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「ifi(イフアイ)」観劇 [┣ミュージカル・音楽劇]

「ifi(イフアイ)」

作・演出:小林香

音楽:スコット・アラン、扇谷研人、堀倉彰、KENSHU(illxxx Records)、SUPA LOVE
編曲・音楽監督:扇谷研人
映像・空間監督:東市篤憲(A4A)
振付(場面順):SHUN、ケント・モリ、エイドリアン・カンターナ、ANJU、黒須洋壬、ティム・ジャクソン、chaos
照明:高見和義
音響:山本浩一
美術:土岐研一
衣裳:伏見京子
ヘアメイク:クワハラヒロト
歌唱指導:ちあきしん
翻訳・通訳:天沼蓉子
演出助手:森田香菜子
舞台監督:酒井健

宝塚を卒業したばかりの蘭寿とむを主演に迎えた梅田芸術劇場主催公演「ifi(イフアイ)」を観劇した。
このショーは、RPGゲームのように、主人公が選択する場面がある。その選択によって、AとB、ふたつの結末が用意されている。蘭寿演じるユーリの恋人であるヒロ役がWキャストだったこともあり、ジュリアン出演の前半はA、黒川拓哉(LE VELVETS)出演の後半はBの脚本で上演された。
タイトルの「ifi(イフアイ)」は、“If  I…(もしもあの時私が…)”だ。
インディーズの映画監督であるユーリ(蘭寿)は、映像カメラマンである恋人のヒロ(ジュリアン/黒川)と歩いている時、若者たちがケンカしている場所を通りかかる。その時、ユーリはヒロのビデオカメラを奪い取って撮影を始める。若者たちは撮影を拒否するが、ユーリはやめない。そして、連中は仲裁しようとするヒロをボコって殺してしまう。
既に、この状態だけで5個位、もしもし?ということが起きているが、それは後ほどゆっくり書くとして、この時以来、ユーリの心に巣食っている“If  I…(もしもあの時私が…)”が、作品を貫く大きなテーマであると、思う。
その、“If  I…(もしもあの時私が…)”は、当然、「もしもあの時私が撮影をやめて、帰っていたら…」だ。
そういう映像も出てくる場面はあるのだが、ユーリが選択させられる世界には、それはない。
彼女は究極の選択を迫られ、AとBで真逆の選択をする。
そして、その真逆の選択の結果、残された映像もまた真逆なものとなるのだが…それって…アリかな?と思った。
アリにするなら、ちゃんと罠(伏線)を仕掛けておいてくれたら、おおーっ!となるのにな~[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]と、まあ、色々、脚本には言いたいことが…[むかっ(怒り)]
しかし!
蘭寿さんの生腹観たし、ま、いっか[いい気分(温泉)]と思う部分もあるのは事実で…それだけ、鍛え抜かれた生腹の威力は抜群だった。

開演前から舞台の上には、正六角形の半透明スクリーンがあり、ここに映像が写し出されたり、紗幕の役割を果たしたりしている。
白い衣装のダンサーたちが踊る中、登場した蘭寿は、白のハーフパンツに白のパンプス風ダンスシューズ。交差するシューズのストラップがフェミニン[るんるん]退団からそれほど時間が経っていないため、髪形もショートだし、大きな変化は感じない。ただ、表情のやわらかさが、男役ではないんだなーと感じさせる。第一印象は、そんな感じだった。
さて、ドラマは、ユーリの寝室から始まる。無防備に眠るユーリの姿にかぶって、映像が流れる。
画面上に「REC」の赤丸が点滅していた=リアルタイムで録画中を意味すると思うが、実際には、この時点でこれは過去映像だった。
現在と過去を行き来しながら進む物語なので、ミスリードするような映像はいただけない。RECマークをどうしてつけたのだろう…[爆弾]
恋人のヒロが撮影したプライベート映像という体らしい。インディーズの映画監督であるユーリは、新作映画「オルフェ」の脚本作りに夢中。恋人の様子を案じるヒロの提案はことごとく無視される。そして二人が交わした約束もすべて延期・延期。あげくのはてには、何のために約束するのかわからないとまで言い出す。
カメラを固定に切り替えたヒロがカメラに向かって「ユーリ、イフアイ…イフアイセッド」と呟く。この続きは、最後に出てくる。ここでは、ヒロは言わずに終わるのだが、If I said と、過去形であることが気になった。いや、たしかに、最後には過去形になってしまうのだが、ここでは、現在形だろう!と。もしや、すでにフラグですか[exclamation&question]

