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宝塚月組東京特別公演「ON THE TOWN」観劇 [┣宝塚観劇]

ブロードウェイ・ミュージカル
「ON THE TOWN」


作曲:レナード・バーンスタイン
脚本・作詞:ベティ・コムデン、アドルフ・グリーン
原案:ジェローム・ロビンス
潤色・演出:野口幸作
翻訳:天沼蓉子
音楽監督・編曲・音楽指揮:甲斐正人
編曲:青木朝子
振付:麻咲梨乃、KAZUMI‐BOY、桜木涼介、三井聡、永野涼比己
装置:大橋泰弘
衣装:加藤真美
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
映像:九頭竜ちあき
小道具:松木久尚
歌唱指導:山口正義
演出助手:栗田優香、熊倉飛鳥
装置補:稲生英介
舞台進行:片桐喜芳
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
演奏コーディネート:新音楽協会
制作:溝部誠司
制作補:西尾雅彦
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:阪急電鉄株式会社


友の会様が珍しく友達だったので、新年から何度か観劇することができた。
この調子で、今後もお願いしたい…と思いつつ…まあ、そううまくは行かなそうです。(既に玉砕の嵐…)


ブロードウェイ・ミュージカル「ON THE TOWN」は、1944年初演…今から、75年前の作品ということになる。
このところ、宝塚では古い時代のブロードウェイ・ミュージカルを上演することが多いが、これはどうしたことなのだろう[exclamation&question]
プログラムで演出の野口先生が書いているように、ブロードウェイ・ミュージカルは、たとえば、昨今の宝塚の主流である「エリザベート」や「ロミオとジュリエット」などのヨーロッパ系ミュージカルと違って、アダプテーション(セリフや場面や役を追加すること)には否定的。まあ、そもそも、昔の作品だったりすると、作者が死んじゃっているので、改変の提案が難しいこともあるだろう。
宝塚歌劇団は、海外のミュージカルをそのまんま上演するのには、あまり向いていない劇団だから、役の比重を変えてもらったり、トップさんのために1曲くらい新曲を増やしてもらったり…そういう心遣いが必要だと思うのだが、どうしてわざわざ、難しい方へ行くのかな…[バッド(下向き矢印)]謎が深まるばかり。
もしかして、経営トップの趣味[exclamation&question]
そうだとしたら、今後も、古きよきブロードウェイ・ミュージカルを上演し続けることになる…んですかね…[あせあせ(飛び散る汗)]
改変が許されないだけでなく、昔の価値観が踏襲されることも、もにょるポイント。経営層の男性には、懐古趣味かもしれないが、観客の多くは、今の日本を生きる女性なんだけど…[爆弾]


