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雪組東京特別公演「シルバーローズ・クロニクル」観劇 [┣宝塚観劇]

「SILVER ROSE CHRONICLE(シルバー・ローズ・クロニクル)」

作・演出:小柳菜穂子
作曲・編曲:吉田優子、甲斐正人
振付:御織ゆみ乃、平澤智
装置:新宮有紀
衣装:有村淳
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
小道具:西川昌希
効果:切江勝
歌唱指導:矢部玲司
映像デザイン:奥秀太郎

観劇前から、いろいろな噂は耳に入っていたが、百聞は一見にしかず…だった。
まずは、「面白かった」と書いておきたい。
突っ込みどころ満載なのに、面白いなんて、自分、どうしちゃったんだろう?と思って気がついた。
この面白さ、記憶がある。
あれは、今を去ること18年前…小池修一郎の大劇場デビュー作「天使の微笑・悪魔の涙」は、賛否両論、評論家の意見も割れた作品だった。「ファウスト」をモチーフにしながら、ハッピーエンドで終わる物語は、「因果応報」でもなく、長生きした老人が若返って若い娘と青春を謳歌するなんて、「ムシがよすぎる」、その上、「メフィストまで昇天するなんて甘い」というのが、否定側の意見。
「そうかもしれないけど、面白かったんだもん、いいじゃない」と私は思った。大人になって宝塚を見始めたばかりの頃、この作品の地方公演(現・全国ツアー)を観て、文句なく楽しんだのだ。
今回の「シルバーローズ・クロニクル」も作品としては、無傷ではない。が、あの時と同じ、楽しさを感じた。それでいいんじゃないか、と思った。
もし、小池の次回作が「天使の…」だったら、間違いなく「この大馬鹿野郎!」くらい書いていると思うし、18年後に小柳が「シルバー…」を書いたら、「小柳もヤキが回ったな…」くらい呟くと思うが、若い勢いっていうのは、そういうのを超えて何かを表現するものだと思う。
そして、その若さが、例えば小池の場合は、主演の剣さんのオフを一日潰して鬘合わせをした、とか、必ず無茶な拘りに繋がったりしていて、それが逆に出演者の緊張感にも繋がって、好結果を生んだりするのではないだろうか?
出演者もみんなキラキラしていて、そのキラキラ感は、「DAYTIME HUSTLER」に似ていた。きっと、この作品に出られてよかった、と思っているんだろうなー、とカーテンコールを見ながら思った。

もちろん少女漫画界不朽の名作、「ポーの一族」は持っているから、小柳がパクり損ねたのは、わかっているが、萩尾望都原作をあんなにしちゃった「アメリカン・パイ」に比べたら、普通にベツモノとして楽しんだ。きっと、「ポーの一族」への拘りがあんまりないのか、大好きな少女漫画をズタズタにされたのは、ベルばら以来ウン十年、もう慣れきっているのかもしれない。

というわけで、ヴァンパイアものの作品ではあるのだが、登場するヴァンパイアの兄妹は、永遠の命を持ってしまったものの孤独とか、迫害されるものの悲しみとか、そういうものが一切見えない、相当能天気な兄妹である。それなりに、酷い目に遭っているにもかかわらず。
このヴァンパイアの兄妹が、50年前、翻弄したアランという男がいる。彼は、ヴァンパイアの妹に恋をして、詩を書いた。その詩を元に映画ができた。その映画には彼女自身が出演したが、ヴァンパイア・ハンターのヴァン・ヘルシング教授に追い詰められ、姿を消す。ヘルシング教授は、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」の登場人物ではあるが、こちらの著作権は切れているので無問題。
アランの孫、エリオット・ジョーンズ(彩吹真央)は、シルバー・ローズ製薬会社に勤務している。彼は、祖父の思い人、映画「銀のばら」に出てくる少女に恋をしていた。そこに、50年、眠りについていた、ヴァンパイアのアナベル(大月さゆ)が姿をあらわす。
そうしてすったもんだがあって、結局、またアナベルは姿を消す。そして…

という一見ロマンチックな、「ポーの一族」を彷彿とさせる基本ストーリーに、小池修一郎風ドタバタの味付がされたような作品。こうして見ると、小池修一郎は、オリジナル作品でも、ヅカの基本的なパターン設定をひとつ作り上げたのかもしれない。
小池の「イコンの誘惑」(1998・星組)あたりが原点になるのかな?昨年の「MIND TRAVELLER」もこのパターン。今年の宙組「A/L」(齋藤吉正)も基本パターンは一緒だ。…とすると、私は、この手のストーリーには、点数が甘いらしい。「MIND…」が多少辛めの採点なのは、主人公とその周辺の設定が深刻だったせいで、笑い飛ばすことが難しかったからだと思う。「イコン…」程度の深刻さは、リアルで面白いが、「MIND…」「DATIME…」の持つシリアスさは、少し重い。その重さが、現在の小池の立場の重さであり、その重さ程度に面白い作品を期待するのは、ファンの正直な思いでもある。
「イコン…」パターンの芝居は、今後小池以外の若い作家に大いに使ってもらいたいものだ。

