「ベルサイユのばら」感想 その2 [┣宝塚観劇]
その1は、こちらです。
第2幕
第1場 衛兵隊の訓練場
幕開きから、衛兵隊の訓練シーン。
アラン(彩凪翔)がオスカル(早霧せいな)に心を開く決定的な場面は今回描かれていない。2幕冒頭から、既に衛兵隊メンバーは全員、オスカルに心酔している状態。
しかし、ブイエ将軍(奏乃はると)は、相変わらずオスカルに辛く当たるし、オスカルもまた、ブイエへの反発を隠さない。
議会に立てこもっている平民議員を力づくでも追い払うようにという命令を断るオスカル。“衛兵隊は王宮守護の近衛隊と違って、国民を守るための軍隊なので、国民の96%にあたる平民の代表に銃を向けることはできない”とオスカルは言う。この台詞、すごくかっこ悪い
「軍隊とは、国民を守るためのものであって、国民に銃をむけるためのものではございません」
原作ではこうだ。
自分の古巣である近衛隊に対して、下に見ているような言い方、本当にイヤだオスカルは、近衛隊の隊長として、この命令を受けたとしても、断ったと思う。それがオスカルという人間なのだ、ということを、植田先生が気づく日はあるのだろうか?
ジャルジェ将軍(夏美よう)がジェローデル(鳳翔大)を伴って現れ、事態を収拾しつつ、オスカルに結婚話を持ち出す展開は、うまいなーと思うが、ここは40年前に作った展開だしな…。
ちなみに、ここでジェローデルに何も言わせなかったのは、よかった。ジェローデルって、そんなノリの軽いキャラじゃないんだもの。
第2場 カーテン
オスカルの結婚話にショックを受けるアンドレ(夢乃聖夏)。
ここからが、夢乃アンドレの真骨頂だ。
第3場 オスカルの居間
オスカルの母・ジェルジェ夫人は、麻樹ゆめみ。オスカルのバイオリンを聴きながら、泣いてしまう場面は、これまでのジャルジェ夫人と違って、姉のような可愛らしさがあった。本当の姉である、オルタンス(早花まこ)の衣装は、まるで社交界デビューしたばかりのような可愛らしいドレスだし、この家族の年齢設定はどうなっているのだろうか?
さて、夢乃がアンドレを演じると聞いた時から、期待していたのは、この場面だ。そして、期待は裏切られなかった
オスカルを抱きしめる力の強さ、そして、そのままオスカルの身体に縋るように膝をつくのだが、ど…どこまで下りて行くの(アンドレの顔がオスカルの股間にまで下がってますけど、それいいんですか)
オスカルでなくとも、「それでどうしようというのだ?」と聞きたくなる
しかも、ハッとすると、「すまなかった~」と遥か彼方まで飛び退る。そこから、ぐいーんと上体を伸ばして拝む。すごい可動域、身体能力、こんなアンドレ見たことない
第4場 カーテン
ジェローデルが、ダグー大佐(真那春人)に、パリ進駐にオスカルを行かせて大丈夫なのか?と詰め寄っている。大劇場の時は、隊長はパリに一緒に行ってくれるのだろうか?と心配していたのにね、大ちゃん…
そして、オスカルが現れ、「身を引きましょう」の名シーンへ。
鳳翔は、この役のために、鳳翔的にめずらしい、センターパーツの髪形にしていた。プロローグでは、その髪形に違和感があったが、ジェローデルの鬘は似合っていた。そして、このジェローデル、鳳翔のベストアクトなんじゃないだろうか。
身を引く時の思いのこもった丁寧な台詞回し、踵を返す時のマントの扱い、そして立ち去る時の歩き方、まさに鳳翔大の男役集大成、みたいなことを感じた。谷演出も、そんな鳳翔に合わせた演出をしてくれたと思う。
第5場 衛兵隊の訓練場
パリに行くというアンドレを止めるために、アランが約束を破って、他の隊員にアンドレの目のことを教えてしまうシーン。
隊員たちの声を聞いて銃を構えるアンドレの必死さがすごい。熱い匍匐前進も見ものだった。
第6場 パリ市街
市民達は軍隊と一触即発状態になっている。
衛兵隊のパリ進駐は危ないと意見を一致させたベルナール(彩風咲奈)とロザリー(咲妃みゆ)。ロザリーはオスカルを止めるべく、ベルサイユに向かう。
