Studio Life「トーマの心臓」感想 [┣Studio Life]
「トーマの心臓」については、過去何度も感想を書いているので、ここでは、今回の変更点と、役者の感想を。
上演のたびに、色々と手を入れる「トーマの心臓」だが、今回は、及川エーリクとそれ以外で、別演出になっている部分があった。(及川版では、エーリクが台詞を喋るのだが、新人の二人の時は、エーリクの心情が字幕に映し出されていた。これって、倉田さんが及川エーリクの上手さに信頼しているってこと)また、今回初めて、トーマが台詞を言う。
そして、超残念なことに、オスカーと校長のシーンがカットになっていた。これは、舞台装置の都合かな次回は復活してほしい。
<ユリスモール>
山本芳樹…まさかの山本×及川復活には驚いたが、奇跡の復活劇だった。さまざまな役を経てたどり着いた今回のユーリには、逞しさが加わっていて、過去最高の出来だった。たぶん、今度こそ卒業だと思うが、最後に素敵なユーリを見せてくれてありがとう
松本慎也…前回はエーリクだったが、松本は、エーリクよりユーリの方が似合う。やや長めの黒髪でシュロッターベッツの制服を着た姿は、立っているだけでユリスモールだった。キャラとしてもユーリの方が似合っていることが、全編を通して感じられた。松本の場合は、今後も出演するだろうし、もっともっと深いユーリを作ってくれそうで、楽しみな予感
<オスカー>
岩崎大…今のライフだと、岩崎オスカーというのは自然の流れなんだろうな~とは思った。でも真面目な場面はともかく、同級生たちに「さ、行こうぜ」とか軽く声を掛ける場面なんかの、なんともいえないオカマっぽさが…残念すぎる
仲原裕之…芝居として、安定している。でも、色気がない。もうね、仲原、逆さにしても色気のカケラもないんじゃないか…と思う。そして色気のないオスカーなんて、オスカーじゃない
<エーリク>
及川健…萩尾先生の少年キャラがこれほど似合う俳優を私は知らない。それは、初めてこの目で及川を観た2003年の「トーマ…」から変わっていない。しかし、あの時は、それほど芝居が上手い人だという印象がなかった。客席から肉眼で舞台を観ていると、小さくてよくわからないが可愛い感じ。オペラグラスを覗くと意外と皴っぽい。そして声が時々ものすごく男の声になる。やわらかい声と素の男声とがどっちも飛び出して安定しない。オペラグラスを上げたり、下げたり、どうしたらいいのか、よくわからない状態で過ごした。
あれから10年以上経過し、もはや少年役など演じそうにない状況で、奇跡のようにキャスティングされたエーリク。そうしたら、今度は、神がかって、少年だった。もはや、オペラグラスなど覗く必要はない。全身で彼が少年を演じている。どこにも違和感などない。叫んでも怒鳴っても。
この奇跡は、神がライフファンに与えてくれた恩恵なのか、故河内喜一朗氏の神通力なのか。
まさかエーリクが来るとは思わずに髪を切っていたこともよかったかもしれない。エーリクの鬘がよく似合っていた。最高のエーリクをありがとう
久保優二…エティエンヌを観た時から、この日が来るのを確信していた。まさになるべくしてなったエーリク。ユーリより大きく、下手するとオスカーより大きいかもしれないけど関係ない。
しばらくは、ただ、素直に役に向き合って、まっすぐに育ってほしい役者だ。演じてほしい役は山ほどある。大きく、伸び伸びと、先のことなど考えずに、今を演じてほしい。期待しています
田中俊裕…これだけの芝居を観たのは初めてだが、たぶんすごく緊張していたのだろう。アフタートークの時、初めて、ああ可愛い子なんだなーと思った。芝居をしている時は、なぜ彼がエーリク役なのか理解できなかった。それくらい顔がこわばっていたらしい。大阪公演は体調不良で休演してしまったみたいだし、今回のエーリクは時期尚早だったかも…。てか、新人公演も休演みたいだし…大丈夫なのかしら
<レドヴィ>
関戸博一…シングルキャスト。これは、新たなレドヴィの誕生だと思った。優しく温かい一面を持ちながら、いつもひとりで、こそこそしていて、盗癖みたいな闇も持っていて…でも納得できる。あー、やっぱ、底知れない役者だわ、せきどっち。
<アンテ>
宇佐見輝…これまた、アンテそのもの。アンテの女子っぽさがよく出ていた。
<バッカス>
牧島進一…インテリなバッカス。他の生徒たちを俯瞰して眺めているようなところが、牧島らしいバッカスだった。
原田洋二郎…ちゃんと大人に見えた。ただ、お茶会メンバーが酷すぎて、そこはアンコントローラブルになっていた…
<サイフリート>
青木隆敏…あの厚底靴は…単にユーリより大きければいいんじゃないか…と思わないでもないが、エーリクとのシーンがあるから、久保の身長を意識したのかな気持ち悪い感じが、よく出ていたし、神になっちゃう感じもピッタリほめてます
<5人組>(鈴木翔音・千葉健玖・澤井俊輝・八木澤元気・米本直史・若林健吾・秋山遊楽・藤波瞬平)
アーダムの澤井とヘルベルトの藤波以外はダブルキャスト。藤波は、ヘルベルトというキャラをしっかりと体現していた。
フレッシュの3人(赤字)もしっかりと溶け込んでいた。特にイグー役の秋山がピッタリ配役のように思った。
<お茶会メンバー>
松本・緒方和也・原田・楢原秀佳…Jr.1~9までの多彩なメンバーだったが、意外にまとまっていた。
山本・石飛幸治・牧島・山崎康一…バッカスが気の毒になるくらい、やりたい放題だった。特に山本は、ここで笑いをとることにすべてをかけているかのようだった。山崎も、ひたすら変だった。
<シェリー>
楢原…素晴らしかった。ユーリを待っている場面の細かい芝居などは実に秀逸。優しい、本当に優しくて美しいお母さん。これじゃユーリもぞっこんだろう。
<エリザ>
緒方…イヤなババァ。これじゃエーリクも毒づくに決まっている、という感じ。つか、黒髪の男に若い頃なんかされたんだろうかと思うほど、怪演だった。
<ミュラー>
曽世海司…素敵だったエーリクが転入してきた時のやり取りから、がっつりと存在感を示し続けていた。だからこそ、オスカーとのシーンがなくなったのは、とても残念。
<シュヴァルツ>
楢原…シェリーとシド・シュヴァルツの両方をやってしまうんだから、役者だ。そしてどちらも、うるっとさせてくれた。
<ヴェルナー>
山崎…うまいこの役は、長いこと、主宰のヘタウマ演技がデフォだったが、ストーンと腑に落ちる芝居だった。でも、どこか、山崎の後ろに主宰の霊が守ってくれているようなものも感じていた。
<アデール>
石飛…自慢の息子を失って、いろいろなものが見えなくなっている母親の身勝手さだったり、情緒不安定さだったりが、見事に出ていた。
今回の「トーマ」、配役的にもベストな感じ。何度見ても、また観たくなる舞台。気が早いけど、次の再演も楽しみにしている。
【今日の言葉】~宝塚日めくりカレンダーより~
「信子さん、貴女はやっぱり僕の天使だ」by吉岡@『東京の空の下』
作・演出:高木史朗
花組 1960年
掲載されている写真は、星空ひかるさん、淀かほるさんでした。
淀さんは、ここでは女役だったようです。
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