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宝塚歌劇 フェルゼンの悲劇 [┣公演内容の考察・検証]

前記事で、原作のフェルゼンがいかにオトコマエであるか、原作のセリフを引用しつつご紹介させてもらった。
では、宝塚のフェルゼンは、この39年、どんな憂き目に遭って来たのか…
フェルゼンの悲劇の歴史をご紹介したいと思います。

1.1974 『ベルサイユのばら』(大滝子)
「オスカル、笑ってくれ。恋に盲目となった哀れな男を…」「いかに恋に目が眩んだとはいえ、僕には僕の思慮もあり、分別もある」
などの台詞はこの当時から登場している。そしてオスカルに帰国を勧められ、
「女でありながら女を捨てた君に、この恋の苦しさが分かる筈はない」
と憤然と去るところも。
しかし、初演のフェルゼンは、本当に思慮も分別もあったらしく、メルシー伯にダメ押しをされる前に帰国を決意するのだった。
…と、わりとマトモなフェルゼンではあるのだが、なにしろ出番が少ない[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
ここで帰国した後、基本的に次に登場するのは、なんと、花祭りの後である[あせあせ(飛び散る汗)]
(間に一度とってつけたようなオリジナルの場面で登場するが、本筋に関係ないのでテレビ中継ではあっさりカットされている)
ちなみに、花祭りの場面⇒フェルゼンのところにジェローデル登場⇒[るんるん]駆けろ、ペガサスの如く[るんるん]⇒牢獄の場面と、現在でもおなじみの場面が、一気に登場するので、花祭りからは出ずっぱりではあるのだが…。

2.1975 『ベルサイユのばら-アンドレとオスカル-』(松あきら・美里景)
ドレスを着たオスカルとダンスを踊り、「女王様が紅バラだとするならば、白バラのような人だった…」と言って落としたハンカチを届けに来たり、オスカルの決闘に立ち会ったり…と、出番も多く、とにかくかっこいいのだが、2部になると一度も登場しない[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]まあ、アンドレとオスカル編だしねぇ[もうやだ~(悲しい顔)]

3.1976 『ベルサイユのばらIII』(鳳蘭)
アントワネットとフェルゼン、そしてオスカルの初めての出会いを描いた、パリ・オペラ座の仮面舞踏会が初めて登場する。
そして、盆を使ったフェルゼンとアントワネット、ボートのラブシーンもこの回が初めて。
そして、オーストリア皇帝に謁見したり、そうそう、ヴァレンヌ逃亡事件も描かれる。フェルゼン、大活躍!これ位活躍してくれると、主役らしく見える。
さて、なぜ、逃亡は失敗したのか…。国王夫妻が国外に逃亡することを是としないロザリーが、フェルゼンにわざと遅い時間を連絡する…という…[あせあせ(飛び散る汗)]まさか、ロザリーにしてやられるとは…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]ここで、一気に、フェルゼンのカッコよさが地に落ちる展開なのでした…[爆弾]

4.1989 『ベルサイユのばら-アンドレとオスカル編』(朝香じゅん・紫苑ゆう・麻路さき)
基本的な物語は、2を踏襲しているが、トップスターがアンドレ役、2番手がオスカル役という事情を反映して、オスカルが女装して舞踏会に行くシーンは割愛。その分、フェルゼンの登場シーンも削られている。
また、フェルゼン役は、すべて他組からの特出となり、それが“外国人”的雰囲気を伝える効果があったような気がする。
スウェーデンに帰るというフェルゼンをアンドレが追い、一目オスカルに会ってほしいと懇願するが、逆に、身分など気にせず、オスカルへの愛を全うしてほしい、いつかオスカルはその愛に気づく時がある…と応援して去っていく場面がある。
出番は少ないが、いい役だった数少ない公演である。

5.1989 『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編』(日向薫)
基本的な物語は、1を踏襲しているが、3の小舟でのラブシーンなどもあり、華やかな舞台。
4で好評だったのか、植田先生が自分で気に入ったのか、フェルゼンがアンドレを励ますシーンも残っている。
国王陛下の“困る、それは困るぞ”のシーンは、国王とプロバンス伯とメルシー伯しかいない場面でのこと。これならプロバンス伯がフェルゼンを罵倒してもわかる。王妃は、このやり取りを陰で見ていて、心から反省し、フェルゼンへの思いを断ち切るという設定。
「ベルばら」らしくはないが、まだ人の心として分かる部分がある。
さて、スウェーデンに帰ったフェルゼンを頼って現れたのは、ジェローデルと、なんと、マロン・グラッセ。なぜ、オスカルの乳母がここまで…?ちなみに1792年8月という設定になっている。王妃の処刑される1年前というのは助けに行く時期的には納得できるが、事態がここに至るまで、フェルゼンが何も知らないというのは、ちょっと現実的ではない。
そして、オーストリア皇帝に謁見する場面もある。
その後、ベルギーとの国境付近で農民の会話を聞いて国王処刑を聞く件が、ここで初めて登場する。この時は、いいアイデアだと思ったんだけどなー。
っていうか、この流れで登場しないと、国境付近って生きないんだな…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
国境から後は、ほぼ同じ展開でした。