しかし、どうして一般市民であるベルナールたちが、フランス衛兵隊の出動を事前に知っているんだろうか?(たしか、原作では、オスカルに連絡があったのが、前々日の夜だった。)大丈夫か、フランスの軍隊は。情報、駄々漏れ
そして、明日出動なのに、オスカルのところに行きさえすれば、撤回できると思っているこの夫婦、大丈夫かそれとも、フランスの軍隊って、そんなにすぐ命令が撤回できるの
第7場 ジャルジェ家の二階に続く居間
いよいよ明日はパリへの進駐…なのに今頃、ジャルジェ家の間取りを覚えようとしているアンドレ。なんか、いろいろ間違っていると思う
第8場 カーテン
成長したオスカルの姉たち(早花・沙月愛奈・白渚すず・笙乃茅桜・花瑛ちほ)が一堂に会し、ジェルジェ将軍に、オスカルの出動をやめさせるように直談判している。とうとう、オルタンスの娘、ル・ルー(星乃あんり)や、ジャルジェ夫人までが将軍を問い詰める。
母子三代責め
しかし、めちゃくちゃな論理だと思う、この人たち…
「戦争って力のある方が勝つんでしょう?オスカルおねえちゃまをそんなところに行かせたくない」byル・ルー。オスカルは、そもそも軍人。有事には戦争をするのがお仕事なんだけど…
「オスカルにもしものことがあったら、ジャルジェ家は滅亡するんですよ!」by母上。そもそも女であるオスカルを男の子として育て、30過ぎても軍人させている段階で、滅亡への道は明らかでは?ちなみに原作のオスカルは、ジェローデルとの結婚を断る代わりに、姉上のところから養子をもらうという提案をしている。それが実現すれば、滅亡まではしないよね?
そんなめちゃくちゃなジャルジェ家の女たちに対して、それでもオスカルを行かせてやろうと言うジャルジェ将軍。しかし、演じているのが夏美なだけに、その瞬間、オスカルに死亡フラグが立って見える(最近、子供を不幸に追いやる役が多い)
第9場 オスカルの居間
今宵一夜の前にロザリーがオスカルの部屋に忍んで来る、という設定は、2006年の雪組、2013年の月組に続いての登場だが、さすがにロザリーの愛の告白(百合編)は、2006年版だけで終わったらしい
早霧のオスカルは、ロザリーに対してはやさしく、また自身の運命については、どこか諦念もにじませ、それでいてアンドレを呼ぶ声の震えなどは初々しく、オスカル役者であることを、あらためて強く感じた。
そして、アンドレの「愛している」の表現が、同じ早霧オスカルを相手にして、未涼アンドレとこんなにも違うのか、というのが面白かった。そして、毒殺しようとするほどの熱いアンドレは、夢乃でよかったのだ、と強く感じた。
でも、腰をぐいっ!の演出は、未涼だけのものらしく、それは、ちょっと嬉しかった
第10場 カーテン
オスカルの出動を見送る家族の場面。マロン・グラッセ役の梨花ますみが、若干抑え気味の演技で、この恥ずかしい場面を乗り切っていたのがいいと思った。
第11場 パリ市街
外伝の置き土産、市民達の歌の場面。ツアーなのでベルナールとロベスピエール以外は、市民は女しかいないのだが、すごい迫力だった。
第12場 セーヌ川にかかった橋
橋はツアーなので低い。が、それなりに納得できる高さにはなっている。
ここで、どういうわけか、隊士たちをアンドレが仕切っていた。さっきまで匍匐前進させられていたキャラのに…。
そして、オスカル編にはめずらしく、オスカルの躊躇はほとんどなく、衛兵隊は民衆に与することになった。それはよかったのだが、「よく決心してくださいました」っていう台詞はいらないと思う。
それって、「オスカルが正しい判断をした」と評価する台詞だよね。
どんだけ上から目線なの?部下なのに…
本当の衛兵隊員たちの台詞はこうだ。
「隊長、我々はあなたについていきます」「もうとっくに約束したはずです」
それがどんな命令であっても聞く。でも隊長の命令は、自分たちを救ってくれた。そういう隊長だと信じていたけどね…というところが感動的なのだが…。
ここへ登場したジェローデルが、まさかの敬語攻めなのは、ちょっと萌え
ジェローデルファンとしては、紳士らしいジェローデルで嬉しい限り。
アンドレの死は、意外に地味だったかな。ともみんなら当然全弾被弾してくれると思っていたせいだろうか?
