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宝塚歌劇月組東京特別公演「STUDIO54」観劇 [┣宝塚観劇]

ミュージカル
「STUDIO54」

作・演出:齊藤吉正
作曲・編曲:青木朝子
振付:若央りさ、AYAKO
殺陣:清家三彦
装置:稲生英介
衣装:有村淳
照明:笠原俊幸
音響:大坪正仁
小道具:加藤侑子
歌唱指導:楊淑美
映像コーディネート:日本パルス
キャラクターデザイン:佐川明日香
ダブルダッチ指導:OVER THUMPZ
演出助手:樫畑亜依子
舞台進行:日笠山秀観、安達徳仁

2010年の冒頭、この劇場は「相棒」に沸いていた。そして2011年、再び「STUDIO54」に劇場が沸いている。
両方ともいい芝居かどうかは別にして、面白い作品だった。
こういう作品で青年館が開いてくれると、今年一年がよい一年になりそうで、わくわくできる。

さて、「STUDIO54」は、1970年代後半から1980年代にニューヨークに実在したセレブ御用達のディスコ、STUDIO54を舞台にした、フリージャーナリストと新進女優の物語。齋藤吉正先生のオリジナルのミュージカルだ。

霧矢大夢主演、齊藤吉正作・演出作品というと、「愛しき人よ」という忘れたくても忘れられない迷作がある。もれなくどこにでも振袖姿のゆらさんが現れたアレのことだ。
かつて月組に存在したシューマッハの4人のうち、汐美真帆・大空祐飛は「血と砂」、大和悠河は「A/L」という齋藤先生の佳作に出合っている。きりやんにも、もう一度、リベンジしていい作品を書いてくれ!と祈るような気持ちで青年館に向かった。
ま、それ位、「愛しき人よ」は、私の中ではトラウマだった。
齋藤作品は、当たる時は、ツボに直撃するが、外れるとデカい、というのが、「ヴィンター・ガルテン」以来の偽らざる気持ちだ。でもまあ、齋藤先生も、もう不惑だしねぇ、そろそろコンスタントに当ててほしい気もするが、諸先輩方を見ていると、どうかなぁ…。
でも、植田先生や柴田先生も40代が一番勢いのある仕事をしていたと思うので、これからの10年、しっかり見守りたいと思っている。(←なんだかんだ言っててファン)

舞台は1979年のニューヨークだが、まず、冒頭に29年前の場面が挿入される。
1950年のニューヨーク。
孤児院の前に、妻を亡くしたばかりの、ボリス・アシュレイ(研ルイス)が現れ、シスター・パメラ(花瀬みずか)に乳飲み子を預ける。自分の子供を孤児院に預けてまで、彼はやることがあった。朝鮮戦争が勃発したので、ジャーナリストとして戦地へ向かったのだ。
2幕の後半にアシュレイは帰国するが、この時のシスターがまったく年を取っていないことに、彼は驚かなかっただろうか?

さて、70年代後半、ニューヨークには伝説的なディスコ、STUDIO54があった。支配人スティーブ・ルベル(越乃リュウ)がOKした人間しか入れない憧れのディスコ…って、ディスコの恐怖、ドレスコードはここが発端だったのか!
当時のスター達(クリストファー・リーブ、ミック・ジャガー、ライザ・ミネリ、シルベスター・スタローン、マドンナ、ブルック・シールズ )が続々入店していくのを眺めながら、自分達も入りたいと騒いでいる若者たちを選別するスティーブ。「HAMLET!!」では頭が爆発しちゃった感じでロックしていたが、今回は、もっと洗練された感じの美青年。
(実在のスティーブ・ルベルは30歳で人生の頂点に立ち、46歳でエイズによって他界したそうです。)
田舎から出てきたばかりの一人の少年(明日海りお)が、54の前に立った時、スティーブは反射的に彼を中に入れる。
そのブロンドの髪に、その美しい顔に引き寄せられて。
実在の人物なので、ゲイという情報もそのまま取り込まれているのだろうが、宝塚で、ここまで真っ向からゲイの恋物語を描いた作品は初めてじゃないだろうか。主軸の話ではないけれども。
ところで、どうでもいいことだが、ブルック・シールズはディスコに入るには少し若過ぎないだろうか?(1979年にようやく14歳なので、この頃だと小学生?)