6.1990 『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』(大浦みずき)
こちらは、基本的な物語を3から採用しているが、4.5と続いたフェルゼン&アンドレの場面も残しているし、小舟のラブシーンや、国王陛下の“困る”発言、オーストリア皇帝訪問、国境付近など、かなり5に似た構成となっている。
ただ、音楽的に新曲♪愛の面影♪を多用していること、スウェーデン国王に謁見し、そこから王妃救出に向かう辺りが新しい。
というか、「マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから!」で1幕が終わらない初めてのバージョンがここだった!
あと、非常に残念な、オスカルに帰国を勧められて逆ギレし、その後メルシー伯も訪問してきてフェルゼンに帰国を勧めるパターンはここから始まったようだ。
それと、フェルゼンの「王妃様、あなたは私の胸の中にいつまでも生きています…」の台詞と、アントワネットの「さようならベルサイユ…」の台詞が逆になったのは、ここからだった。
(これ以前の公演では、「さようならベルサイユ…」のあと、断頭台を上る王妃にかぶせて、「王妃様…」の台詞が入っていた。)

7.1991 『ベルサイユのばら-オスカル編-』
ここで、フェルゼンに決定的な悲劇が訪れる。
「ベルサイユのばら」なのに、フェルゼンが出ない!出ないのに話が通じている!
「ベルサイユのばら」の主役だったはずのフェルゼンが…フェルゼンが…!!!
これ以降、フェルゼンの立場は、どんどん下降していくのであった…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]

8.2001 『ベルサイユのばら2001-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』(和央ようか)
アントワネットのお輿入れからスタートする辺りは、1.5を踏襲しているが、フェルゼンがスウェーデン王宮を脱出する等、エピソードは6が中心。

9.2001 『ベルサイユのばら2001-オスカルとアンドレ編-』(安蘭けい)
そりゃ、オスカルが主役だから…とはいうものの、フェルゼンの扱いは酷い…出番も少ない…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
滑稽なまでに貶められてしまった…[バッド(下向き矢印)]

10.2006 『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』(湖月わたる)
アントワネットのお輿入れからスタートするパターン。
そして、あのおぞましき、フェルゼンの“たくさんの愛を知ったからスウェーデンに帰る”宣言、そして、ジェローデルが今宵一夜からアンドレとオスカルの死までを回想する…という、現在上演されている最悪のパターンがこの時誕生した。

11.2006 『ベルサイユのばら-オスカル編-』
再び、フェルゼンの出ない「ベルばら」…でもかえって、出なくてよかったかも?な、話になっていた。

12.2012 『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』(紫門ゆりや)
出ない方がマシというか…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
もはや、フェルゼンには、位取りすらないのか…[爆弾]

そして、今回の『ベルサイユのばら』へと、話は進んでいきます。
作品そのものも、そしてフェルゼンというキャラクターも、どんどん穢されていく…そんな歴史をあらためて感じた今回のレポートでした…[爆弾][爆弾][爆弾]


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祐飛鉄線

フェルゼン絶賛クローズアップ中ですね!夜野さまのデータベースの充実ぶりには毎回感動します。
やはり、1991年月組公演にて、愛するアントワネット様共々登板させて貰えなかったのが最大最悪の悲劇かと。有り得ないでしょう!しかし、既成事実になってしまった!あの時にヅカばらを見限りました。
まぁ、2006年星組公演はラス…もとい、ユヒカルにまんまとつられてしまいましたが。「沢山の愛を知ったから…」台詞を「おぞましい」と形容したのにはウケました(笑)
もう、フェルゼンは「愛の面影」を歌い、「小雨降る径」を踊ってくれさえしたら、それでよしとするしかありません(T_T)
by 祐飛鉄線 (2013-07-31 23:59) 

夜野愉美

祐飛鉄線さま
1991年のあの事件は大きかったですね。あそこがターニングポイントだったと私も思います。
にもかかわらず、ユヒカルにつられた自分がイタい…あの時、もっと糾弾していればよかった…って、まあ、私が何を書いても変わりませんが。
いっそ、「愛の面影」+「小雨降る径」で割り切るのも一つの方法かもしれないですね。
by 夜野愉美 (2013-08-06 22:23) 

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