(言っている時点で、本人に伝える気持ちが0%なら、“If I said”でもいいが、それ、本人に聞こえるように言ってるなら、やっぱり“If I say”でしょう[exclamation×2]本人に聞こえるように言ってる時点で、とてもいやらしいと思うけど…[爆弾]

ところで、ヒロという名は、日系なのかな?
ジュリアン版だと、ヒロの方が欧米系の顔なので混乱する。また、出てくる人がほぼアジア系なのに、舞台はニューヨークっていうのも、なんか気になってしまう。舞台劇ではまったく問題にならないことが、映像を使うことで、一々引っかかる。NYにする必要、あったかなぁ[exclamation&question]と。(日本を避けるなら、明洞辺りにするとかでよかったのに…)
舞台では、どこの国の人間の役でも気にならないが、映像だと、いや、どう見ても日本人だし…的突っ込みは、起きてしまうような…[あせあせ(飛び散る汗)]

続くケンカのシーンについても気になった。ケンカはダンスで表現されている。舞台ではそれもありだ、というか、それがミュージカルだ。しかし、映像では、ダンスだけでは表現できないことが重要になってくる。
誰と誰がケンカをしていたのか。本当にケンカだったのか、リンチではなかったのか。
それによって、ユーリが撮影することの是非が変わってくる。単なるケンカであれば、本人が拒否しているのを撮影するのは、肖像権の侵害になる。絶対にやってはいけない。映像を生業にしているなら、それは基本中の基本のハズだ。あの時、こうしていたら…とかの話ではなく、映画監督としての適性に関わる。
リンチなら、撮影することで逮捕に協力できるかもしれない。正義の市民として立派な行為だから、恥じることはない。むしろあの時やめてれば…と考えることの方が、蘭寿が演じるキャラとしてカッコ悪く思える。
どちらにしても、映像で見せるよりは、舞台で表現した方が、内容を理解できるし、ドラマチックだったと思う。
また、せっかくの素晴らしいダンスパフォーマンスが、小さな半透明のスクリーンに映し出されるだけで終わってしまうのももったいなかった。

こんな風に、突然、最愛のパートナーを失ったユーリは、亡きヒロの弟(パク・ジョンミン)が経営する<This or That>という食料雑貨店に通いつめる。ここには、占い師(ケント・モリ)が常駐していて、ユーリは、かつて信じられないと語っていた“占い依存症”に自ら陥っていたからだ。
そして、彼女は、占い師の誘いを受け、「ifi(イフアイ)」の世界に飛び込む薬を飲み干す。
その世界では、

  1. 必ず、二択の選択をしなければならない[exclamation]
  2. ヒロに会っても、口をきいてはならない[exclamation]

という、約束事を守らなければならない。

一応、この辺りがプロローグに当たる部分。
本編は、ユーリがかつて製作した映画のタイトルによって表現されている。
「マスカレード」は子供を失った夫婦の物語、「エステュディオ」は友人を捨てて栄光をつかんだ男の物語、「キャバレティスト」は二人の男と一人の女の三角関係の物語、そして最後にユーリとヒロによる、「オルフェ」らしき場面があって、それぞれユーリの選択によって結末が変わる―という内容。

「マスカレード」は、白河直子を子供を失った母親にキャスティング、思う存分踊らせている。クラシックバレエと、コンテンポラリーが一緒になったような、不思議な空間にアニメーション映画を溶け込ませ、独自の世界観が表現されていた。