ここで、アメコミのような絵とともに、タイトルバックが登場する。こういうオープニング映像は、もはや齋藤作品の定番になりつつあるようで、クオリティが高い。映像になって、巨大化しても明日海りおの美しさは少しも減じることがない。いやいや、眼福でした。

ここで、ようやく1979年の年末のNYの場面となる。
さて、1979年と唐突に言われても、当時の状況を克明に思い出せる人も少ないだろうから、ヒントとして、ディスコの客に色々と思い出させている。それがわざとらしくないのは、DCの上演時期に合わせて、舞台が年末という設定なので、今年はこんなことがあった…と人々が回想しやすい(Review)雰囲気なのだ。
舞台上の説明によると、1979年は、ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)がアフガニスタンに侵攻を開始した年であり、俳優のジョン・ウェインが亡くなった年であり、アメリカの大統領は民主党のジミー・カーターであり、そろそろ大統領選が近づいてきていて、共和党の候補者は元俳優のロナルド・レーガン、そして日本の首相は大平正芳だった。(翌年、このアフガン侵攻が原因でモスクワ五輪をアメリカや日本がボイコットするという事件が起き、大統領選でカーターはレーガンに敗れ、大平は首相在任中に心筋梗塞で死去することになる。)
(ということは、日本では、キャンディーズが普通の女の子に戻ってしまい、山口百恵は「私、好きな人がいます」と宣言し、ピンク・レディーの人気が陰りを見せ始め、そろそろ新しいアイドルの存在が待たれている年ってことですかね。そして先日ラストランが決まった「金八先生」の第1回シリーズが放映開始された頃か。翌1980年が山口百恵引退、松田聖子デビューという日本の芸能史に残る一年だから。)
1979年がどんな年であったとしても、生まれていない人にはどうだっていいことだ。1980年以降に生まれた人にとっては、1979年も1789年も大した違いはない。だから、このサービスは、1979年以前に生まれた「大人の観客」へのサービスなのかもしれない。「あの頃、私、こうだったわ」的な。
さて、29年前に孤児院に預けられたホーリー・アシュレイ(霧矢大夢)は、父からの送金で大学を卒業し、作家を志したが、今はタブロイド紙のルポライターをして食いつないでいる。相棒でカメラマンのバド(青樹泉)、編集長のルーシー(憧花ゆりの)、編集部の仲間たちが登場するが、みんなアメコミから抜け出したようなキャラクターたちだ。
編集長は、実はアメコミではなく、日本の少年マンガ誌のキャラがそのまんま登場しているらしいが、オレとかエクスタシーとかペプシとか、その類型っぷりで笑わせてくれる。ケチャップから紙テープが飛び出してくるとか、「ペプシ入ります」とかのアイデアも面白かった。
ホーリーは、今の仕事に誇りを持てないでいるが、それでもやっているのは、彼の出た孤児院にいるアベル(晴音アキ)という少年が、重い心臓病にかかっていて、その治療費を稼ぎ出したいからだった。アベルはホーリーの書いたおとぎ話の小説をとても楽しみにしている。
身体の弱いアベルをからかう孤児院の少年らが演じて見せる縄跳びのパフォーマンス(ダブルダッチ)が素晴らしかった。そういえば、月組は「タカラヅカ絢爛2」で、星組が挑戦した縄跳びは、やらなかったんだよねー。続演で、星組に教えてくれたパフォーマーさんの都合がつかなかったからだったか。
ホーリーが今、追いかけているのは、カリスマロックシンガーのZ-BOY(明日海りお)と、新進女優ジゼル(蒼乃夕妃)とのスキャンダルネタ。そのために、フリージャーナリストという触れ込みで、STUDIO54に日参している。
が、大学の同級生だったフランク(光月るう)に偶然会ったことから、身分がばれ、54へは出入り禁止となってしまう。
それでも、ストーカーのようにジゼルを狙ううち、ホーリーは、彼女が、孤児院で一緒に育ったベッキーという少女だったことに気づいて行く。そんな中、ジゼルへの殺人予告が届いて…

