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「アヒルと鴨のコインロッカー」観劇 [┣演劇]

「アヒルと鴨のコインロッカー」

原作:伊坂幸太郎(創元推理文庫刊)
脚本・演出:ほさかよう

美術:原田愛
照明:五十嵐正夫
音響:大久保友紀(ステージオフィス)
ヘアメイク:山本成栄
衣裳:小泉美都
舞台監督:高山和也

大道具製作:C-COM
制作:公益社団法人日本劇団協議会
制作協力:ネビュラプロジェクト NAPPOS UNITED
企画:首藤健祐(東京ハートブレイカーズ)
プロデューサー:仲村和生
主催:文化庁 公益社団法人日本劇団協議会
 

キャラメルボックスの多田直人が、劇団公演を離れ、現在武者修行中。スケジュールの合う限り追いかけたい[黒ハート]観劇の動機はそれだけ。

舞台も小説も衝撃的な場面からのスタートだが、時系列的に簡単に話を纏めておく。
大学生になったばかりの椎名(多田直人)は、初めての一人暮らしにドキドキ。まずはアパートの両隣の家に手土産を持って行こうとする。そしてドアの前で口上のリハーサルをしていると、片方の家のドアが開き、「うるさい[exclamation]」と注意を受けてしまう。さらに出したばかりのゴミを一瞥し、「分別[exclamation]」と注意まで…[爆弾]
最初からこれでは、ご近所さんと仲良くするのは無理かも…[がく~(落胆した顔)]
絶望的な気持ちで、ゴミの中から、分別対象のペットボトルを取り出す椎名。その時、彼の口をついて出たのは、ボブ・ディランの『風に吹かれて』だった。この曲は、登場人物が歌ったり、BGMとしてだったり、全編を通して、このドラマに流れ続ける。
椎名の歌につられるように、もう片方の隣家のドアが開き、同じ位の年頃の青年(山田ジェームス武)が登場する。
椎名は、特にボブ・ディランに思い入れがあるわけでもなく、曲もこの一曲しか知らないのだが、青年は最初から椎名に親しみを感じているようで、自分を「カワサキ」と呼ぶように、と言い張る。「かわさきさん」ではなく…
カワサキ(川崎か河崎かと椎名が聞いた時、答えてもらえなかったので、以後、このように表記する。)は、椎名をさっそく自室に招き、「この部屋の隣りの隣りには、外国人が住んでいる」と告げる。
そういえば、さっきの人、「うるさい」とか「分別」とか、妙なイントネーションで単語しか言ってなかったな…と椎名は気づく。
ところが、椎名がそんなことを考えている時、カワサキは、唐突に椎名を【強盗】に誘う。
強盗先は一軒の本屋。広辞苑を一冊盗むのだと言う。そしてカワサキは椎名に見張りを命じる。『風に吹かれて』を10回歌ったら戻ってこい、合流しよう、と。
見張りの途中、椎名は、非番のアルバイト店員女性に声をかけられるが、なんとかごまかす。そして、椎名が車に戻ってくると、カワサキは満足そうにしていた。椎名は、そこにあった辞書を手に「これ広辞苑じゃなくて、広辞林だけど[exclamation&question]と言うが、カワサキは気にしていなかった。
カワサキとの出会いは、椎名に、多くの謎と不安を与えたが、そこへ追討ちをかけるように、母からの電話がある。父が入院したので見舞に帰ってこい、それどころか、もう大学どこじゃないから退学して帰ってこいという電話だった。
入学したばかりでそれはないだろう、と思いつつ大学に行き、それなりに友達もできた椎名だったが、彼らは、隣人が外国人なんてありえないと言い出し、椎名はちょっと違和感を感じるのだった。
帰りに本屋に行こうという友人たちと別れ(昨日の強盗[exclamation&question]事件のことがあったので、さすがに本屋を訪れる気にはならなかった。)、バスに乗ると、そこに執拗なチカンがいた。乗客たちは、チカンを訴える女性の声を黙殺している。すると、一人の女性客が敢然とチカンに食ってかかり、撃退する。椎名はとっさにバスを降りた女性を追い、声を掛ける。
偶然にも、その女性は、昨日、カワサキの話に出てきたペットショップの店長、麗子(実川貴美子)だった。こうして、椎名は、カワサキと、ブータンからの留学生・ドルジ、そしてカワサキのもとカノでドルジと付き合うようになった琴美(清水由紀)の過去の物語に巻き込まれていく―

