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「Daisy Pulls It Off」観劇 [┣Studio Life]

「DAISY PULLS IT OFF」

作:デニス・ディーガン
演出:倉田淳

美術:乘峯雅寛
音響:竹下亮(OFFICE my on)
照明:阪口美和
照明オペレーター:中島俊嗣(SLS)
衣裳:竹原典子
衣裳スタッフ:砂田悠香理、矢作多真実
ヘアメイク:MUU
ホッケー指導協力:東京ホッケー協会
翻訳:河内喜一朗
スチール撮影:山口真由子
演出助手:宮本紗也加
大道具:株式会社俳優座劇場
小道具:高津装飾美術株式会社
舞台監督:後藤恭徳(ニケステージワークス)

海外の優れた戯曲を紹介するThe Other Lifeシリーズでスタートし、いつのまにか、本公演のレパートリーに組み込まれた“デイジー…”が帰って来た。
今回は、まさかの「おっさんチーム」と「フレッシュチーム」みたいなWキャストで、さらにプロデュース公演並みの客演者数で、いったいどんなデイジーになるんだろう[exclamation&question]と思ったら、今までで一番感動的なデイジーだった。
劇中、繰り返されるラテン語の「ホネスタ・クアム・マグナ/気高き事は美しき事かな」「ヒンク・スペス・エフルゲット/行く手に希望は輝く」を聞くと、なんかウルウルしてしまう…そんなステキに熱い公演だった。
「Daisy Pulls It Off」は、1927年、グレンジウッド女学院という全寮制のお嬢様学校の創立25周年記念の文化祭が舞台になっている。1927年…わかんないですよね。昭和3年です。この年の9月1日に宝塚大劇場で「モン・パリ」初演の幕が開いた-そういう時代です。
文化祭のステージという体なので、観劇する我々は、1927年の父兄という体です。子どもたちは20世紀生まれですが、親世代は19世紀の人間ですね。エリザベート皇后暗殺とかも新聞で読んだかもしれません。(別に役作りして席に着いたわけじゃないけど[あせあせ(飛び散る汗)]
そして、上級4年生(高校1年生相当)の生徒による演劇「Daisy Pulls It Off」が、その文化祭の今日の演目という設定。出演者は、グレンジウッド女学院の上級4年生と先生方。上演開始前、大騒ぎしながら舞台に上がった生徒たちは、みんな舞台上できゃぴきゃぴきらきらしている[ぴかぴか(新しい)](スタジオライフの「Daisy…」という芝居自体はこの時点で既にスタートしているが、入れ子になっている文化祭公演はまだ始まっていない。入れ子といっても、劇中劇の外枠には、前後の校長訓示しかなく、一般的な劇中劇とは、だいぶ様子が違う。この演劇は、入れ子構造を用いることで、「つくりもの」感をMAXまで高め、そのことによって、逆に、ストーリーに織り込まれた「真理」を深い感動とともに客席に伝えている
演出の倉田氏がロンドンでこの作品に出合った時は、50代のおばさん女優たちが女学生に扮していたそうだ。そんな風に、あえてキャラじゃない人が演じること、素人の学生や教師が演じている体にすること、によって、この芝居の魔法が「かかりやすくなる」のかな[exclamation&question]
と言いつつ、実際に、女学生の中に、原とか藤原とかがいると、やはり恐ろしい…[爆弾]
ライフの公演は、基本がWキャストで、主要な役を演じてないサイドでも出演するのが基本。何の説明もなく、きゃぴきゃぴきらきらしている(しかも、裏キャスト用の鬘も用意していてやる気満々)なおっさんたちは、ひたすら怖いけど、なんか可愛かった[かわいい]
そんな風に思えたら、あとはもう、マジックにかかって突っ走ればいい[わーい(嬉しい顔)]

今回のWキャストは、「Shiny」チームが若手中心、「Mystic」チームが、別名ミスキャストチームと呼ばれるほどのメンバー。笠原がデイジーで「おちびちゃん」と呼ばれるとか、代表の藤原がじょしこーせーとか、何の冗談か、というキャスト。一方、「Shiny」チームも若さはあるものの、客演者が多く、人生初女装というメンバーも多数いる。
そういう構成の「Daisy…」を観ることで、あらためて、この作品の普遍的な魅力に気づくことができたのは、今回の収穫だったかもしれない。それだけでなく、「アドルフに告ぐ」の時に感じた、「スタジオライフという劇団の奇跡的演劇」という面も再認識した。ライフの役者にとっては、男役と女役、若い役と年寄役、二次元と三次元…そんな壁など、存在しないに等しいのだ!世の中には、男優と女優とライフ役者がいる[exclamation]そんなことを強く感じる公演だった。
なんたって、若くてお肌ツヤツヤの美形俳優より、50代であることをカミングアウトしている代表の方が、女子高生なんだもん[黒ハート]見た目じゃないのよね、ハートなの。観客は、ほぼほぼ女性なので、みんなその年代を経由してきている。数年前の人もいれば、数十年前の人もいるけど。そんな過去を思い出すとき、あー、こういう子いたわっ!って思えるのは、みんなライフの劇団員[exclamation×2]それってすごいなー[目]と思った。
あー、でも、もしかしたら、現役女子高生さんは、そうではないかも、とも思う。たとえ数年前でも、「既に郷愁の域に入ってしまった女子高校生」を彼らは演じているような気もするのだ。まるで、自分の学生時代が、「ホネスタ・クアム・マグナ」であったかのような幸福な錯覚…それが、「Daisy…」が愛され続ける理由かもしれない。
公立の学校から、奨学金をもらって私立の名門、グレンジウッド女学院に転校したデイジー。でも、グレンジウッドは貴族やお金持ちの子女が集まる学校で、公立の生徒を受け入れる土壌がない。先生も生徒もこのテストケースをおっかなびっくり受け入れている。
そんな中で起きる軋轢や、宝探しや、ホッケーの試合や、冒険などが、デイジーを本物のグレンジウッド生徒にしてくれる。それはまさに命懸けの冒険になるのだが、1927年という時代のイギリスってこんなだったかも…と思う。「キャンディ・キャンディ」と近い時代だよね[exclamation&question]
最後にずっと行方不明だったお父さんに再会できて、学校に隠された財宝も発見できて、そのお金がデイジー・メレディス基金になって公立に通う貧しい生徒もグレンジウッド女学院に通えるような制度が生まれる。デイジー一人が投げた石は、水面に「ヒンク・スペス・エフルゲット」の大きな波紋を広げていく。
心から楽しくて、あったかい気持ちになれた公演でした[るんるん]
今回は演出もだいぶ変わって、「文化祭」を意識したものになっていて、その、学生たちがアイデアを出し合って上演している感満載のステージが、ことのほかよかったです。

