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「表現者ノマド」-8 [┣大空ゆうひ]

「表現者ノマド」第8回に行って来ました。


今回のテーマは、「即興のイマジネーション」…ということで、ジャズピアニストの小曽根真さんゲスト。
小曽根さんといえば、2年前に橋爪さんとジョイントした「TERROR」という作品を観ている。その時の感想はこちらです。


さて、前回のノマドが、2017年の3月…ということで、ひっそりと自然消滅か…と思っていたら、ちょっとゆっくりめのテンポで進めていくようですね。スタッフの方のご挨拶で、そう聞きました。
今回の会場は、新宿の住友ビル。工学院大学のすり鉢状の教室だとどの席でもよく見えるのだが、平場の会場はなかなか見づらい。また、ビルが工事中で、会場に行くのも大変だった。元の会場の方がいいなぁ…[ふらふら]と、ちょっと思った。


まず、先に登場したゆうひさんは、髪の毛を頭頂部でおだんごにして、ブルーのストライプのシャツ(スタンドカラーで、長袖。袖の部分からグレーの別布がひらひらしている)、黒の裾が色々な長さに断裁されたスカートと薄手の透ける素材のソックス、お気に入りの白×茶のコンビの靴…きっちりしているようでいて、遊び心に溢れたいでたち。バインダーを持って入ってくる姿は「先生」なんだけど、今日のお客様に合わせてJAZZYな雰囲気を取り入れているのかな、と思った。


ノマドでは、登場する表現者の方のパフォーマンスの一部をトークの前に紹介してくれる。小曽根さんのパフォーマンスは、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」の演奏。冒頭の部分だったが、演奏が始まる前に、オーケストラのメンバーにウィンクをしたり、お茶目な姿が見えて、ステキな映像だった。


そして、小曽根真さんの登場。
客席が平場ということで、二人は、ちょっと高さのあるスツールに腰を掛けた。(ちょっと、座りづらそう…[あせあせ(飛び散る汗)]


まず、ゆうひさんから、「紫綬褒章おめでとうございます」と。
(2018年春の褒章において、小曽根さんは、紫綬褒章を受章。同時受賞に、平昌オリンピック・パラリンピックのメダリストや、歌舞伎の中村歌六、作家の夢枕獏などがいる。)
小曽根さん、ちょっと照れ臭そう。
「支えてくれた皆さんへの恩返しのような褒賞。年寄りがもらうものという印象があったが、今回、スケートの若い選手ももらって、若い人にも興味持ってもらえたかも」
みたいなことをおっしゃっていた。(2002年に50歳以上という年齢制限が撤廃され、若い人も授賞対象になっている。)
褒章は天皇が授与する体になっているので、受賞者が揃って観光バスに乗って皇居宮殿に赴くのだとか。
ゆうひさん、この「観光バス」に興味津々。「私たちは一生経験できないですからね」と言っていましたが、俳優さんは、可能性、ありますよ[exclamation&question]
授賞に際しては、「〇〇の功績に対して」みたいな授賞理由が一応あるらしく、小曽根さんの場合は、NYフィルとの共演による初のクラシックアルバム「BEYOND BORDERS」の功績ということのようだ。2003年からクラシック音楽を始めて、この新しい挑戦を評価してもらえたのが嬉しかったと語っていた。
このクラシックに挑戦する勇気をもらったことを含め、「相棒」神野三鈴さんとの出会いは、小曽根さんの中で大きかったらしい。


まず、そんな小曽根さんの生い立ちについて。
お父様は、著名なジャズミュージシャン(ピアニスト)の小曽根実さん。そして、なんと、お母様は、元タカラジェンヌで、加茂さくらさんと同期(42期)なんだとか。なので、子供の頃から、お母様について大劇場も観劇していて、小さい頃は、楽屋に入ったこともあるんだそうで、「ちどりがまだあった頃…」とローカルな話題をゆうひさんと話していた。
(ちなみに、ゆうひさんもおっしゃっていましたが、現在の大劇場が出来てからは、子供でも男子禁制が徹底されているようです。)
当時あった「宝塚ファミリーランドに連れて行ってあげるから」と言われて、大劇場にもおとなしくついていったそうで、それでも、レビューの方は(お芝居は退屈だったのでしょうかね)、生オケと銀橋を渡るスターさんの迫力に圧倒されていたそうです。
(よいお席で観劇されていたようです。)


