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ねじめさんのエッセイ [┣ヅカネタ]

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「仕事じゃないんだけど」と上司に呼ばれて行ってみると、宝塚についてのエッセイが新聞に載っているとのこと。6月12日の日本経済新聞朝刊。作家・詩人のねじめ正一さんのエッセイがまるまる宝塚ネタだった。

エッセイは、自作の小説がテレビドラマ化されたことからスタートする。WOWOWで放映された「荒地の恋」というドラマがそれで、そこに元宝塚の娘役トップスター月影瞳さんが出演していて、その演技に惹かれたことが書かれている。
ここでねじめさんは、「口元に独特の魅力がある女優さんで、わずかに口角を上げるだけで硬質な色香が匂うようであった」と、月影さんを評している。私が感じている月影さんの魅力を見事に表現する、ねじめさんのその筆致に、私はぐいぐいと引き込まれた。

そんなねじめさん、かつては、宝塚の舞台をご覧になっていて、彩吹真央さんがご贔屓ジェンヌだったらしい。
で、最近、とんと宝塚にはご無沙汰という、ねじめさん。ご事情があって、卒業後の彩吹さんの舞台も見ていないとか。そんな時、友人のすすめで「実力派が好きならきっと気に入るはず」とDVDを見せてもらい、北翔海莉に興味を持ったという。
そのDVD、「THE MERRY WIDOW」では、「陽気で明るい持ち味と、タカラヅカらしい品の良さ」、「Fantastic Energy!」では、「ギラギラしたダンス」に魅力を感じたという。なるほど、まさに、両作品における北翔の魅力は、そうだった、と再び納得。

こうしてねじめさんのエッセイは、8年ぶりの宝塚観劇へと進んでいく。
宝塚歌劇団としては、ちょっと耳の痛い言葉も連ねられているが、そこは却っておべんちゃらではない証だろう。
また、お芝居よりショーの方が楽しかった、という感想(もう少しオブラートに包んでます[あせあせ(飛び散る汗)])も、素直な気持ちであろうと思う。
以下、北翔の魅力を彩吹さんの「しなやかな腕」に比して、「ぶれないトルソ」であると、ねじめさんは語る。トルソとは体幹を指すのだろう。体の軸がぶれず、安定感があって、「観客は安心して彼女の動きに身をゆだねることができる」と。
そして、過去と現在、二人の実力派ご贔屓の話から、「芸術論」というような、ご自身の見解を述べられている。


「あらゆる表現のジャンルにはベクトルがふたつある。「拡げる」と「埋める」である。獲得した表現を陳腐化させないために、つねに生き生きと現在にかかわっていくために、ジャンルの境界線を拡げる作業は不可欠である。しかしながら境界線を拡げれば拡げただけ内側が希薄になる。拡げる時期の次には必ず埋める時期が来るはずで、そうしないと伝統は滅びてしまう。


いささか長く引用させていただいたが、ねじめさんは、比較的地味な「埋める」時期を担うのが、実力派の仕事であり、高い技術を要するわりに地味なこの仕事を、「タカラヅカの正統(オーソドックス)であろうとする強い意志、タカラヅカの伝統への尊敬の念」が支えたのだろう、というのがこのエッセイの骨子だと思った。
そして、最後に、彩吹さんが、この11月に、『オフェリアと影の一座』でカラフ王子を演じる予定で、それは女優としては「拡げる仕事」だ、と結ばれている。

同じ宝塚をテーマにした文章なのに、こんなに見事なエッセイを書かれると、相手はプロの作家であるにもかかわらず、なんかとても悔しい気持ちになる。こんな風に、短い中に、色々なネタをちりばめ、説得力をもって自説を展開し、最後に新たな展開を予測させて興味を持たせる。いつになったら、こんなステキな文章を書けるようになるのだろうか。
いや、むしろ、テーマを色々な方向に拡げてしまうべきだろうか。

“今日は何の日”
【6月14日】
武田信虎、子の晴信(=信玄)に甲斐の国を追放される(1541=天文10年)。
(←旧暦。新暦では7月7日となる。)


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July

私もこの記事に甚く感動致しました。日経のくせに経済には疎いバカと思っていましたが、ねじめさんには感謝です。
みっちゃんの「One Voice」がますます楽しみです。
by July (2016-06-20 16:05) 

夜野愉美

Julyさま
コメントありがとうございます。
Julyさまは、「One Voice」観劇できそうですか?
私は心の中で応援することになりそうです。
by 夜野愉美 (2016-06-20 23:51) 

yumidesu

こんにちは。
ねじめさんのこの記事、短いのにこの内容!とうならされました。面白かったですね。苦笑いもしつつ惹きこまれて読みました。 彩吹さん、みっちゃんと実力派を高く評価されていて、あらためて宝塚の魅力を考えさせれらました。みっちゃんのさよなら公演を堪能したいですね。
by yumidesu (2016-06-21 11:41) 

夜野愉美

yumidesuさま
コメントありがとうございます。
みっちゃんのサヨナラ公演、そして、できればゆみこさんのカラフ王子も堪能したいなーと思いました。
by 夜野愉美 (2016-06-21 22:34) 

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