では、出演者ひとこと感想。

デイジー役。笠原浩夫は、「おちびちゃん」じゃないし、誰も笠原をお姫さまだっこできないけど、いつも口角を上げて、目を細め、笑顔で困難に立ち向かう笠原は、誰よりもデイジーだった。さすが、ミスター・スタジオライフ[ぴかぴか(新しい)]
宇佐見輝は、今回が初主演。ヒロイン経験はあるものの、女役の主役公演は少ないからね。でも、よかった。可愛かったし、どこから見ても女子高生だった、というか、女子だった[ひらめき]倒錯的手法を採って本質を描く「デイジー…」という作品でなくても、正攻法でデイジーを演じられそうな気がした。もう一度、数年後に、さらに上手くなった宇佐見のデイジーが観たい[exclamation×2]

トリクシー役。山本芳樹は、どこかふざけてる[exclamation&question]という印象が抜けないのだが、それでも保健室の辺りから、グッときた。隣にいるのが、笠原なせいか、ルックス的には違和感もなかったし。
客演の月岡弘一は、すごーく女の子に見えたわけではないし、超可愛かったわけでもないが、トリクシーとしてずっと宇佐見を見守っていた。そして、彼のトリクシーなら、詩が盗用された時、犯人はデイジーじゃないと信じてくれるだろうな[ひらめき]と確信できた。

シビル役。岩崎大は、想像以上に美人[ぴかぴか(新しい)]だった。そして、本当に学校のためにデイジーを追い出そうとしている純粋さみたいな部分も感じられ、かなりシリアスな芝居で作品に挑んでいた。でも、ちゃんと枠内におさまっているところが、岩崎もザ・ライフ役者[exclamation]
久保優二は、予想通り美しく意地悪なシビルだった。久保のシビルも数年後にもう一度観てみたいな。

モニカ役。藤原啓児が女子高生に見える自分にブラボー[グッド(上向き矢印)]と思った。私もプロのライファー[パンチ]でもね、岩にしがみついているモニカが、怯えて震えているのがホント愛おしかった。岩崎シビルとのやり取りも爆笑の連続。
松村泰一郎は、可愛かった。三つ編みがすごく似合ってたし。あと、ポスターの宇佐見・久保・松村は、どこからどう見ても女子だった。こんなに可愛いモニカは上演史上初めてかもしれない[かわいい]

その他、特に気になったキャスト。
ベリンダ役を客演した大橋典之は、ハネハネの赤毛のショートカットがよく似合って、委員長キャラがピッタリだった。
クレア役を客演した石田知之は、美人だった。他キャストに比べて上級生に見えたかどうかは疑問だが、生徒会長キャラではあった。同じ役を演じた曽世海司は、曽世らしい硬質な芝居で手堅く演じた。
アリス役は二人とも客演。宮崎卓真は、女子高生にはとても見えないかったし、ホッケーする姿が怖かった[あせあせ(飛び散る汗)]しかし、こういうおばちゃんっているよね…と思ったので、女性には見えたような気がする[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]
山根大弥は、Mystic(おじさん)チームに一人放り込まれた感じだが、曽世の副キャプテンというポジションをしっかりと守り抜いた。
デイジーの母親とミス・グランヴィルは、曽世関戸博一の競演となったが、曽世の女役は、これぞライフだなー[ひらめき]と思う。いつの間にか、女性に見えるようになった…のか、こっちが鳴れたのか…。関戸は、現実世界のミス・グランヴィルの役作りをちゃんとしていて、その上で、彼女が演じる母親とミス・グランヴィル自身という役作りがとても魅力的だった。そんな風にリアルに演じてもやっぱり「デイジー…」になるということも含めて。
ミスター・トンプソンの谷沢龍馬(シングル)は、すごいハンサム[ぴかぴか(新しい)]客演なのに女子高生がやれなかったのは、ちょっと残念だが、ウィリアム大おじさまのような素敵なパパだった。

“今日は何の日”
【12月13日】
鈴木梅太郎が初めてビタミンの抽出に成功する(1910=明治43年)。

抽出されたビタミンは「オリザニン」と名付けられたとのことですが、現在はビタミンB1と呼ばれているようです。別名チアミン。


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