るのに忙しかっただけかもしれない[バッド(下向き矢印)]

柚香光(マリウス・ベルトラム・ドゥ・シャレット)…柚香は、本役が3番手なので、今回は、主演の水美の同期として、彼を支えるための出演という感じ。
本役・鳳月杏のいかにもフランス青年貴族的な鷹揚さとは違った骨太な役作りで、「柚香のベルトラム」を確立していた。ラスト、イザベラに手を差し伸べない亭主関白な雰囲気も役作りに似合っていた。
ただ、新人公演は勉強の場でもあるので、本役の間の良さとか、言い淀む時の言葉の紡ぎ方とかは、もっと取り入れてもよかったのでは[exclamation&question]と思った。
関係ないが、新公が終わった後、スタンバイしている柚香のファンクラブの人数に圧倒された。この学年でこの人数はちょっとすごいな!

矢吹世奈(ナポレオン・ボナパルト)…さすがに達者な人は違うなぁ~と思った。本役(柚香)の強烈な役作りに引っ張られることなく、若く優秀なカリスマ軍人としてしっかり造形していた。
ラストは、この人の庭になったカリスタの悲劇を予感させる重さも十分だった。

その他、印象に残ったメンバーについて。

本公演で城妃が演じていたシモーヌ役は、同期の春妃うらら
これまた本役以上に可愛らしい[かわいい]
同期だからこそ、本役とは違う役作りを試みた感じで、まったく違うシモーヌ像がちゃんと成立していた。
同志たちを屋敷へ引き入れる場面の「気をつけて」であるとか、カルロを庭へ誘導する件など、心やさしく心配性なキャラが際立っていた。一人残ってスポットを浴びる「命の重さ…」のセリフもくっきりと印象に残った。

天真みちるが怪演したバルドー役は、碧宮るか。天真の後継者になり得る逸材。今後に期待したい。

その妻を演じたのがトップ娘役の花乃まりあ。どっちかというとカメオ出演的な役どころだったのかな[exclamation&question]新公に出るなら、まだまだ娘役としてしっかり勉強してほしい。笑いを取ろうなんて、10年早いと思う。

ブリエンヌ総督の妻役は、更紗那知。丁々発止の夫婦という感じで、本役(華耀きらり)とは違うアプローチがしっかりとできていた。

娘のイザベラ役は、朝月希和。総督府のサロンでカルロと踊るところのセリフなど、こんな島に長年暮らしている年頃の娘のイライラ感が伝わってきてよかったと思う。

オリーブの精(歌手)の音くり寿は、とてもステキな歌声。本公演でもそのうちエトワールとかやってほしい。ロベルトの少年時代も可愛かった[かわいい]


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