「キオスク」感想 その2 [┣大空ゆうひ]
「キオスク」公演感想はこちらです。
こちらでは、出演者感想を書いていきたいと思います。
林翔太(フランツ・フーヘル)…先日、ミュージカル「EDGES」で観たばかり。連続での観劇になった。
実は、この公演中に31歳になったらしい。もう、全然17歳な感じだったので、びっくりしたそれくらい、瑞々しくて素直なフランツだった。
橋本さとし(オットー・トゥルスニエク)…若い頃はけっこうやんちゃだったらしく、その頃、フランツの母・マルガレーテと知り合っている。第一次世界大戦の時に、塹壕の中で片足を失い、その後、キオスクの店主となって、そのことに誇りを持っている。彼の店の客には、共産主義者もユダヤ人もいるが、オットーは、すべて大事な客として対応し、そのことで、近所とトラブルになっても、決して引かなかった。
橋本さんのオットーは、ちょっと強面で、でもとても優しくて、すごくかっこいい男を、内面がステキだからかっこいいんだよ…と、説得力をもって表現していた。そもそもかっこいい橋本さんが、内面のかっこよさを余すところなく表現しているところが、私的ツボでした
上西星来(アネシュカ)…フランツがプラーター公園で出会った少女で、フランツにとっては、初恋で初体験の相手。脚本によれば、太っている(ふくよか)らしいが、上西はむしろ痩せすぎな感じなので、ちょっと首をかしげてしまった。(ラブシーンで、上半身裸の背中を見せるので、特にそれを感じる)
今回は、ものすごいレベルの演技陣の中に入ってしまったため、素人っぽさを感じる部分もあったが、フランツにとっては、「謎」でしかない、アネシュカの蠱惑的な魅力は、発揮されていたと思う。
吉田メタル…たくさんの役を演じた一人。
まず、冒頭登場するプライニンガーさん。マルガレーテのセフレで、パトロン。人生を楽しんでいたが、その絶頂で雷にうたれて、湖に沈んでしまう。その葬儀では、マルガレーテだけでなく、号泣する女(大空ゆうひ)もいたりして、本当に人生を謳歌していたんだな…と思った。ここで、上裸になるのだが、胸板が厚くて素晴らしい肉体でした
赤のエーゴンは共産主義者。とてもピュアな人で、右手を胸元に当てて拳で胸を叩くポーズが清々しい。でも、悲しい最期を遂げてしまう。
ボヘミア人ウェイターは、けっこう恐い人。フランツとの掴み合い、殴り合いは、毎回ビビりながら観ていた。
ロスフーバーは、オットーのキオスクに、ダビデの星を描いたり、店内に動物の血や内臓を投げ込んだり、ひどいことをする。どうやら、ナチ党員らしい。どうして人はこんな残虐なことができるのだろう…と考えさせられるような人物だった。
ハインツィは、もう、ヤバい彼のパフォーマンスは、マジでやばかった。裸の上半身にサスペンダーをつけていて(きれいにオンザ乳首)、それをゆうひさんがパッチンする…というプレイだったり、“狼少女”の紹介のMCだったり、バリバリにプロのMCだった。
馬のヘッドを付けて、プラーター公園の回転木馬まで演じていた。(プラーター公園の回転木馬は、本当の馬が使われていると読んだことがある、そういえば。「バイエルンの天使」だったかな。)
本当にお疲れさまでした
堀文明…こちらも、たくさんの役を演じた一人。
プライニンガーさんの葬儀を取り仕切る司祭。プライニンガーさんという後ろ盾をなくしたマルガレーテを心配するふりをしつつ、こっそり後釜を狙いに来る人間臭い司祭さん…
キオスクの裏商売、エロ雑誌を購入するおじさんは、キオスクを利用する別の客(商業顧問官)と出番が近いので、着替えが大変そうだった。
郵便屋さんは、フランツの成長を見守る一人で、彼の夢メモについて話を広げてくれたり、その一方で、さっさとナチ党員になったり、したたかなおじさんだった。
場面転換のキーを握ってたり、語り手みたいなポジションも担っていて、作品のキーパーソンになっていたと思う。
一路真輝(マルガレーテ・フーヘル)…ゆうひさん初舞台の「この恋は雲の涯まで」の時、2番手スターさんだった一路さん。こんな形で共演させていただけて、本当に光栄
若い頃は、いろいろやんちゃだったっぽい部分も見せつつ、今は、母親としてフランツを大切に思っている愛情たっぷりの姿が印象的。フランツが当局に連行されたのが、1938年で、ラストシーンが1945年。その間のマルガレーテの心情を思うと…
ステキに年を重ねているOGさんだなーと思います
山路和弘(ジークムント・フロイト)…かの有名な精神分析学者フロイト教授。愛する祖国、オーストリアを、その最晩年に立ち去らねばならない苦悩はいかばかりであったか。
大きく年齢の違うフランツとのやり取りが、博士を可愛く見せる。旅立ちの駅で、フランツの姿を探す、ちょっとした視線の動きがね…泣けました
大空ゆうひ…たくさんの役を演じた一人。
プライニンガーさんの葬儀に現れた女性。遺体を前に大号泣。泣きながら、彼の体に投げかけられた、参列者たちの花を回収していくのだが、時々花に翻弄されていたような…それにしても、あんなに号泣するなんて、どのような関係の女性だったのでしょう
フランツが初めてウィーンを訪れた時、彼に声をかける、腰の曲がった老婆。ストールで顔を隠しているので、本当におばあさんに見える。彼女の忠告を聞いて、アッター湖に帰った方がよかったのかもしれないね
キオスクの客、ハインツル博士夫人。新聞とタバコを毎朝購入し、足早に去る。フランツのことを“可愛い坊や”と認識している。イケてる奥様でした
アンナ・フロイト。ジークムント・フロイト教授の娘で、自身も学者。父の様子を心配していて、フランツのことは、父の大切な友人と理解している。ステキな女性だった~
娼婦。フランツが訪れた館から出てくる。ビジネスライクなお姐さんでした
キャバレー“洞窟”のウェイトレス。鬘も変えて、化粧も頬紅追加して、頭のテッペンから声が出てくるような歌を歌い、露出もすごい腕や脚を惜しげもなく見せていただき、どきどき腕のラインがスッキリしていたような…そして、MCのハインツィさんに跨り、サスペンダーを引っ張ってパシッといい音をさせてぶつける、ドSなお嬢さん、惚れ惚れしてしまいます
フランツが逃げ出そうとした時、駅で切符を売るゆうひさんの態度が悪すぎて、購入をやめてしまう…という場面がある。こういうふてくされたキャラ、めちゃめちゃハマるよね~
ゲシュタポらしき男。黒いコートにたっぷりと血がかかったような、そんな柄の衣装で登場する。髪型は、アンナの時のようなシニヨンの上に、黒いハットをかぶっている。この髪型がよかったのかどうか、少し考えてしまうが、ゆうひさん&演出の石丸さんのお考えがあってのことなのだろうと思う。まあ、そんな髪型であっても、役名“やつれた男”のこの役は、めちゃくちゃ怖かったお見事です
フランツの衣装替えを手伝って、花を渡してあげたりする役だったり、フランツの初体験の場面でキオスクの扉を閉じる役だったり、転換にも力を貸していた。お疲れ様です
ゆうひさんと、堀さんと、メタルさん、三人による、たくさんの人物は、「キオスク」の世界、そのままだった、と思う。こういうキャスティングって面白い。
またまた多くの抽斗ができちゃったね~
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