小柳は、小池の忠実な弟子らしい。「イコン…」パターンの作品作りはもちろん、ハーフ・ヴァンパイアなど、小池の世界観まで踏襲している。その一方で、この作品は、ハーフ・ヴァンパイアを登場させた小池作品「薔薇の封印」のラストシーンへの強烈なアンチテーゼにもなっている。
「薔薇の封印」のラストシーン、ヴァンパイアであるフランシス(紫吹淳)は、ポーラの孫娘にあたるジェニファー(映美くらら)を愛するが、彼女をヴァンパイアにはしない。ただ共に生きる道を選ぶ。
永遠に生きる苦しみを愛する人に味合わせたくないから。
しかし、それは、ジェニファーにとっては、愛する人の苦しみをただ見ていることしかできないということだ。
だから、「シルバー・ローズ…」では、アナベルは一度、エリオットの前から姿を消す。そして、40年後、エリオットの人間としての寿命が尽きる頃にもう一度姿を現す。エリオットは、自身の人間としての命を惜しいとは思わない。ただ、アナベルと共に生き、共に苦しむ存在でありたいと願う。
ドラマのハッピーエンドとして、どちらが相応しいのか、それは、観る側の感性によっても違うと思う。ただ、アナベルと兄のクリストファー(凰稀かなめ)が、永遠の命をそれほど重く感じていない設定など、このラストに持っていくだけの伏線はできていたし、それほどシリアスな芝居ではなかったから、あのラストシーンは、気持ちよく受け止めることが出来た。
二人が永遠の世界へと旅立ち、後に2輪の銀の薔薇が残されていたという終わり方は、とてもロマンチックで、私は好きだ。

エリオット役の彩吹は、髪を横になでつけたオタク青年が実に可愛い
ヴァンパイアの大月は、ヴァンパイアというキャラに似合わないし、衣装がどれも似合っていなくて、可愛い娘役さんなのに、もったいないなーと思った。兄役の凰稀は、耽美な役なのに、これまた耽美とはほど遠く、これももったいなかった。ただ、国防省事務次官モートン(磯野千尋)の娘ヴァージニア(愛原実花)を誘惑する場面のニヤリとする表情はいい
2番手は凰稀なのだが、基本的にほとんどの場面で凰稀の対称位置で踊っていたのが、凰稀の同期である緒月遠麻緒月のダンスは、自分をよく知っていて、実にかっこいい。その良さが同期の凰稀のヘタレな部分を強調していて、小柳は、凰稀を作品2番手として大事にしたいのか、凰稀の陰になってしまった緒月を押し上げようとしているのか、聞いてみたくなった。私なら、この二人は対では使わない。
緒月の役は、実は50年前のヴァンパイア退治の首謀者、ヴァン・ヘルシング教授その人。そう考えると、やはり小柳は緒月を大事にしているのかもしれない。非路線をこっそり路線よりおいしく使う演出家の侠気、私はかなり好きだ。
専科の五峰亜季は、映画のプロデューサー。「雨唄」の時のような能天気な役で、ちょっともったいない。
美穂圭子の演じる科学者は、アンチエイジングの権威ということで、そこそこ威厳もあり、茶目っ気もあり、いい役だった。
エリオットのオタク仲間や、アイドルグループなど、若手にも見せ場があり、特に、キラキラのアイドルを演じていた蓮城まことは、そのノリのよさに目を奪われた
娘役は、妖艶な魅力を発揮していた愛原実花が印象に残った。それと、個人的にフローレンスちゃんの衣装を着ていた森咲かぐやちゃん。スタイルいい!

罪もなく、楽しく、幸せな気分になれる作品。脚本の弱さ…ということは感じるものの、作者の思いは伝わる作品だったし、主演の彩吹の力量が、多少の欠点を覆い隠していた。あえて、苦言を呈すとしたら、この作品は、ドラマシティでやる意味があっただろうか?ということだ。
日本青年館公演は、ドラマシティ公演は7000円、バウ公演は5000円という料金設定となっている。同じ宝塚の公演が、2種類の価格設定になるのは、どう考えてもおかしい。それなら、ドラマシティ公演には、それなりの“価格の理由”が必要になると思う。
昨年の「MIND…」同様、ドラマシティ価格で勝負すると青年館公演は、客席数が多いから2F席まで埋めるのは、いろいろと大変だろうと思う。このあたりのことは、営業サイドを含め、再考いただきたいと思う。

【今週のアクカイちゃん】

第一位 「イーストウィックの魔女たち」

第二位 「お茶会 大空祐飛」

このふたつがほとんどだった。
「イーストウィック…」は楽しいミュージカルなので、ぜひ一度帝劇に足を運んでほしい。
「お茶会」については、うちはうちのペースでぼちぼちやっていく予定なので、いろいろなブログで楽しいレポートを探していただけたら、と思っている。

今週は、すごいアクカイちゃんがたくさんあって、けっこう面白かった。

「SM小説 作品掲載」…なんで、これで引っ掛かるの?

「ミッキーマウス 80周年」…「アドルフ」のところで、手塚治虫生誕80周年、ミッキーマウスと同い年…とか書いたせいですね。手塚先生のお誕生日は11/3、ミッキーマウスは11/18とか。今年は、TDR、盛り上がるんだろうな~!(80歳でダブルターンできるんだから、さすがミッキーである…)

「ポセイドンは海を行け」…バビル2世ですか?すごいツボったんですよね、これ。

【去年の今日】
7月に退職した社員が「自分探し」の旅に出かけた。
1年経って、先日帰国したらしい。どんな1年だったのかな?ゆっくり話を聞きたい。ワインでも飲みながら…。


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コメント 2

ms

私も観劇してまいりました。

そして。
叫ばせてください・・・
オヅキ・・・好きだ~と・・・

まいりました。
あの濃さにメロメロです(笑)
by ms (2007-10-29 22:39) 

夜野愉美

msさま
コメントありがとうございます。
本当に素敵でした♪舞台写真も買ってしまいました(はぁと)
by 夜野愉美 (2007-10-29 23:27) 

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