舞台は、アッと驚く展開を経て、ラストシーンへなだれ込んでいくのだが、伏線の張り具合、その回収の仕方が見事な上に、ドラマとしても面白く感動的で、これで入場料4000円って何か間違ってませんか[exclamation&question]みたいな舞台だった。
いや、間違ってない[ぴかぴか(新しい)]
実は、この公演、「SUKA-SUKA AJA DE!」と同じく、「日本の演劇人を育てるプロジェクト」の一環なので、文化庁が主催している。国からお金が下りているので、チケット代が安くても大丈夫ということなのだろう。
ちなみに育成は「演出家部門」とのことなので、作・演出のほさかよう氏が対象のようだ。ほさか氏の作品は、4年前にスタジオライフの小野健太郎などが出演した「眠れない羊」を観ている。あれも、ミステリーっぽい中にドラマとしての仕込みがいっぱいあって、先日観劇した「天球儀」みたいな展開だったが、あれよりずっと面白かった(直球)[ぴかぴか(新しい)]

そんな中、タイトルの「アヒルと鴨」については、中盤に言及があるのだが、「コインロッカー」が最後まで登場しない。そして、それは、アッと驚く使い方だった。
あとは、やはり、出演者がキモ[ぴかぴか(新しい)]
主役なんだけど、物語的には脇役というか、傍観者となる大学生、椎名に、32歳の多田を敢えて起用した慧眼[exclamation×2]
説明役でもあり、巻き込まれ役でもあるこのポジションを、ちゃんと立てて演じられる人であり、18歳と言っても「うそだ」と言われないだけのフレッシュさがある…ありがとう、多田直人、そこにいてくれて[exclamation]
ドラマの真ん中にある“三人の物語”は、バッドエンドかもしれない。が、そこに傍観者・椎名の視点が加わり、さらに椎名の物語(ここぞ!というところに本屋のアルバイト嬢(馬渕史香)が出てくる)が、作品に希望を与えている。
これ以上、個別に書くことが何もないくらい、彼は、椎名としてそこに立っていた[ぴかぴか(新しい)]

そして、この芝居のキーパーソンである山田ジェームス武
前半と後半で、まったく見え方が違う。それは、観る側の刷り込みのせいもあるのだろうが、本当に別人に見える。もう、なんか、役と本人の区別がつかないくらい、すごい[ぴかぴか(新しい)]

琴美役の清水由紀もよかった。この元気、この明るさ、この不屈の精神[exclamation]ドルジが心を開き、河崎が安易に手を出せなかった琴美の真髄みたいなものが、数々の奇跡を起こしたんじゃないだろうか。きらっきらの笑顔と女の子らしい啖呵が印象に残った。

細貝圭は、一番謎の多い役をさらっと演じていて、かっこよかった。長身でかっこよくてさりげない。彼にはいっぱいの「なぜ」が付きまとっていたが、そっか、優しい人なんだな…と腑に落ちた。

実川馬渕もきっちりとキャラを見せてくれ、その他の面々もすべて適材適所、全員が「アヒルと鴨のコインロッカー」の奇跡の出演者陣だと思った。

ほさかよう、コインロッカー閉じ込め決定だな[わーい(嬉しい顔)](←観てない人にはわからないってば[exclamation]

“今日は何の日”
【9月16日】
日本中央競馬会(JRA)、設立(1954=昭和29年)。


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