既にご存知の方も多いとは思いますが、一応、あらすじを。
アメリカ海軍の水兵、ゲイビー(珠城りょう)、チップ(暁千星)、オジー(風間柚乃)は、24時間の休暇をもらってニューヨークの街に繰り出す。チップは、昔、ニューヨークに来たことがあるという父親にもらったガイドブックを手に、観光する気満々。オジーは、一晩のアバンチュールを狙い、ゲイビーは、ステキな恋人に出逢える予感を胸に。
最初に地下鉄に乗った三人は、「ミス・サブウェイ」コンテスト優勝者のポスターを目にする。このポスターにゲイビーは一目惚れ。
どうしてもこの子に会いたい[黒ハート]と熱を上げるゲイビー。
三人は三方向に分かれて、ミス・サブウェイことアイヴィ・スミス(美園さくら)を探し始める。
ミス・サブウェイを選考した地下鉄の上の人に聞いてみようとするチップは、その道中、タクシー運転手をクビになったばかりのヒルディ(白雪さち花)に出会う。ヒルディは、チップを手に入れるべく、押しの一手。ヒルディの車で観光する中、父親のガイドブック(20年ほど前のもの)がほとんど役に立たなくなっている…みたいなくすぐりも入れたドライブシーンの映像が楽しい。
オジーは、絵の勉強をしているアイヴィを探すために美術館に向かうが、なぜか国立自然史博物館に来てしまう。そして、そこで、ピテカントロプスにそっくりだと言われて、学者のクレア(蓮つかさ)から研究材料にされてしまい、それにもめげず、さっそくクレアを口説く。一方、クレアもまんざらではない。ただクレアには、ピットキン(輝月ゆうま)という婚約者がいるので揉める予感…。
そして、ゲイビーは、アイヴィのレッスン場所として書かれていたカーネギーホールを訪れ、見事アイヴィに遭遇、さっそく今夜のデートの約束をする。
チップとオジーは、それぞれ、ヒルディ、クレアとうまくいき、楽しい時間を過ごすが、アイヴィを探せなかったことを悔やんでおり、ヒルディとクレアをアイヴィに仕立て上げようとするが、もちろん、すぐバレる。一方、待ち合わせの場所にやってきたアイヴィだったが、歌の先生のマダム・ディリー(夏月都)から、仕事をさぼってはいけないと諭され、デートを諦めてコニーアイランドに向かう。
アイヴィが来ると思っていたのに、直前ですっぽかされたゲイビーはショックを受け、船に戻ろうとするが、ヒルディがルームメイトのルーシー(叶羽時)を呼ぶから…と言って引き留める。
こうして、一晩かけて盛り場で盛り上がる2組と落ち込むゲイビー。彼を慰めるために河岸を変えるたびに、ルーシーに行き先を指示し、現れたピットキンに勘定を任せる…ということが続き、とうとう、ピットキンは、クレアに対して怒りをあらわにする。
ゲイビーは、最後の店で飲んだくれていたマダム・ディリーからアイヴィの仕事場を聞き出し、コニーアイランドの会員制クラブまで追いかける。そしてようやく、二人は再会を果たす。


という、要は、ボーイミーツガールな物語が、バーンスタインの音楽で展開していく。
冒頭の「ニューヨーク・ニューヨーク」というナンバーは、まっつのバウ「INFINITY」で使われていて、それで興味を持って映画版の「踊る大紐育」をWOWOWで見たりしたので、この作品自体は、見覚えがあった。ただ、音楽がだいぶ違う(バーンスタインの音楽が難解ということで、映画版はかなりの曲を差し替えていた)のと、ピットキンが出てこないこと、また、映画は戦後に作られたので、戦争中に初演だった本作とは、微妙にテイストが違ったり…と、ベツモノ感も強い。
珠城ら三人の水兵はとてもキュートで、話の内容も、新トップコンビお披露目らしい罪のないものだったが、物語は、若干退屈。こういう作品もあっていいが、そもそも月組は、昨年も「雨に唄えば」をやっていて、また、古きよきブロードウェイ・ミュージカルなの[exclamation&question]と、ちょっと食傷気味。オーケストラに厚みがあったのはよかったけど、バーンスタイン作品の場合、それが上演の条件だった可能性もあるから、手放しで褒めることもできない。
まあ、悪くはなかった…という、歯にものの挟まったような言い方だが、それが正直な感想。
というのも、新トップコンビの二人に、こういうハッピー・ミュージカルは似合わないんじゃないか、というか、もっと端的に書けば、美園さくらには、あの時代の典型的なミュージカル・ヒロインは向いていないような気がする。たしかに彼女は、足が長くて、歌もダンスもうまいから、あの時代のミュージカル・ヒロインをやらせたくなるのかもしれないが、持ち味が、そこじゃない感が強くて、私は、あまり推せなかった。
もう少しトップとしての経験を積めば、多少合わなくても克服できると思うので、最初は、もっと合うものを当ててほしかったな…と思う。


では、出演者感想をまとめて。
水兵トリオ。ゲイビーを演じる珠城りょうは、アイヴィに会えずにしょげてるところなど、大きい男性の「可愛い」部分が、魅力的だった。その一方で、妄想癖(この時代のミュージカルは、夢の中でミュージカルシーンというのが多いので、主人公は妄想癖がないと話が進まないのだ[exclamation])の辺りが、微妙というか…ま、その辺は演出に責任があるのかもしれないが、それほど妄想力を感じなかった。
(いや、むしろ、妄想力で生きていないところに、珠城の魅力があるような気もする。)
それにしても、どうして、珠城にブロードウェイ・ミュージカルをやらせるのかなぁ…[exclamation&question]
チップ(暁千星)は、本当に可愛かった。水兵のセーラー服が似合いすぎる。また、そんな可愛いかっこなのに、ダンスはキレッキレだし、けっこう肉食だし、実に魅力的だった。
そして、オジーの風間柚乃原始人にそっくり…という三枚目的な役柄なのに、男役としての魅力に溢れる役作り。研…5[exclamation&question]なんなんだ、この完成度[exclamation×2]風間柚乃…おそろしい子…[目]


