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宮沢章夫先生… [┗エンタメへの想いとか薀蓄とか]

劇作家・演出家・サブカルチャー評論家の宮沢章夫先生が、8月に、うっ血性心不全で亡くなられていたことが明らかになった。


もう、10年ほど前のことになると思う。
宮沢先生が素人に演劇を教えてくれる、という講座が、早稲田大学の公開講座で開催され、好奇心いっぱいで参加してみた。といっても、宮沢先生のことを、その時は存じ上げなかった。現役の劇作家・演出家の指導を受けられる、というのが、面白いと思ったのだった。
先生のすごかったエピソードが二つあって、ひとつは、宿題「変わった歩き方の人を観察して再現する」をやった時のこと。「普通にあなた自身として歩くのではなく、誰かの歩き方を観察し、それをまねてみる」というのは、演技の一番の初歩かもしれない。この時、私は、宿題を出されてからの一週間、「変わった歩き方の人」をずっと探し続け、ようやくものすごく変わった走り方をする人を見つけ、これだ!と思ったのだが、ほかの受講者を見てみると、「後ろ向きに歩く」とか、シチュエーション的に変わっている場面を再現していた。ああ、そういうことでよかったか…と自分の想像力のなさがショックだった。でも、先生は、そんな私の「変な走り方再現」を興味を持って見てくれた。そして、別の人がやった歩き方に、「それ、今、自分で考えたでしょ」と突っ込んだ。どうして、観察して再現したものと、自分で考えたものの違いが分かるんだろう…と、驚いた。
もうひとつは、参加者の恋バナ(実話)を元に、グループごとに、その場で寸劇を作らせ、それに先生がコメントして、チームの寸劇として完成させる。そこから、先生がシチュエーションを作って、各チームの寸劇を、ひとつの舞台劇に完成させる、というのを一瞬でやって見せたこと。同時に発生する出来事、各チームごとにスポットを当てた場面、そこで発生するハプニング、飽きさせない展開が、演じている自分たちにも、「今、面白い演劇を作っている」と理解できる構成…プロってすごいと思った。


すっかり先生の演出の虜になった私は、先生が講義するサブカルの講座に通ったり、先生の演出する舞台を観に行ったりしていたが、ここ数年は、早稲田大学の先生として学生たちの指導に専念され、また、心臓の具合もよろしくないようで、心配していた。
65歳とのことで、まだ若すぎるー本当に残念です。


先生が熱を込めて語っていた、「ぼくらが非情の大河をくだる時」ーもう清水邦夫さん、蜷川幸雄さん、蟹江敬三さんと再会されたでしょうか。


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