「エステュディオ」は、ラテン系のナンバーを蘭寿らが、歌い踊り、客席降りもあるシーン。
胸元の大きく開いたワンピース姿で客席降りする蘭寿は、2階席からは、大変無防備で…すいません[あせあせ(飛び散る汗)]オペラグラスを上げてしまいました[いい気分(温泉)]
(実は、大空さんも胸元には無頓着なんですよねー[わーい(嬉しい顔)]

続く「キャバレティスト」。
ここでは、蘭寿のセクシーなダンスが観られる。へそ出しの衣装も。Aパターンでは黒のシースルー、Bパターンでは生腹…どちらも、鍛え抜かれた見事なスタイルに感服[キスマーク]ラスタ・トーマスとのデュエットダンスも美しく、うっとりする。
やがて、もう一人の男性ダンサー(佐藤洋介/SHUN)とラスタ蘭寿を争うような振付…しかし…いつの間にか、ラスタは、蘭寿を振り切ってその男性を選ぶ。
え…ゲイ・カップルだったの[exclamation&question]というショックも含めて、私はAパターンの方が好きだったな~[わーい(嬉しい顔)]
Bの方は結末が分かっていたので、そこまでのショックはなかったし、耽美的なムードもAの方が強かった。

この3つの物語を経て、最後にユーリは、ヒロのいる世界に辿り着く。

[exclamation×2]

えーと、えーと、決してしゃべっちゃいけないとか、あのおどろおどろしい“お約束”はいったい…[exclamation&question]

もちろん、芝居なのでね、心の声を少しだけ交わすっていう演出はあると思う、もちろん。
でも、ユーリとヒロは、長々と言葉を交わしている。でもって、Aパターンは、普通にユーリが元の世界に戻ってくる。
別にしゃべってもよかったの[exclamation&question]あー、でもそういえば、もう一つの設定、必ず、ユーリがどちらかを選択しなければならないっていうのも、選択肢が正反対のわりに、それぞれの場面で、結果との整合性がよくわからなかった。

そして、Bパターンのラストが、まさか、まさかの、ifi(イフアイ)=「もしも、私があなたの代わりに死んだら…」というミもフタもないもので、絵面としては美しいし、残された映像もなるほど…と思うものだったが、そもそも、それはユーリ自身が望んだ結果なのだろうか[exclamation&question]とか、女を身代りにして生き返る男という設定そのものがビミョーに感じることもあり、ありゃりゃ…という気分に[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]

そういう不満はあれども、蘭寿とむの退団後初舞台が、このような、ダンスミュージカルであったことは、単純によかったなーと思う。
振付家も一流、出演者もさまざまなダンススタイルの第一人者、そんな中で躍動する蘭寿の肉体に見惚れる、かけがえのない時間となった。

語れる肉体を持ってるって、すごいなぁ~[ぴかぴか(新しい)]

【今日の言葉】~宝塚日めくりカレンダーより~
「もう僕は君の傍にはいない方がいゝんだ。そして君は本当の僕の姿を見ない方がいゝんだ」byピエール@『嵐の姉妹』
演出:白井鐵造
作:内村禄哉
月組 1956年

掲載されている写真は、松乃美登里さん、夏ノ宮千世子さんでした。


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コメント 2

月光

私もAパターンの方が好きでした。
蘭寿さんのおなか…ことにキュートなお臍に…見惚れました。
もっともっとダンスシーンがあってもよかったのに、とものたりない思いもいささかよぎりましたが。
by 月光 (2014-10-26 21:33) 

夜野愉美

月光さま
コメントありがとうございます。
ダンスシーンだけの公演にする方法もあったのでしょうが、NEW蘭寿のスタートとして、ダンスだけでなく、歌も芝居も、という方向性を示したかったのかもしれないですね。
観客としては、ついつい贅沢な希望を言ってしまいますが。
by 夜野愉美 (2014-10-26 23:48) 

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