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Studio Life公演「夏の夜の夢」両公演感想 [┣Studio Life]

テレビ朝日・Stuio Life主催 Studio Life公演
音楽劇「夏の夜の夢」

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本・演出:倉田淳
美術:松野潤
照明:森田三郎、森川敬子
舞台監督:本田和男【ニケステージワークス】
音響:竹下亮【OFFICE my on】
編曲・アレンジ:竹下亮
サブオペレーター:小川こずえ
ヘアメイク:角田和子、片山昌子
衣裳:竹原典子
振付:TAKASHI
歌唱指導:カサノボー晃

W.シェイクスピアの喜劇「夏の夜の夢」の登場人物は、いくつかのグループに分かれている。
妖精たち、アテナイの人々、素人芝居のメンバー。住んでいる世界が違うこれらの人々が、森で出会う。そして、いつしか、ひとつの世界に統合されていく。
アテナイの人々と纏めてしまったが、実は、森に入っていく若い恋人たちと、公爵シーシアス&アマゾンの女王ヒポリタとでは、やはり住む世界が違うので、おおよそ4つのグループかな?出てくる場面としては、3つの世界だが。
どの世界の男女も、仲互いしたり、大ゲンカしたりしながら、最終的にはハッピーエンド。
喜劇とはいえ、構造が複雑、その上、ストレートプレイを旨とするライフが、歌いだしたものだから、初演は、面白いが、どこか分裂した、筋を追っただけの物語に見えていたような気がする。

今回、前作の欠点がなくなり、全体がちゃんとひとつの芝居にまとまっていた
そして、役者がどうにか歌っている、というレベルから、聴かせる歌唱へ、なんか動いているというレベルから、ダンスを踊っているというレベルへ、出演者の実力がしっかりパワーアップしていた。
とうわけで、大満足の再演だった。

では、キャスト表の順に、感想を述べていきたい。(Wキャストの場合は、Lunaチーム/Dianaチームの順に記載)
ティターニア様の配下の妖精たち。
蛾の精(加藤陽平=客演)・豆の花(三上俊)・からしの種(吉田隆太)・蜘蛛の糸(冨士亮太)の4人は、歌って踊って、のアイドル歌手みたい。豆の花は、女の子で超可愛いからしの種も両性具有っぽいけど、女の子かな?あとの二人は男の子だったような気がする。
三上俊を見ていると、少女アイドルの親衛隊の気分が少しだけわかる気がする。ほんと、可愛い。今回、一番目についてしまった。
4人の妖精たちは、歌って踊るシーンが多いのだが、宴会芸?と思ってしまった前回に比べたら、ちゃんと歌でありダンスだった。こういうメリハリが出てくると、音楽劇としての楽しさに繋がってくる。
大人の妖精たちは、パック(倉本徹/小野健太郎)・ティターニア(林勇輔)・オーベロン(石飛幸治)。
パックは、いたずら好きな子供の妖精、みたいなイメージがあるが、セリフを聞いてみると、意外に大人なんだな~という印象。シニアの倉本はもちろん、小野の役作りも、大人の妖精だった。
倉本、頑張ってるけど、後半明らかに体力落ちてた。小野は若さで乗り越えてたけど、なんというか緊急時の対応能力が低い、というか。次々にアドリブを繰り出すライサンダーとディミートリアスに対して、妖精であるパックがタジタジになってちゃ駄目だろうという気がする。
ティターニアとオーベロンのコンビは、もう別格的に素晴らしい。特に、今回は歌の進歩に感動した。もちろん、元から歌の上手なお二人だったが、今回はプロとして聴ける歌になっていた。歌唱指導のカサノボーさんのお力かな?だとしたら、「カリフォルニア…」効果。歌うこと、が、伝えること、になっていたのは、大きい。もっとも、そういうレベルで歌っていたのは、妖精王夫婦だけだったが。
林の怪演は今に始まったことではないが、ひとつの集大成としてティターニアがあると思う。
このパターンで、たとえばジュリエットの母を演じていたが、それはちょっと違うんだよなー。林のティターニアは大好きだけど、大好きだからこそ、いつもは見たくない。しばらく、封印して、新しい林を見せてほしいと思う。

