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10年目の決着 [┣宝塚観劇]

映画「俺たちに明日はない」を初めて観たのは、日曜洋画劇場だったと思う。
車に乗っているところを機関銃で狙撃され、蜂の巣になって死んでいくシーンを長回しで克明に描写する。どう見ても、既に絶命しているのに、それでも銃弾を浴びると体が跳ねる。あれは強烈だった。怖かった。それが、原体験の私は、10年前、「凍てついた明日」のラストシーンを観て、「逃げた!」と思った。
あの時はフィナーレがあったので、着替えないといけなくて…というのは、頭ではわかっていたけど。
で、10年経って、この作者は、自作も映画も超えるラストシーンを作ったな!と嬉しくなった。
10年前より退化したものばっかり見せられて、ようやく進化している人に出会えた安堵。
「凍てついた明日-ボニー&クライドと邂逅-」観劇してきました。

宝塚バウホール開場30周年 バウ・ワークショップ
「凍てついた明日-ボニー&クライドとの邂逅-」

作・演出:荻田浩一
作曲・演出:高橋城
編曲:高橋恵
振付:伊賀裕子
装置:國包洋子
衣装:河底美由紀
照明:勝柴次朗
音響:加門清邦
小道具:福原徹
効果:切江勝

以下、ちょっとまとまらないが、感想メモだけ残しておきたい。
(それ以上のものが脳内でまとまりそうにない)

セットは、道案内の標識をかたどったものが、あっちこっちから吊り下げられている感じ。
その中に、銃弾を受けた車のドア(窓ガラスは大破)がある。これは、ドラマが始まると吊り上って消える。

BONNIE→
←CLYDE


の行き先表示は、セットになっていて、降りてくる時はダイナー(ボニーの勤務先)のバーカウンターとして使われる。
時代は1930年代。世界大恐慌の影響下のアメリカ。不景気で仕事がない。そんな時代に世間の喝采を浴びた強盗チーム。FBI長官となったフーバーにとっては、是非とも消しておかなければならない、社会秩序の敵。
ちょうどスコットがアメリカの崩壊を船から眺めた、あの時代なんだな。
しかも、フーバーなんて、「JFK」を思い出す。
小池先生と、景子先生とオギーって、好きな世界観がどこかかぶる。もちろん持ち味は別なんだけど。

愛原実花がボニーを演じている。
前に観た時は、「シルバーローズ・クロニクル」のかなめに誘惑される役だった。ちょっと、影のある美貌の持ち主だと思っていた。
今回のボニーは、寄る辺ない少女が年を取ったような、不安定な魅力があった。
なんとなく、女装した祐飛さんに似ていると思ったのは、頬の膨らみ加減?それとも、席の位置のせいかな?
緒月遠麻の演じるテッドが印象深い。彼にはクライドを捕まえることができない。その理由は正確には理解できないが、わからないなりに説得力のある演技が光った。とにかく実在感がすごい人だと思う。
大月さゆの化粧と髪形がイマイチな気がしたが、どうなんだろう。この人のボニーも観たいと思う。
レイモンドの沙央くらま。
帽子をかぶった姿の左側の横顔が、若き日の祐飛さんに似ているような…。今回は少し拗ねたような部分を作ろうとしているからかもしれない。それと帽子から無造作にはみ出したシケのせいかも。

主演の凰稀かなめ。歌で音程が取れないのが、厳しかった。愛原も歌はかなり痛々しかったので、コンビの歌唱は相当つらいものがあった。
主題歌を歌うオーディエンスの朝風れいが素直でのびやかな歌声で、よかったと思う。
そして、未来優希が、これでもか、という存在感と渋い演技と歌唱力で活躍していた。未来の熱さは、本来、荻田浩一の世界観とは相容れない健全な明るさに繋がるのだが、同じカラーを持った五峰亜季を上手く配することによって、綺麗に中和したような気がする。
それに、たしかに、現実世界の雰囲気を持った人がいないと、客席が理解できない世界になってしまうし…。
あと、これは初演の時からの感想だが、わりと明るく楽しくうまくいった強盗を一回だけ再現するあたりが、宝塚的にうまいな~と思った。妊婦を気遣うボニーの優しさの中に、彼女の生来の性格が垣間見えて。

圧倒的な存在感を示した愛原だが、彼女は、宝塚にいるべき人材なのだろうか?という疑問を感じた。
外の舞台なら、それだけの美貌とスタイル(と七光)で今すぐ主演を張れそうなのに…彼女の演技力は宝塚という世界にいる限り両刃の剣、という気がする。


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