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宝塚星組東京特別公演「龍星」観劇① [┣宝塚観劇]

「龍星」
 -闇を裂き天翔けよ。朕は、皇帝なり-
作・演出:児玉明子
作曲・編曲:吉田優子、斉藤恒芳
振付:羽山紀代美、石井潤
殺陣:清家三彦
装置:増田寿子
衣装:河底美由紀
照明:笠原俊幸
音響:実吉英一
歌唱指導:斉藤かおる
演出助手:小柳奈穂子、手島恭子、仲本智代

時代は宋(北宋)の末期=金勃興期と推察。龍星のモデルになるような皇帝は、見当たらず、もしかしたら南宋初代皇帝高宗(趙構)の即位時期を早めたイメージなのかな?と思ってみたり。(兄弟相続しているので)
だいたい1100~1125年頃の物語ではないかな。(日本だと平安末期、院政の時代。もうすぐ武士が勃興。)
金は、「この恋は雲の涯てまで」に出てくるあの金。「サラン・愛」の金は、後金と呼ばれるもので、民族は同じだけど直接の関係はない。むしろ「紫禁城の落日」の清の前身。

わからないっていう程ではないが、難解な設定
そのわりに、理解したい、という気が起きない雑な設定だったりもする。つまり、いつもの児玉ちゃんワールドである。
ここに皇帝の息子A宰相の息子Bという赤子がいる。宰相は皇帝の息子の命が狙われていることを案じ、の入れ替えを考える。
後日、成長した皇帝の息子(実は)は、対立する金への人質となり出国。金では、後々の策略のために、人質と戦争孤児を入れ替える。
皇帝の死後、皇太子になるために戻されたのは、この二重の入れ替えにより、皇帝の子でも宰相の子でもない
一方、宰相の息子として成長したは、事実を知らないまま、新皇帝の密偵として金へ派遣される。
は兄皇帝の死後、宋の皇帝に。宋の皇帝になってまで金の言うことは聞かない。裏切られた将軍は、が本当の皇帝ではない(彼はを入れ替えたつもり)ことを告げ、にホンモノの皇帝を連れて宋へ帰国するように言う。
ホンモノの皇帝が囚われている場所に行くと、虫の息の男が、自分が囚われ人だが、本当は宰相の子なのだ、と告げて死ぬ。
ということは、自分こそなのだ、と知って、は帰国する。そして、と対決し…。
ほら、混乱しそうでしょ?

ドラマは龍星と呼ばれるCを主人公に、李霧影と呼ばれる皇帝となるべき血筋の男Aを副主人公に展開する。

トンデモ芝居と呼ばれる児玉作品だが、唯一評価できるのは、視覚的・聴覚的な美しさがある、という点だ。今回も、安蘭たちが歌う曲が素晴らしく、歌詞は変なのに、ついつい引き込まれた。
また意味がわからないながら、赤い星の出てくる背景、それから移り変わる空の景色の美しさには目を見張った。齋藤吉正氏のパクリか!と思うような、双龍の紗幕も美しかった。

では、場面を追いながら感想を。
第1場 龍星
皇帝(高央りお)が自身の半生をしみじみ語る。身篭った寵妃を同道して、戦場に身を置く皇帝。突然、天が闇に覆われ(日食)、その時、男子出生の報が届く。皇帝は、わが子に「龍星」と名を付ける。高央は、同期の安蘭をよくサポートしている。
日食時の出産―不吉な印象があるが、実は、この不吉は主人公のものではない。この運命は、龍星として名付けられながら、龍星として生きることを許されなかった男の運命なのだ。分かりづらい~!
突如、一人の少年(成花まりん)が現れる。

第2場 プロローグ
今回の舞台は、後方に十数段の階段がしつらえられ、そのセンターに、迫りが設置されている。
その迫りから、安蘭が登場し、プロローグのダンスへ。全員がブルー系の衣装を着て、役を背負っていないプロローグは、「巌流」を思い出す。ま、こっちは白い鳥のイメージだったが。
今回の舞台、柚希礼音くんが、大人になったな~という印象が強かった。ちゃんと2番手の役どころにはまっていた。が、このプロローグのダンスはいただけなかった。主役の安蘭の影になって踊る振りのところは、足の上げる角度など前の人に合わせるのが、2番手の基本だと思う。やり過ぎは見苦しい。