幼少時、神戸の小曽根家には、お父様所有の「ハモンドオルガン」があって、そこで、真少年は、初めて鍵盤に触れる。
そしてある日(2歳の時)「黒鍵」の存在に気づく。黒鍵だけを弾いてみると、その音階が初めて「音楽」に聞こえた。(黒鍵の音を順番に弾くと“ヨナヌキ”と言われる日本の音階に近い音が出るから…とのこと。)さらに、黒鍵だけで「マック・ザ・ナイフ」の曲を弾けたので、父親に自慢したところ、「半音上げてみな」と言われたんだとか。
ここで、幼いながらに、半音上げるとか、半音下げるということを知った真坊やは、ゲーム的に鍵盤を覚えて行ったらしい。
ハモンドオルガンはずっとスイッチを入れていると、鍵盤が熱をもってくるため、お休みしなければならないらしく、幼い真くんは、その「おやすみする」ことがとってもイヤだったとか。
(ここでピアノのレッスンが苦痛でたまらなかったゆうひさん、驚く。同じく、私も驚く。)
5歳の時、ピアノを始める。しかし、バイエルが嫌い(曲が音楽的でない)で、ピアノへの興味は湧かなかった。その影響か、譜面は長いこと読めなかったそうで、今でも初見で弾ける人に驚くんだとか。天才の意外な面…
当時、父・実氏は、よみうりテレビ制作の11PMの生放送でピアノ演奏をしていて、6歳の6月6日に真少年も11PMに出演し、父と共演したそうです。
6歳の子どもが11時台の生番組に出演…て、当時のテレビ界、ゆるかったのね…[あせあせ(飛び散る汗)]
小2の段階で毎日放送にレギュラー番組を持ち、そんな子供だったから、学校の音楽鑑賞で、「モーツァルトはスイングしてない」と書いたらしい。モーツアルトとどっちがすごい神童だったのだろう…。


幼少時の話はこの辺にして、次にゆうひさんの質問。
ジャズのセッションについて。軽い打ち合わせをしただけで、演奏に入るが、それはどういう風になっているのか、みたいな質問だった。


小曽根さんは、「音楽は言語」と言う。
ジャズのセッションでは、基本的に長さは決めていない。
何処で終わるかは、聴いてるとわかる。
テーマを決めると、わかりやすい。 (世界観を共有しやすいということなのかな[exclamation&question]
歌手がいて、伴奏をする場合は、歌手をその気にさせるイントロが必要。イントロで「歌いたい」気持ちにさせなければならない。


そして、ジャズの表現とは、感情の表現、という話になって…


「あるコードの進行を聞いてある感情を持ったら、それを覚えておく」
そして、同じ音をやってみる。そのコードが、その感情を表すものになる。そして、それが、その人の言語になる。
その言語を使って、今の感情を音にする。
常に、先に感情。
でも、ボキャブラリーが少ないと、すべての感情が表現できない。
みたいな発言が小曽根さんからあって…


ここでゆうひさん、芝居の世界では、それは“声”になると思うけど、発してみたら、自分の思っていた音ではなかったり、声の種類ではなかったり…というようなことがある、みたいなことを語っていて。
感情がスタートなのは間違いないけど、その感情を表現するための「術」が自分にないと、自分にとって「正しい」表現に行きつかない、ということなのかな、と理解してみた。


小曽根さんとゆうひさんの掛け合いが面白くて、ところどころ手を休めて聞き入ってしまったので、話が飛んで申し訳ないです。


小曽根さんの口から、歌舞伎の囃子方である、田中傳左衛門氏の言葉が出てきた。(私が田中さんの出演した公演を観たのは、2010年。奇しくも小曽根さんの演奏を聴いたのと同じ、大手町の日経ホール。その時の記事はこちらです。)


