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プロであること [┗エンタメへの想いとか薀蓄とか]

私の母は、どういうわけだか昔から落語が大好きだったそうだ。
私が通っているコミュニティカレッジで、ヨーガや英語などではなく、落語観賞の講座に通っている。それは、まあ微笑ましいが、大学の卒論も落語についてだったらしいから、実は相当イタいファンらしい。
その母が、昔の手紙類を整理していたら、いまは亡き五代目柳家小さん師匠からの手紙を見つけたという。

永谷園のCM、あの♪小さん師匠が驚いた♪でおなじみの小さん師匠からの手紙は、今から50年近く昔の、ファンレターの返事だった。
ファンレターといっても、どうやらそれは苦情のような手紙だったようだ。
ラジオで聞いた小さん師匠の噺が、あまりよい出来に思えなかった母は、若気の至りで、苦言を呈す気になったらしい。
(なんて恐ろしい…。自分に置き換えてみたら、ファンレターで大空さんにダメ出しするってことでしょう?ありえない…もし、ファンレターなんて書くとしたら、ここで書いてるようなことじゃなくて、褒めちぎると思います、私!)

小さん師匠からの手紙は、とても達筆で、内容は単なる落語好きの素人女性に対して、真摯に批判を受け止めたものだった。
決して言い訳がましくなく、ラジオという媒体には時間制限があること、だから時間を気にしながら演じていたことは事実で、自分としては手を抜いたつもりはなかったが、それをあなたがそう感じたのだから、きっとうまくなかったのでしょう、というようなことが書いてあった。
そして、若い方が落語に親しんでくれるのは、本当に嬉しいことだから、これからもたくさん落語を聞いてください、そして、またいけないことがあったら、どしどし指摘してください、というようなことが書かれていた。

プロであるということ。
特に人に芸を見せるプロである人が自らを律する厳しさを思い、胸が熱くなった。
こちらは素人なのだから、見当違いの指摘もあるだろう。
それを、「だから、素人は…」と排除するのではなく、自分の内側を探って、原因に思いを馳せ、真摯に受け止める。
なぜなら、観客は普通、素人だからだ。
プロとは、素人とは明らかに違うレベルの芸を持ち、それによって、素人である観客を納得させ、感動させるものなのだ。決して言い訳せず、おごらず、黙々と努力を続けることによって。
今は亡き小さん師匠からの手紙を読み、プロの芸人の厳しさを感じるとともに、落語の裾野を広げようと地道に努力されていらしたお人柄にも頭が下がる思いだった。

【去年の今日】
「暁のローマ」東京公演前半の感想。
みんな頑張っていたな~。次の公演も、月組の総力を結集したものが観たいな~!できれば、素晴らしい脚本で。


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