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「外伝 ベルサイユのばら」感想 その2&「エンター・ザ・レビュー」感想 [┣宝塚観劇]

「ベルサイユのばら」は、大がかりなセットを使うので、カーテン前の場面が多い…と、当然のように思っていたが、今回のように、ツアー用に書かれ、特に大がかりなセットが必要ない「ベルばら」もお約束のようにカーテン前の場面が登場する。
植田先生がカーテン前を作るのは、既にクセなのか…
で、そのカーテン前として、やたら出てくるのが、会議場に居座った平民議員たちを立ち退かせるように、命令するブイエ将軍(一樹千尋)のシーンだ。
ここで、植田先生の作ったオスカルは、上官に対して「ものの道理をご説明しているのです」と、失礼な発言をする。普通、下から上に、若輩者から年配者に、「ものの道理」を説明することはない。オスカルだって、そこまで無礼ではないし、親切でもない。(ちなみに、原作のオスカルは、この命令を結局受け入れる。泣きながら、会議場を閉鎖する衛兵隊員。でもそれはオスカルの命令だから、みんな言うことを聞いた…っていうのが、ちゃんとわかる設定になっているあたり、池田理代子先生は素晴らしいと思う)
オスカル(愛音羽麗)にものの道理を聞かされたブイエ将軍は怒り狂う。そこにアラン(真飛聖)までが怒りに火を注ぎ、銃殺してやる!と言われてしまう。ブイエ将軍を追いかけるアラン、アランを追うオスカル。アランは足が遅かったのか、ブイエ将軍はつかまらず、オスカルに追いつかれる。
そして、いきなりのキスシーン。
原作の名シーンのうち、まだ上演されていなかった、数少ない場面が、初めて形になったのに、どうしてこんなに違和感があるのだろうか?
キスシーンは、アンドレ(壮一帆)が止め、アンドレはアランを殴ろうとしてやめる。
アランは立ち去り、オスカルは後を追う。

[exclamation&question]

後を追う?無理やりキスした男が走り去った時、女が後を追うのは、付き合うことを事後承諾した場合だけじゃないのか?
一人残されたアンドレは、原作通り「お前もか、アラン…」と呟くのだが、どうやらこれが、初日辺りは笑われたらしい。大宮では、どうして笑われたんだろう?と不思議だったが、もしかしたら(↑)のように考えた観客が、アンドレ、余裕こいてて大丈夫か?と心配したのかもしれない。

ここで再び現在に戻り、そこでアランはオスカルを愛していたことを再認識するのだが、キスまでしておいて、10年後まで愛してることに気づかないとは、あのキスはなんだったのか?とアランを問い詰めたい気持ちになった。
ディアンヌ(桜乃彩音)のソロ「飛べない小鳥」は、ここだったかな?
なかなかの名曲だった。しかし、相手が幽霊では、同情する気も起きない。

革命前夜は、アンドレの目が見えないことを、アランが衛兵隊に暴露し、それでもついて行く、というアンドレを皆で支えよう!と全員の思いがひとつになる場面。この設定では、アンドレが主役に見えてしまう。アランと衛兵隊が一緒にいる場面で、主役がアンドレに見えるのは、植田先生的にはありなんだろうか?

革命は、雪組と同じダンスシーン。ただし、ロベスピエールが登場しないので、革命の芯は、市民の男S(なんて役名はないが)となった未涼亜希が務める。未涼は、途中までロベスピエールのような、革命を鼓舞する男になり、途中から、雪組で真波そらが演じた、突然躍り出して撃たれる男も演じる。
この革命シーンで私が目を奪われたのは、白華れみ
彼女は手に鎌だったか斧だったかを持っているのだが、それがダンスの小道具ではなく、ちゃんと重さを持っている武器に見えた。この子は、容赦なく、それを武器として使うだろうという、熱さと強さがあった。

革命後、片腕を失ったアランは、ナポレオンと共に革命後の数々の戦争を生き残っていくが、皇帝への野望を抱くナポレオンに失望して袂を分かつ。そしてアランはナポレオン暗殺計画の首謀者になっていくのだが、ナポレオンもまたアランを暗殺しようと討手を差し向けている。
ナポレオン役は、組長の夏美ようアランより年下の設定のはずだが…と思ったが、いろいろ工夫して実在の英雄を立派に演じていたと思う。

突然、「ジェローデルが殺された以上、もうどうしようもない。誰かがやってくれる」…などと突然自暴自棄になったアランは、ディアンヌが止めるのも聞かず、討手に一人で立ち向かう。

ジェローデルって、アンドレに暴言を吐きまくった、先程の爽やかな青年?