第13場 バスティーユ
背景幕は、抽象画だった。
白旗がーっ!って、白旗どこよ…
第14場 天駆ける天国
ここに馬車が登場しないのに、“今宵一夜”でガラスの馬車の話をするのは、変だと思う。
雲の彼方にアンドレが立っているだけってのはなー、さすがに寂しい
大昔、ベルばらを全ツに持って行かないでほしい、と池田先生が抗議してきたというエピソードを思い出した。
あと、ペガサスがいないのに、せまいクレーン上と同じ振付は、おかしい。
簡素な背景と二人だけの登場人物、なのに、ほとんど何も振りがついていない…しかも、歌が若干その……という状況で、ちょっと冷めてしまったのは、非常に残念な出来事だった
第15場 フィナーレA
彩凪、咲妃のデュエットで、娘役達が踊る場面。
なんで、夫婦役の彩風と咲妃を組ませなかったのかな?と思ったが、可愛い場面だった。
第16場 フィナーレB
第15場を観てやはり、彩凪>彩風というのが、劇団の意思なのかな?と思ったら、ここで、いきなり、彩風センターの場面が来た。「パリ・ジュテーム」のナンバーで、半数以上は上級生。そのセンターで踊る方が目立つような気がした。
結局、二人で切磋琢磨してね、ということなのかな?
第17場 フィナーレC
ロケットは、月組版と同じ振付。ということは、早霧せいなが初舞台で踊ったロケットと同じ振付ということ。このロケットを、87期生が主役を務める月組と雪組で上演したのは、狙ってましたかね?
第18場 フィナーレD
早霧と夢乃の「小雨降る径」
“小雨”は、エラ先生とドニーに見えてしまった
そして、それがすごく楽しかった
月組版は、ボレロだったんだよねー。絶対、“小雨”がいいわ
第19場 グランド・フィナーレ パレード
エトワールは此花いの莉。
ワッカのドレスで影段から出てくるのが、ちょっと大変そうだったが、キラキラと素敵なパレードだった。
最後にちょっとだけ、次期トップスターとなる早霧せいなのオスカルについて。
早霧オスカルは、同じ長崎県出身の、安寿ミラのオスカルを彷彿とさせる、繊細でキリッとしたオスカル。変に女っぽくすることもなく、かといって男役まんまの芝居でもなく、衛兵隊で部下に接している時は気を張っている雰囲気があり、そうでない時は、女性として自然に存在している、宝塚として理想的なひとつのオスカル像だった。
ただ、私が観た時は、少し台詞が流れるきらいがあり、台詞のリズムが崩れがちになっていた。そこがちょっと残念。そして、最後の「愛あればこそ」(天国)でも音程が怪しかったのには、ちょっとまいった。
でも、得難い魅力のあるオスカルだったので、その辺は、相殺して楽しく観劇させてもらいました
大島桜が染井吉野に先駆けて咲いた。今年も桜の季節…
クリームスパゲッティならぬ、クリームラーメンを作ってみました。激うま~♪
【今日の言葉】
「ナターシャ、僕は君に恋している。まったく自分にも信じられない話だが、その感情に僕はまいっているんだ」byアンドレイ@『戦争と平和』
脚本・演出:植田紳爾
星組 1988年
掲載されている写真は、日向薫さんでした。
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