宝塚のオリジナル・ミュージカルは、相互に、どこかで聞いたような…という組織内パクリの世界になることが多い。主人公が孤児院の出身とか、孤児院にお金を出しているとか、重い病気の子供を主人公が励まして生きる勇気を与えるとか、幼い頃に将来を誓い合った子と偶然再会するとか…
そういえば殺人予告とかもありましたっけねぇ。
でも、そういうことは、たぶん瑣末な問題なのだと思う。
原作があったり、実在の人物が主人公だったりしない限り、この100年で、オリジナルのネタは、出尽くしている。
その中で、いかに、アテ書きができるか、目を引くパフォーマンスができるか、オリジナル脚本の良し悪しは、もうそこに尽きる。
そういう意味で、「STUDIO54」は佳作と言っていいと思ったし、「目を引くパフォーマンス」として、フィナーレナンバーにDisco54/Showa54を日替わりで作ったことや、客席の盛り上がりっぷりを見ても、これは成功なんじゃないだろうか、と思った。

では、出演者感想行きます。
霧矢大夢(ホーリー・アシュレイ)…ボサボサのエクステロン毛が可愛かった[揺れるハート]きりやんのロン毛というと、「A‐Rex」の悪夢を思い出してしまうが、今回は、鬘じゃなくてエクステだったこともあって、すごく似合っていたし、衣装もよかった。役柄もきりやんの熱量をそのまま吸収できる、ピッタリな役だったし、それをすごく楽しそうに演じているきりやんを観ているだけで、幸せな気分になれた。

蒼乃夕妃(ジゼル・モーガン)…Z-BOYとの関係がちょっとよくわからなかった…というのは、全然まりものせいではないのだが、齋藤先生の萌え…みたいなものを一身に背負ってしまったのは気の毒だった。長い金髪にミニスカート…って、どこまでわかりやすい趣味なんだ。それで、アイドル歌手、実はサディストの恋人から暴力を受けている…とか、どんだけ?でも、ジゼルって、言いなりになるようなタイプの子じゃないのに…みたいなフラストレーションはあった。ま、まりもは可愛かったから、いいか。ホーリーとジゼルが幼なじみなのは、齋藤先生のデフォだからしょうがないのよね。

明日海りお(Z-BOY)…存在自体がよくわからない。たぶん、綺麗な顔してサディスティックっていうのをやってみたかったんだろう、齋藤先生が。で、一応敵役にもなってて…みたいな。みりおは、丁寧に積み上げて役を作っていく男役ではあるが、今回は、そういうのを取っ払って、楽しく悪役を演じていたという感じ。綺麗な悪魔というのは魅力的だが、私は、あんまり似合ってないと思った。

越乃リュウ(スティーブ・ルベル)…実在したSTUDIO54の支配人。Z-BOYを愛している。…というわけで、かなり正面切って同性愛的部分を描いていることは、宝塚にとっては革命的だったはずなのだが…最近はアリなのかな?若手作品、こういうの多いよね。クールな二枚目の組長を久しぶりに観た感じ。すごく好き、こういうの。

花瀬みずか(シスター・パメラ)…いくつですか?と突っ込みたい永遠の乙女。29年前から大人でしたよね?でもそんなシスターは、ダブルダッチもやってしまう、スーパーシスターでした。いつものあーちゃんであることが、一番。今回も綺麗でした。

研ルイス(ボリス・アシュレイ)…ホーリーの父。色々なものを犠牲にしてジャーナリストとしての自分を全うしてきた人。だから死に際して、ホーリーの父親であることを名乗ろうとはしない。いい役だし、いい役を演じてもやっと大丈夫になってきたんだなーと。