この作品だけを観たら、そうとしか思えないだろう。
雪組公演を観てても、なぜジェローデルがナポレオン暗殺に動いたか、よくわからなかった。
ただ、どうやら、ナポレオン暗殺作戦は、ジェローデルとアランとベルナールが計画し、この外伝三部作はそれがテーマなんだろうということは、推理でき、その完結を見たい気持ちになることはできた。

最初の墓掘りに変装していたデスマズ(星原美沙緒)の命令により、暗殺隊はアランを襲撃し、小雪の舞う中、アランは死んでいく。
華やかなプロローグと対比して、あまりにも寂しい死ゆえに、冒頭場面はプロローグじゃなくてよかったなーと思う、そんな舞台だった。

主要4役だけ感想を。
アラン(真飛聖)…主役になり得ない役なんだな…と思った。アランを主役にするなら、「ベルばら以降」の物語を描くべきであって、オスカルを中心とする世界ではアランは脇役にしかならない…ということが、よくわかった。しどころがないから、主役には見えない。真飛が悪いわけではない。
ではあるが、そんなに真剣に眺めてきたわけではないので、2001年の真飛から、どう進化したか、全然わからなかった。
真飛聖について思うことは、こっそりこんなところに書いているが、今回は、セリフの難は気にならなかった。こういう身分の高くない等身大の男性だと、真飛の語り口がしっくりとくるのだろう。ちなみに、話題の「ジロドン」だが、大宮の昼は「ジロンド」と言っていたように思うが、気のせいか?

ディアンヌ(桜乃彩音)…最初から最後まで幽霊じゃどうしようもない。こんな変な役に役作りも何もあったものではないから、演技のことは何も言わない。
歌は、よく歌えていたと思う。
たぶん、こんな変な役なのに、かわいそうと思えない位、私は桜乃には冷えていると思う。

アンドレ(壮一帆)…普通の「ベルサイユのばら」(雪組オスカル編)のツアーでアンドレを演じていた分、一日の長があった。この人のアンドレには説得力がある、と思う。今回のベルばらを救った一人じゃないかな?存在感があったので、別にソロ2曲も歌う必要はなかったかな?(彩吹のフェルゼンは、歌わないとツアー来た意味ないし…という感じだった)

オスカル(愛音羽麗)…鬘が照ってたり…と、かなり怪しいオスカルだったが、愛音らしいオスカルになっていて、すごく好感が持てた。もちろん役の良さというのはあるだろうが、今回は、アンドレとオスカルが作品を引き上げていたと思う。
愛音の声の優しさ、柔らかさが、貴族らしい洗練に繋がって、私は好きだった。
オスカルの凛とした一面を表現できる場面がないのは残念で、昔のスターさんだったら、それを自分で作り上げただろうが、原作ファンで宝塚を受験した人でない限り、そこまで求めるのは、もう無理だと思っている。
少なくとも、こんな陳腐な脚本にも関わらず、オスカルの品を守ってくれた愛音には、敢闘賞をあげたいくらいだ。

 

グランド・レビュー
「エンター・ザ・レビュー」

作・演出:酒井澄夫
作曲・編曲・録音音楽指揮:吉田優子
作曲・編曲:鞍富真一、玉麻尚一
編曲:竹内一宏
録音音楽指揮:矢部豊
振付:羽山紀代美、御織ゆみ乃、若央りさ、KAZUMI-BOY
フラメンコギター:染谷ひろし
装置:新宮有紀
衣装:有村淳
照明:庄村充生
録音音響:実吉英一
小道具:石橋清利
歌唱指導:矢部玲司

もう何度も上演されている「エンレビ」なので、今回は簡単に思ったことだけを書いてみたい。

「エンレビ」は、唯一無二の魅力を持ったショーではない。
酒井先生のその他のショーと同じく「悪くない」ショーなんだと思う。
そして、多くのショーがそうであるように、併演の芝居によって左右される、そんな存在。
今回、「外伝 ベルばら」のおかげで、「エンレビ」なのに!ありがたや~という気持ちで、観劇させていただきました。これがなかったら、ツアーから革命が起きている気がする。