そして、三人の水兵の相手役を務める三人の美女。
運転手のヒルディを演じるのは、上級生娘役の白雪さち花。可愛い系男子のチップを見つけると、一気に狩りの態勢に入る超肉食女子。しかも、近寄る別の女への牽制がハンパない。そんなヒルディを演じる白雪は、髪形や衣装の着こなしだけでなく、タクシーに乗っている間の、あれこれ激しい動きの中、一瞬たりとも気を抜かない足の置き方に、娘役の矜持を感じる。もはや、特別天然記念物の領域と言っていい。
オジーを研究対象にしてしまった学者のクレアは、男役の蓮つかさ。遠慮のない研究者にして、こちらも肉食女子のクレアを、嫌味のない演じ方で魅力的に見せる。婚約者のピットキンに対して、あれだけ酷い仕打ちをするのに、憎めないなんて、初めての娘役なのに、めちゃくちゃ上級者である。
トップ娘役としてのお披露目公演、ヒロインの若さと可愛さを強調するために、比較されやすい他のメイン娘役を上級生と男役にしたのだとしたら、大失敗。ヒルディもクレアも魅力的で、個性的、すっごくいい女だった。
ひるがえって、ヒロインのアイヴィ・スミス(美園さくら)。
なんで黒髪にしたんだろう…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
あのでかいリボンは、何のために…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
ゲイビーと初めて出会う場面の、あの衣装のダサさは、どうにかならないのか[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
しかも、あのショートパンツで倒立とか、ほぼセクハラ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]
スタイルが良くて足が長いという、彼女の美点は(もちろん抜群の歌唱力と、キレッキレのダンス力も[exclamation×2])ちゃんとわかったが、センスを創り上げていくのは、まだこれから…なんだろうな…。
いいのよ、そんなことは。
でも、今回の舞台で、私はヒロインじゃなくて、ヒルディとクレアの美しさに惹かれた。
それは素敵なことだと思っているけど、劇団が「かませ犬」的に使ったんだとしたら、ジェンヌを甘く見るんじゃない[exclamation]とだけは、言っておきたい。(私の思い過ごしだとよいのですが。)


クレアのフィアンセ、ピットキン(輝月ゆうま)。
アメリカ人には珍しく、人と争うことを嫌い、いつも人の意見を受け入れて自分が我慢してしまう男性。婚約者の度重なる浮気もすべて許して…でも、決して何も考えていないわけではない。
そんなピットキンと、ヒルディからいいように扱われているルームメイトのルーシー(叶羽時)が、偶然出会って、一瞬で恋に落ちた時、客席の誰もが、「よかったね[黒ハート]」みたいな雰囲気になったのは、輝月の力が大きかったと思う。あと、ダンサーとしてばかり認識していた叶羽が、すっかりよい女優になっていたのも、そろそろちゃんと認めないとね。てか、叶羽は、ブロードウェイ・ミュージカルが合っている。彼女を生かす役が必ずある。
そういう意味では、逆に、晴音アキは、ブロードウェイ・ミュージカルでは割を食ってしまう感じ。彼女は、最近の新しいミュージカルの方が役を取れるキャラクターのようだ。たぶんステレオタイプの女優じゃないんだな~。
麗泉里も、ブロードウェイ・ミュージカルが向いているタイプのようだ。いろいろなタイプの娘役がいて、月組の層の厚さを感じた。


全体的に楽しいミュージカルではあったが、出演者たちがトークなどで強調していた「戦争中の束の間の休日」という切なさは、私には伝わらなかったし、やはり古いし、女性の描き方がハラスメントすれすれだし、結局のところ、なんでこれを上演したかは、よくわらないのだった。
水兵コスチュームが可愛いから[exclamation&question]


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