青樹泉(バド・ブーン)…スタイルいいし、かっこいいし、いい芝居をするし…この人を埋もれさせちゃいかん!と、最近特に思う。霧矢とコンビで動いてるのが、なんか似合う人だし。(相手役もよし、相棒役もよし)

星条海斗(ラングレー・マイヤー)…黒人役がホンモノにしか見えない。複雑なものを背負っているキャラを、あまり出過ぎず、きっちりと存在感を出していた。

憧花ゆりの(ルーシー・アネット)…本作品一番のヒットは、ルーシーというキャラクターと、それを見事に表現しきった憧花の怪演だった。どこにいて、何をしていても、かっこよく可愛く破天荒なルーシー。スタイル抜群でパンツルックが似合い、下品なセリフさえ似合ってしまうルーシー、これは、すーちゃんにしかできない役だと思う。

光月るう(フランク・ドノバン)…ホーリーの同級生という役を、なるほど、と思える落ち着きで演じきった。しかも、鼻につく性格を見事に表現していた。

夏月都(アンナ・マリー)…超可愛いおばあちゃん。しかし、どんな役でもできるな。

響れおな(ハリー)、貴澄隼人(ラリー)、輝城みつる(ビリー)…ルーシーの部下たち。笑いを取らなきゃいけない、大切なポジションをしっかりと演じていた。すごい回数、3人で合わせたんじゃないかな?

彩星りおん(リア・マイヤー)…ザックと呼ばれていた頃のZ-BOYの恋人。今でもザックを愛している。STUDIO54の歌手という設定で美声を披露。ちょっと70年代ソングとはフィーリングが違ってたかも?悲劇的な役にすごく嵌まっていた。黒人という設定なので、ちょっと化粧に苦労していたようだ。「ヴィンター・ガルテン」再びか?と思うようなラストシーンに関しては、りっちーの責任ではないし、そうなるまでの彼女の心理を少しずつ積み重ねていたと思う。

紫門ゆりや(ニール・クラフト)…Z-BOYに憧れるSTUDIO54のホスト。みりおの演じるZ-BOYごときにあっさりと騙されて駒のように使われてしまう役…ゆりやんしかいないだろう!まさにアテ書きだったし、そういう役をしっかり自分のものにしていて、よかったと思う。

珠城りょう(ダグラス・マーチン)、花陽みら(ジェイミー・マーチン)…警官の兄妹。妹はホーリーに惚れている。面白い兄妹だった。テンプレ的キャラではあるが、二人が生き生きと演じることで、作品に勢いが出たような、そんな感じ。珠城りょうくんは、なんか好きだなぁ。花陽みらちゃんは、こういう役が似合う。いい月娘に成長するだろう。

晴音アキ(アベル・サニーサイド)…スカピンの新公でシャルルを演じていたが、子役はいい。特に男の子がいいんじゃないか、と思った。

フィナーレナンバーは、「SHOWA54」だった。1曲だけみりおの歌った歌がわからなかったが、あとは全部覚えていた。「In the Navy」は、昭和54年ということは、たぶんピンク・レディーがカバーした「ピンク・タイフーン」の方のリリースということで使われていたんだろうと思う。山口百恵の曲が「美・サイレント」だったのも、かなりマニアック!!!
それにしても、齋藤先生の大好きなジュリーの曲が入ってなかったような…。「OH!ギャル」は以前に使ってしまったけど、「カサブランカ・ダンディ」も79年だったのに。


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コメント 2

あさみん

SHOWA54でみりおちゃんが歌ってたのは恐らく
SHOGUNの「男達のメロディー」だと思われます。
by あさみん (2012-02-05 03:33) 

夜野愉美

あさみんさま
古い記事への反応、ありがとうございます!
あー、全然知らない曲だわ…と思いながら、一応調べたら、「俺たちは天使だ」のテーマソングだったのですね。
チャンネル権のない私は毎週見ることはできませんでしたが、このドラマはいい!と思っておりました。懐かしい!
教えて頂き、ありがとうございました!
by 夜野愉美 (2012-02-05 23:54) 

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