「エンター・ザ・レビュー」は、「マラケシュ」と併演で初演されているので、おさふーコンビ主演、じゅりぴょんのサヨナラ公演、ゆみこはまだ花にいて、真飛はいなかった、当然壮くんもいなかった…という、メンバー総入れ替え状態…なのに、下級生は、「またエンレビ?」ってほどに何度も出ているという、すごいショーである。
そんなエンレビ新人・ベテランが入り混じって、新しい全ツ版の「エンター・ザ・レビュー」が出来上がっていく。スターを選ばないというか、普遍性があるショーを作るという意味では、さすがベテランの味なんだろうなと思う。

プロローグは、テーマ曲のあと、シャンソンのメドレーとなる。
男役は黒燕尾でかっこいい。テーマ曲の振付は、ちょっと可愛くてお気に入りだった。
『パリはシャンパン』、桜乃彩音望月理世・朝夏まなと桜乃の歌は痛々しい。「ベルばら」での歌は悪くなかったので、おそらく音域が合わないと厳しいタイプなのだろうと思う。そういう時、トップ娘役なんだから、曲、変えてやれよ…と思うのだが。
『パリに帰りて』は、愛音羽麗。この人のムードにあった甘い曲…っていうか、これ昔、シメさんも歌った気がする。愛音の声が紫苑に似てると、勝手に思っている私としては、嬉しかった。
『パリのタンゴ』は、桜一花未涼亜希可愛いカップル。未涼は、リズム感がいいので、こういう曲は決まる。
『ヌ・ム・キテ・パ』は、壮一帆娘役のダンサー(花野じゅりあ・白華れみ・華月由舞)が美しい。これ、初演では、樹里の歌に鈴懸・花純・舞城のダンスだった。たった3年で全員退めてしまうってあるんだなぁ~と、ちょっと胸が痛かった。壮の歌、なかなかよかったと思う。
『パリ・パナム』で一度パレードになった後、呼びものの、真飛聖子ちゃんの登場である。
曲は、『じらさないで』。これで客席降りをやる。真飛の女装…じゃなくて女姿は、真矢みき風。インパクトのある美人なのだが、それだけでは済まない、どこか笑える要素もある。
なんだけど、歌は、ちょっと微妙だったかもしれない。ここも、もっと似合う歌にしてあげたらよかったのに、と思った。

続くサーカスの場面は、メンバーの変遷が激しい中、やっぱりコロンビーヌで美脚を披露してくれた花野が可愛い。そして、新コロンビーヌの白華れみの健康的なフトモモから目が離せなかった。上半身に比べ、バランスが悪いくらい太い足なのだが、そこにれみの強さや根性の源があるような気がして、気に入っている。
サーカスの男を演じている未涼には、なんだか、ペトリューシュカを一度演じてほしいなーと思った。
泣き顔の真飛は、どこかぶんちゃん(絵麻緒ゆう)に似ていた。

猛獣使いは、えーと、オペラグラスの使い過ぎで頭痛がしました[たらーっ(汗)]
巷でドSえりたんとして名を馳せている壮の一面が、クローズアップされて、いい感じ。しかも、猛獣が厳選されたメンバーで非常に楽しかった。小柄なのに牙をむくと怖そうな、ボンバーな華月、転向組の迫力・天宮菜生、それに男役の冴月瑠那まで入っている。(ほかにも数人)いったい誰を見ればいいの?状態。
壮があまり見られなくて残念だったが、これは、いたしかたない[失恋]

変わり映えがしない、3人の田舎者NYへ行くのシーンは、マヌカンの花野が圧巻だったかなぁ~と。
ニューリズムの女Sの桜を見ていて、スタイル抜群だった遠野あすかを懐かしく思った。桜は、旅のアメリカ少女のミニスカート(初演)の方が似合いだったな。ベレー帽は可愛いけど。
ミッドナイト・シティのカラフルな衣装がすごくいい。白華が可愛く、華やかだった。

ジプシーの青年の衣装は、相変わらず「血と砂」だった。
新場面のウナモールは、別に新場面じゃなくてもよかったっぽい、スパニッシュな場面。まあ、アランフェスのオカマさん達が出てこないだけ、いいかなぁ。
たぶん、酒井先生は、歌の上手いコンビにしかアランフェスはやらせたくないってことなんだろう。普通の歌唱力じゃだめで。

ロケットの兄鳥は、朝夏まなとが普通に可愛く、「グランエスカリエ」も美しく、綺麗にまとまった感じ。秀作ではないが、あの「外伝」の後には、最高の口直しだったと思う。
出演者の皆様、本当にお疲れ様でした[exclamation×2]


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