「芸は盗む」


また、小曽根さんの言葉としては、「怖いところに行く」「マルバツじゃなく、どう生きたいか」「リーダーになりたい人とそうじゃない人がいる。みんな生き方、どちらも正しい」みたいな言葉が印象に残っている。(リーダー論は、バンマスになるべき人と、それをサポートする人…みたいなことみたい。)


そんな小曽根さん、基本Mだそうで、そういう鍛錬は、ジムできついトレーニングするみたいな感じ…と笑う。
実は、ゆうひさんと同じジムに通ってるそうです。


ゆうひさんは、「怖いところに行く」に反応していて、この間の舞台で、どう動いてもいい場面があって、照明さんもどう動いても捉えてくれるので、安心して好きにに動いていた…という場面の話をしてくれた。
(「グッド・バイ」の修治と美知子の最後の夜の場面のことですね。)
「その日の変な場所に行きたい」と思っていて、それは、その時一番行くのが怖い場所だったかもしれない、みたいなことを話してくれた。
また、 こわしてみる。置くものの位置を変える、みたいな話は、指揮者の山田さんとのトークの影響が出てるかな…なんて思って見ていた。


小曽根さんの語るジャズなワード、「しゃーない」[exclamation×2]


へ…へぇ…[あせあせ(飛び散る汗)]


セッションする相手への、一緒にやりたい、やりたくない…みたいな話もあって、実は、大好きな人との演奏はつらいそうです。
セッションは、パネルディスカッションしてる感じ…とも。これは、パネルディスカッションの経験がないので、よくわからない。


2年前、BODY&SOULというライブハウスでのチャリティーライブにゆうひさんが出演した時のこと。(その時の感想はこちらです。)
ここで、小曽根さんから、「あの時はすみません」とのお言葉。
そのまま、ゆうひさん、「いえいえ」と言って特に説明がなかったが、実は、あの日、小曽根さんと神野さん、会場にいらしたのだ。しかし、お忙しいスケジュールの合間をぬっての登場だったため、ゆうひさん登場の時間までは待てなかったようで、途中でお帰りになられた。たぶん、そのことをおっしゃったのかな…と思った。


さて、その公演の打ち合わせのため、主催の中村健吾さんにお会いした時、どこかお店に入ってお話ししましょうと、スタスタと歩き、この辺で曲がりますかね…みたいにおっしゃっていて、お店決まってるんですか[exclamation&question]と聞いたら、「いえ、全然」と答えられた姿に、「これがジャズか~[ひらめき]と感銘を受けた、とゆうひさん。
その行き当たりばったり感がジャズなのか…すぐ予約とかしちゃう私は、ジャズになれないですね…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


あと、面白かったのは、一緒に演奏したくない人=飲み会で呼びたくない人という話。
自分の話ばっかりする人は楽しくないと同じで、伴奏が邪魔になるような演奏はダメ。
お互いを聞く=会話になる=それが大事…というのは、同じ表現の場として、クラシックもジャズも変わらないとのこと。


小曽根さんが、2003年にクラシックに挑戦したキッカケは、彼の言う「ボキャブラリー」の限界ということもあったそうで。
ジャズ界の人々の言語はあらかた盗んでしまって、これ以上何も出てこない…となった時に、クラシック音楽の世界には、別の言語がある、と気づいたそうで、「この人たちのを盗もう[exclamation]」というのも、大きな理由だったそうです。