第3場 謀
ここで、上で説明したような謀略が行なわれる。
ところで、皇帝も李宰相もかなりの年輩に見えた。で、皇帝は皇后がいて、ほかに寵妃がいる。だから、新しい息子が生まれてもいい。が、宰相は、奥さんといくつ離れているんだ???それとも後妻?そのわりに、奥さんの方が肝が据わっていたが…。
宰相夫人のかっちゃん(涼乃かつき)、男前な夫人だった。
皇后(朝峰ひかり)は、則天武后なみの女傑
殺されてしまう寵妃、狄妃(音花ゆり)も刺客を相手に一歩も引かない強さがあった。でも、お化粧はもうちょっと工夫が必要かも。
それに比べて、皇后の弟、張允(真汐薪)は、ちょっと情けないヤツだった。
そして、戦争孤児の少年(成花)が金の烏延将軍(星原美沙緒)の前に連れてこられる。

名前を聞かれて、少年はそっぽを向く。答えられない。
将軍は、この少年を龍星の身代わりにしようとする。そして、今日からお前は龍星だ、そして、オレの言うことを聞けば、ほしいものが手に入る、と言う。
少年の目がきらっと光る。
そして、階段を駆け上がった少年の後ろに青年龍星(安蘭けい)が現れ、同じポーズをして入れ替わる。
成花→安蘭という入れ替わりは、「巌流」ですか?

パクリ疑惑、と、言われ続け、とうとう訴えられない、劇団のほかの演出家の作品に目をつけたのだろうか?

第4場 運命
皇帝が崩御する。最後の言葉は、中原の安定への思いだった。
が、この遺言は効いているとは思えない
今後の運命を暗示するような、もっと効果的なダイイングメッセージはなかったのだろうか?
皇帝の死により、皇帝の長男が即位。龍星は皇太子として金から呼び戻される。安蘭は、最初から細身で華奢な姿で登場する。折れてしまいそうな痩身に緊張感を漲らせ、あくまでも爽やかな皇太子を演じている。
一方、新皇帝の命令により李宰相の息子は、密偵として金へ。
あり得ないから。宰相の息子がなんで密偵に行くのよ(笑)人材難か?
そして、それを止めない李宰相。この時点で宰相は、皇帝と息子を入れ替えたままにしようという意思ありあり。

第5場 潜入、それぞれの出会い―。
金は勃興したばかりの国だ。
だからって、金の猛将・烏延将軍の部下が、お笑いコンビ(美稀千種・紅ゆずる)と女剣士(陽月華)なんかでいいんだろうか?
このお笑いコンビと女剣士は、巨匠・植田紳爾のパクリである。
お笑いコンビは「我が愛は山の彼方に」に登場する。彼らは別に兵士ではなく、主人と運命を共にするために参戦した従者だったからいいのだが、そういう心配りは学んでいないようだ。
女剣士は「この恋は雲の涯まで」のチャレンカ。これは衣装もそっくりだった。
もちろんお笑いキャラや女剣士がいるのは構わない。それしかいないことが大問題なのだ。弱すぎるよ、金!

さて、私のご贔屓娘役・南海まりちゃんは、西夏からの人質にして、龍星の妻(不在中に勝手に結婚していた)、砂浬役。どうも気が強いらしい。いきなり説明して、いきなり龍星を殴って去って行った。わけがわからない…。
が、龍星は、惚れてくれたらしかった。綺麗だったからかな?

