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「銀ちゃんの恋」感想 その2 [┣ブログ]

「その1」は、こちらです。

第八場 プールサイドテラス/小夏と朋子【旧 第4場E 朋子と小夏】
今回の舞台では、撮影中に上から下りてくるカメラ映像用の2枚のスクリーンのほかに、ホリゾントにもフルクスリーンが仕込んであり、ここにも映像が投影されている。
たとえば、ヤスのアパートの周囲の風景は映像によるもので、ヤスはけっこう都会に住んでいるっぽいことがネオンサインでわかったりする。
このプールサイドも背景にしゃれたホテルのプールサイドっぽい映像が投影されていて雰囲気を出している。大劇場公演では、美術さんの作る背景に期待しているので、安易に映像使用には賛成しかねるが、こういう小劇場での期間限定の公演の場合、効果的なのであれば、使用もありかな?と思っている。
銀ちゃんとヤスに懇願されて、小夏は、朋子に会う。
かつての大女優のプライドをずたずたに引き裂くような、銀ちゃんの今の恋人、朋子。ただ若いだけの世間知らずな女の子…というのが、基本コンセプトなのだろうが、なにしろ今回の朋子は、天然キャラ。小夏の話を聞いているようなズレているような会話が続き、小夏をうんざりさせる。
華耀きらりは、文字通りぶっ飛んだ朋子を怪演している。
そんな朋子に対して、野々すみ花演じる小夏は、ショックを受けながらも、ひたすら銀ちゃんのために、自分の知っていることを伝授しようとする。そういう無私の小夏というキャラは、野々ならではの小夏だと思う。こんなの上級生娘役がやったらウソにしか見えないし、野々が生来持っている天女のような雰囲気だからこそ、合う。小夏は、初登場時のスレた感じから、ラストに向かってどんどん聖女のように変貌していくが、この場面をキッカケにしているのはうまいと思った。
演出かもしれないが、そうでなければ、野々すみ花は、天性の大女優なのかも?
初演では、なんの意味も持たなかった「銀四郎様、禿げて来たと思いませんこと?」が、第四場の「オレのこのちっちゃな肩で」同様、大空ファンの自虐を誘ったのは、再演の奇跡かもしれない。

銀ちゃんは、朋子のために、インラインローラースケートをはき、全身派手なファッションで決めて、ヨタヨタ登場する。
朋子には、媚び媚びの笑顔を見せて、その笑顔のまま、小夏に「合いカギ、返してくれ」と悪気なく手を出す。
天下の最低男それなのに、どうしてこんなに魅力的なんだろう、と思う。
久世の銀ちゃんは、最低男を客観視して見せることで、作品としての面白さを狙う“役者”であったが、大空の銀ちゃんは、そんな最低男に惚れるバカな女っているでしょう?あなたもそうでしょう?と、客観視を許さない
ええ、まあ、そうなんですけどね…
その最低男を大空さんが演じている限り、嫌いになんかなれるわけない…

野々の小夏は、そこにいない銀ちゃんを思って切なく朋子を見つめているところから、朋子への失望=銀ちゃんへ失望となり、その銀ちゃんが朋子にメロメロな姿を見て心をなくすほど絶望し、だから、合いカギを返せと言われたあたりから、もう這い上がり始めている。
「銀ちゃん、さよなら」
言ってみても、そんなに簡単に数年の恋は忘れられないが、少なくとも、銀四郎との復縁を願う気持ちを彼女はきっぱりと捨てることにする。
そして、それはヤスとの関係を見つめ直すことに繋がる。

第九場 ヤスのアパート/プロポーズ【旧 第4場F ヤスのアパート】
帰ってきた小夏は、ヤスのために夕食を作ろうと、食材を買いこんでいる。
そこへ、銀ちゃんが送ったと思われる小夏の私物が宅急便で送られてきたらしく、一瞬、小夏は顔を曇らせる。
ヤスが受け取りに行っている間に、小夏は電話に出てしまう。
人吉に住むヤスの母からの電話だった。ヤスは、小夏を連れて帰郷する気でいるらしい。
小夏は、本当にヤスが小夏のお腹の赤ん坊の父親になってくれるのか?と確認する。ヤスは煮え切らないながらも、小夏に促されてプロポーズする。
「お受けしました。あたし、めちゃめちゃ甘えるからね」
と答える小夏に、ヤスは、話を逸らすように母親の話を始めたりする。照れなのか、それとも、この求婚が小夏のお腹の子供の法律上の父親になるだけ、と思い込んでいるからなのか…とにかく、ヤスは、まだこの場面までは、小夏との関係は清らかなままだ。