そんなクラシック界、色々なルールがあって、一つの楽曲が終わるまでは拍手しないというのも、ルールだそうです。
ちなみに、小曽根さん、拍手がルールになっているのも、どうかと思う、とおっしゃっていました。ジャズの世界では、アドリブターンになると、一人演奏するごとに拍手になるそうですが、ヘタでも拍手するのとか、おかしい[爆弾]みたいな発言が…[あせあせ(飛び散る汗)]
ガーシュウィンのシンフォニーは1楽章の終わりで拍手来ることがあって、拍手したくなるような派手な終わり方なんだそうです。で、拍手が起きると、イヤーな顔する指揮者もいるけど、拍手して気持ちいいんだから、させてあげればいいのに…と。
その一方で、音の消えるまでの余韻まで楽しんでもらいたい時に、食い気味に拍手が入るとイヤーな気持ちになることも。
そういう時は、わざと動かないんだとか。
先日、わざと動かずにいたら、客席から、「ごめん、早かったね」とおじさんの声。こういう交流は大好きだそうです[黒ハート]
あと、携帯電話を鳴らしてしまったお客さんがいたら、アドリブでその曲を演奏することもあるんだとか。いたたまれない気持ちが少しでも小さくなるように。お優しい…


大事なのは、今弾いている音を聴くこと。そして、それに惚れること。
なんて素敵な音なんだろう…と。
決して自惚れという意味ではなく。
自分が出した音、ではなく、出させてもらった音…みたいなことだろうか。


本当に素敵な演奏が出来ている時、どういう感覚になるんですか、とゆうひさんが聞くと、連れて行かれる感覚…というお答え。
演奏によって、どこかへ連れ去られるような感覚があるんだとか。


そして、ジャズを聴く側、つまり私たちへのアドバイス的なお話としては、「受け取る側のアンテナが大事」「ピンとこなかったら、あー、ピンとこなかったな…ということも、そのまま受け止める」「生きてる生の姿をそのまま受け取る」みたいな感じ。
素晴らしいという評判の演奏家の音楽を聴きに行ったのに、自分には何も感じられなかったとしたら、今日は感じられなかった、でいい、と。誰でもいつも素晴らしい演奏をできるとは限らない、その日がダメっていうことはある。気にしないでいい、と。


ゆうひさんは、最近、楽屋で共演者に話したこと…を語ってくれた。
「苦しんでいる芝居は、苦しんでいることを楽しまないと、伝わらない」と。苦しい…という感情が、そのまま出るだけでは、観客には伝わらないよ、みたいなことなのかな。役者として、深いお話を一瞬教えてくれたな~と、にんまりした。


毎日、すごい演奏をしている小曽根さん。
だって、シカゴを「成田から一駅」とか言っちゃうし、乗り打ちで演奏して700キロ旅するとか、真顔でおっしゃる。
それを達成するパワーの源はどこにあるのか、と聞かれ、
「エネルギーの元は拍手。拍手と笑顔と信じる力」
って、それ、どこの宝塚[exclamation&question]
すごくチャーミングな笑顔で、こんなことおっしゃるなんて、王子様です[黒ハート]


そんな小曽根さん、実は、昔は、お客さんが怖かったらしいです。
お客さんが怖すぎて、怖い顔をして演奏していたらしい。


それを変えてくれたのが、「相棒」の神野さん。
「チケットを買って来てくれているのよ。愛されてるって信じなさいよ」
と教えてくれて、それで、笑顔になることができた…と。笑顔になることで、客席と舞台上のエネルギー交換が可能になったんだとか。
素晴らしい話ですよね。
てか、公然とのろけてくださるところも、王子様です[黒ハート]


最後に、バインダーに綴じられていた、出席者から小曽根さんへの事前質問から。


ゆうひさんと共演するなら…という質問に。
「サシでやるとしたら、今まで、やったことのないこと。二人にしかできない音楽を即興でやりたい。ゆうひさんはダンスもするから、即興のダンスも入れて。 お好み焼き~[わーい(嬉しい顔)]とか、たこ焼き~[わーい(嬉しい顔)]とか、そういう感じで」
だそうです。


一番最後に、とても含蓄のあるお言葉もありました。
かつて、自分も、おごっていた時期があった。おごっていると、ウソをつくようになる。それが醜い。
だから、おごらないように、人間でいようと思う…と。


本当に魅力的な方だな~と思った。最高のジャズマンの最高のトークを、「行き当たりばったり」的に進めよう[exclamation](JAZZだから)と決めながら、ちゃーんと着地させるゆうひさんも、最高にクールな講師でした。


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