第6場 中原燃ゆ
階段の上で、太鼓が叩かれ、そのリズムで戦闘シーンがある。階段があるせいでステージはとても狭いのだが、背景の色使いもあって印象的な場面。その太鼓指導は、鈴木圭先生とか。意外な特技だな。
ここでは、少人数の舞台のため、兵士に娘役が混じっていた。みんな、一生懸命かっこよく踊っていて、感動。
この場面から、龍星の手足となる部下・飛雪(彩海早矢)が登場する。この飛雪がブレなく龍星を補助するので、このとんでもドラマが一見、一本筋が通った物語に見える。この間の「長崎しぐれ坂」新公では、悪人に見えた彩海が、かっこいい忠臣に見えた
この戦闘は、龍星・霧影という入れ替えられた運命の二人が、それぞれ潜入先のスパイとして戦闘を仕切りながら、敵に情報を流す、というスリリングな展開。

第7場 二つの愛
戦闘は、とある情報から中断された。
龍星の妻・砂浬の父親(西夏王)が宋を裏切ったのだ。龍星は、飛雪に問う。このまま放置したらどうなるか、と。
「宋は滅びる。が、その前に裏切り者の娘である砂浬は、残酷に殺されなければならない。」飛雪の答えが、龍星の取る道を決めた。
何も知らない砂浬は、龍星に父と国家の命乞いをしにきた。龍星は、砂浬の父の裏切りも、その結果、娘を見捨てたことも言わない。砂浬になじられるまま、すべての罪を背負う。
愛しているんだなーと感じる一瞬だ。
が、その次のラブシーンがイケてない唇の間が5センチ以上離れてるんだもの…。なんでだ~?砂浬の凶器のような髪飾りのせい???時が止まったかのように動かないキス、で、5センチ、、、微妙な時間と空間だった。
しかも、華奢なとうこさんが、大柄なみなみちゃんを抱え上げる、という大技があったにもかかわらず、なんか、ここ、ラブシーンっぽい香りがしないのだ。すごく残念だった。

一方、女剣士花蓮(陽月華)と、潜入した霧影(柚希)は、すぐに恋仲に。べったりしている二人には、そこはかとない色気が漂い、あぁ、もうデキてんのねーと分かる構図だ。
下級生の二人の方が、恋人の雰囲気を演出できる、というのは、由々しき問題だという気がするのだが…。

第8場 祖廟
龍星は、李宰相に、宋の代々の皇帝が眠っている祖廟に呼び出される。
そこで、宰相は、ここまで誰にも言わなかった取替え劇の話を始める。が、何も知らない龍星は、宰相の話の腰を折って、自らの母の思い出を語る。
その内容に矛盾を感じた宰相は、龍星の腕に傷がないことを確かめ、彼がニセモノである事を知る。そしてもみ合ううちに、宰相は命を落す。
どうやら、宰相は、帰国した龍星が我が子ながら優秀であること(これが間違いなのだが)を喜び、密かにそのまま皇帝にしてしまいたいと、思っていたようだ。そして、その秘密を共有し、親子の名乗りをしようと思ったか、あるいは、さすがにびびったか、どちらかの理由で事実を打ち明けようとしたものと思われる。
宰相の死を知った龍星は取り乱す。
が、飛雪は、すべての悪事を宰相にかぶせることを提案する。この事後処理の提案には、飛雪が龍星にすべてを賭けてついていこうとしているように見える。この時点で彼がどこまで事実に気づいたかは、わからないが、龍星が宰相を殺した、とは思っている。が、彼は事実より、自分のついていく人を選択したわけだ。

その事後処理を任せた時点で、龍星は、手を汚さざるを得ない立場に追い込まれる。つまり、罪のない宰相の一族を皆殺しにしなければならない。可愛がってくれた宰相夫人までも。
時を同じくして、病弱な新帝が崩御し、龍星は宋の皇帝になる。
汚れるだけ、汚れよう、と歌う安蘭は、狂気が垣間見えるほどの熱演。ここで「わらう」という歌詞が何度も出てくるが、この「わらう」にはどんな漢字が当てはまるのだろうか?それで意味が随分変わると思うのだが…。
笑う?嘲笑う?嗤う?

それにしても、「朕は、皇帝なり」はともかく、「闇を裂き、天翔けよ。」って自分で言う?そんなキャッチフレーズを…。それも齋藤チックだよなぁ…。

【後編に続く】


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