恋人たち。
ライサンダー(曽世海司/山本芳樹)、ディミートリアス(仲原裕之/奥田努)は、パックに操られて闇の中、決闘のまねごとをして疲れてしまうのだが、その時、パックに物まねをされやすいように、あらかじめ、口癖を作っている。
それぞれ別の口癖を作っていたが、曽世のが(ゲッダウンでしたっけ?)、本人のキャラに似合っていた
Luna版を観たのはけっこう早い時期だったのだが、仲原の歌が歌とは思えないシロモノで、驚くとか呆れるとか、そういうレベルを超えていた。その後、千秋楽近くでは、かなり上達していたそうなので、また機会があったら聞かせてもらいたいな。
ハーミア(岩崎大/松本慎也)とヘレナ(坂本岳大=客演/関戸博一)は、可愛らしい同期コンビの松本・関戸に対して、岩崎・坂本はデカい。既に相手役よりデカい。デカい坂本がデカい岩崎を、「巨大」とか言ってしまうのが面白い。「1センチ3ミリしか違わないのに…」と、岩崎が悔しそうに言っているのは、二人の身長差か?たしかにたいして違わない…。
森でのプロレスまがいの大立ち回りのために、ハーミアもヘレナもこの場面はスニーカーを履いて登場する。それ以外の部分は、お揃いの白い靴を履いていたが、1列目で観劇したら、関戸はストラップの部分を肌色に塗っていた。なるほど、そうするとハーミアと靴のイメージが変わるからね。なかなか細やかなアイデアだと思った。
とにかく、ライフの「夏の夜の夢」は、ハーミアとヘレナの戦いが素晴らしい。女同士のイヤミの応酬は見ていてつらいものがあるが、それがどこかで弾けて、取っ組み合いのケンカになったら、(現実ではそういうことには、まずならないので)観ているこっちまでスッキリする。
ライフの女役は、宝塚の男役ほど、“芸”として確立していないのだが、女役の精神はちゃんと確立していると思う。男の力強さだったり、敏捷性だったりを持って、女性にはとても演じられない派手なパフォーマンスを見せてくれるけど、スカートを穿いた男の子じゃなくて、ちゃんと女の子に見える。この4人の役者は、特に。中で一番女子度が低い(作ってない)のが松本なんじゃないかと思うのだが、松本の場合、男子とか女子の前にかわいこちゃんだからなー。三上もそうだけど。
ま、とにかく、この作品の見どころは、ここです!

アテナイの貴族様。
シーシアス(船戸慎士/牧島進一)とヒポリタ(松本慎也/岩崎大)のカップル。
船戸・松本のカップルは、援助交際カップルのようで座りが悪かった。牧島は初演とは変えたベートーベンヘアが印象的。最初、Lunaで見た時、ハーミアとヒポリタの役替わりってのは、どうなんだろう?と疑問だった。
初演の松本ハーミアは可愛かったけど、Lunaでの松本ヒポリタを観て、ヒポリタってのは、ヒロイン役者じゃなくて、別格の演じる役なんじゃないか?と思ったのだ。
しかし、岩崎ヒポリタはよかった
そこにドラマがあった。
あ、そうか。岩崎は、初演のヒポリタ、舟見の同期なんだよな。つまり、大人の女の役なんだ。
ヒポリタ役者は、技術でハーミアも演じられるけど、ハーミアを地で演じているうちはヒポリタはやれないんだ。これは面白い発見だった。
ヒポリタにドラマがあると、この作品は2倍面白くなる。
シーシアスの宮廷に仕えているフィロストレイト(緒方和也)。初演は、仲原が演じていたので、これは出世役なんだろうな。「WHITE」で主演しただけあって、少ないセリフのこの役は軽くこなしている。ちょっと濃いけど、顔も可愛いし、仲原に続けるよう、頑張ってほしい。
ハーミアの父・イジーアス(前田倫良)は、ピッタリ配役。まあ、いつもこんな役っていうのも本人的には、どうかなーとは思うけど、やっぱり痩せないと二枚目は回ってこないよな。

最後にアテナイの素人演劇集団。
スナウト(牧島進一/船戸慎士)、スナッグ(大沼亮吉)、スターヴリング(下井顕太郎/政宗)、フルート(青木隆敏)、ボトム(山崎康一)、クウィンス(藤原啓児)の6人なのだが、これはWキャストの必要があるのだろうか?特に、スターヴリング…
スナウトやってる時の、船戸氏が、めっちゃ楽しそうだったのが印象的。山崎さんと、なんか、視線交わしては遊んでいたような…。
藤原は、手堅い。けど、この役はふだんの観客対応(営業マンを兼ねている藤原氏は、客入れ・客出しのアナウンスをすることが多い)と同じかもしれない。いや、いいんだけど。自然な演技で。
山崎のボトムは、歌も含めて、怪演!
激しい動きのある芝居なんだけど、全然疲れた風を見せないで、劇中劇では一応二枚目の役を素人芝居だから三枚目風に演じるという高度な笑いに挑戦しているのだが、ハムレット役者だもんね、こんなの、朝飯前だと思う。初演から完璧だったので、再演だからどうっていうことはないのが、逆に残念かも。
二枚目ができる人なんだから、こういう使い方はもったいない!
シニア公演と新人公演みたいな分け方をして、山崎さんとか、石飛さんの二枚目を堪能したいなぁ。
でも、ティターニアの愛人になってからのリラックスぶりとか、ファンとして見ていて楽しい部分もたくさんあった。
フルート役は、決して大きな役ではないのだが、ヒゲが生えてきたから、もう女役はやりたくない、という美少年がすごく青木に嵌まっている。劇中演じる美少女・シスビー役が、(相手役の山崎は黄色いヒゲをつけた三枚目風なのに)はかなげで麗しい美少女になりきっているのが、またいい
しかも、この芝居が、ヒポリタの心を溶かすのだから、すべてが笑える芝居であってはならない。熱演が必要なのだ。そういう部分は、しっかりシリアスに演じられていたと思う。
青木の芝居は、シニアの山崎と互角にわたりあえる芯の強さがあると思った。

再演、そんなに観たいというほどでもなかったが、観てみたら、再演してよかったなーという感じ
劇団のひとつの財産として、「音楽劇」、そのうちまた上演してほしいと思う。

※山崎康一、岩崎大の「さき」の字は、「﨑」(やまへんに立・可)なのですが、携帯から出ない特殊な文字なので、本文中では「崎」の字を使用しています。


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