つか先生の「蒲田行進曲」(小説版)によると、第七場辺りで、ヤスは小夏に襲いかかっているらしい。その辺は宝塚版は、ちゃんと宝塚らしい進行がなされているといえる。

第十場 銀四郎と朋子のデート/幕前【旧 第4場G 朋子と銀四郎】
ショッピング帰りの銀ちゃんと朋子。
相変わらず天然の朋子に対して、明らかに銀ちゃんのテンションは下がっている。
このシーンの最後に、「恋はやっぱりプラトニックの方が夢があるなぁ」と銀ちゃんが呟く、ということは、この時点で、銀ちゃんと朋子は一線を越えているらしい。銀ちゃんのマンションで手料理をふるまって、その後…ということかな?
そして、その時は、たとえお米をとぐ時に洗剤を入れられても、スケベ心で我慢できたが、今となっては、朋子の若さや天然は、重荷でしかないのだろう。とはいえ、すぐに別れることもまたできない。それもまたスケベ心ではある。
大空銀ちゃんは、どういうわけか、スケベ心が素直に納得できる。(久世さんには、あんまりそういう色気を感じない。これは女優である今も、なのだが。むしろストイックな時に、色気を感じるスターさんである)

第十一場A 人吉/ヤスの帰郷【旧 第5場 人吉盆踊り】
銀ちゃんチームの一人一人が、公演を重ねるにつれて、気になりだして、だから、ほぼオールスター状態の、この盆踊りは、見ていて楽しくて仕方がなかった。
ヤスの義姉にあたる玉美役は、月野姫花(前回は、暁なぎさ、東京は檀れい)。
一応、ミス農協に選ばれた経験があるわけだし、前回のようなひどい化粧にする必要はないとは思うが、ちょっと月野は中途半端だったかな?と思う。
ヤスは、ここで、盆踊りの村人の前で挨拶をしながら、束の間のスター気分を味わう。一方、小夏は、同じように久しぶりに観衆の前に立ちながら、以前のような高揚を感じない自分に驚き、スターの立場より、結婚を夢見る平凡な女である自分を強く意識する。
が、ヤスの母には、お腹の子がヤスの子ではないことを見抜かれ、「一生懸命やりますから、許して下さい」と土下座する。

第十一場B ちぎり
夫婦同然なので、同じ部屋に布団を敷かれ、そこで寝ているヤス。
小夏の布団を引きよせてみたり、と姑息なことをするが、実際に小夏が枕をヤスの布団に移動すると、慌ててしまう。
「銀ちゃんてどんな顔してたっけ?どんな声してたっけ?」
というセリフは前回通りだが、そこで、スクリーンに銀ちゃんの姿が映るのが哀愁を誘う。

第十一場C ひとり/客席【旧 第6場 池田屋階段セット】
前場から、はっきりと数か月が経過したある日。
浮かない顔をした銀ちゃんが、「ひとり」を歌いながら客席から舞台にあがる。
重量挙げをしようとしたところで、大きなお腹の小夏が現れる。ヤスと結ばれ、ゆるぎないものを手に入れた顔をしている。
一方の銀ちゃんは、朋子との間に、既に修復できない亀裂を感じている。
銀ちゃんの憂鬱はそれだけではない。階段落ちも中止になった『新撰組』は、既に倉丘銀四郎主演とは思えない内容に(銀ちゃん的には)なっていた。
一人で新撰組の段取りを語り、熱くなる銀ちゃんは可愛いが、小夏の結婚式のリハーサルに付き合ってやるといいながら、新郎にすり替わろうとしたり、滑り止めのお前で手を打とうとか言う銀ちゃんは、酷い男だ。それでも、小夏の心は動く、確実に。
そんな小夏の心を引き止めたのは、人吉のお母さんだったかもしれない。あの人たちを裏切れない、そんな小夏の良心…
けれど、本心がどうであれ、銀ちゃんに指輪を返した時、小夏は、自分の人生を選択している。
今度こそ、本当の「銀ちゃん、さようなら」
前回のように、銀ちゃんと小夏がトップコンビではないから、ヒロインが主役を選ばない選択も、ドラマのストーリーとしてあり得る。小夏の心の動きは、今回の方が分かりやすい。

第十二場 決心
そんな二人の様子を陰で聞いていたヤスは、銀ちゃんの苦悩を前に、決心してしまう。
「階段落ち、やるよ」と。
三人の姿、それぞれにスポットが当たって、一幕は終わる。

第二幕
第十三場 結婚式
【旧 第7場 ウェディング(ヤスの幻想)】
第ニ幕は、ヤスの結婚式から始まる。ただし、これは、ヤスの脳内妄想となっている。
幸せそうな結婚式の最中、銀ちゃんが現れ、小夏の名を呼ぶ。最初は抗っていた小夏も、やがてヤスを振り切って銀ちゃんを選ぶ。
BGMは映画「卒業」から、「Sound of Silence」。
ところで、この場面は「卒業」のラストシーンを模して作られているのだが、最近のファンの人は「卒業」なんて見たことあるんだろうか?もっとも、この名シーンは、よくドラマなどでリメイクされているから、そっちを見た人は多いのかもしれない。
残されたヤスは階段の上に立ちすくみ、そこに首吊りの縄が垂れ下がっている。(ちなみに階段は十三段である)

少し短いが、続きは、また後日。


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