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エルアルコン [┣ヅカネタ]

2007年最後の大劇場公演(星組)の制作発表が先日行なわれた。
芝居は、「エル・アルコン―鷹―」である。
これは、青池保子氏の同名漫画および、先行作品である「七つの海 七つの空」の劇化作品。私がこの作品を知ったのは、氏の有名なコメディ漫画「イブの息子たち」より後のことだった。
「イブの息子たち」「エロイカより愛をこめて」でおなじみの青池氏にシリアス路線があったのか、というのは新鮮な驚きだった。ただ、この驚きには実はオチがあって、青池ファンには常識なことだが、とうこさん演じるティリアンの子孫が、かの“少佐”であり、レオンくん演じるルミナスの子孫がかの“エロイカ”であり、二人の対決は実は先祖の因縁ということになっているのだ。
先行作品「七つの海 七つの空」は、いわゆる少女漫画
おてんばな貴族の令嬢が、男装して海賊志願。キャプテン・レッドというハンサムな海賊に恋をして…ところが、キャプテン・レッドはただの海賊ではなかった。父の仇を討つために海賊に身をやつしているものの、実は豪商の一人息子でオックスフォードで法学を修めた秀才だったのである。仇敵、ティリアンを倒したキャプテン・レッドは、元の地位には戻らず、海に生きることにする。そしてヒロインもまた、彼を射止めるために、側に居続けることにする、そんなストーリー。
ところが、青池先生は、ここで悪役であるティリアンを殺してしまったことを死ぬほど後悔したそうで、とうとう少女漫画の掟を破って、ティリアンを主人公とした漫画を描きはじめた。それが、「エル・アルコン―鷹―」。少女漫画界初のピカレスクロマン(悪漢小説)かもしれない
この作品のファンだった私は、2001年のバウホール公演「血と砂」のストーリーを聞いた時、齋藤先生は同志に違いないと思った。プルミタス(大空祐飛)が結成した義賊団の名が“エル・アルコン”だったから。
ただ、さすがにこの作品を舞台化するとは思わなかった。いくら、齋藤先生がオタクだったとしても。
なぜかというと、宝塚作品として舞台化するには、バランスが悪い作品だから。
ドラマ性を考えると、「七つの海 七つの空」を舞台化する方がいい。
かっこいい主人公、海の男。おてんばなヒロイン。そしてライバル的な海賊(キャプテン・ブラック)もいる。この辺りを中心に、ティリアンをかっこいい悪役に描けば、完璧。今の宝塚で考えたら宙組がいいだろうな。

キャプテン・レッド(イギリスの豪商の息子・後に海賊)…大和悠河
ジュリエット(侯爵令嬢・海賊好き)…
陽月華
キャプテン・ブラック(レッドのライバルからよき協力者へ)…蘭寿とむ
ティリアン・パーシモン(英国海軍大佐・実は反逆者)…悠未ひろ

こんなの、かなり見たいかも。
一方、「エル・アルコン―鷹―」となるとそうはいかない。
ティリアンは、徹底的に悪のヒーローだ。彼の価値基準には善と悪というベクトルはなく、強いか弱いかだけが存在する。まあ、たしかに彼にだってそうならざるを得なかったトラウマは存在する。
彼は、父の子ではなかった。少なくともそう父は思っていた。
妻の裏切りを糾弾できなかった父は、幼い息子にその歪んだ思いをぶつけた。虐待されて育った彼は、ただ強くなりたいと願った。その強さの象徴が母の祖国スペインだった。だから彼は英国海軍の軍人でありながら反逆者となった。
彼にとって、男は2種類しかいない。彼に従う者と、敵。敵はすべて葬る。
女なんてもっとひどい。「女は抱かれていればいい」と彼は言う。
母の再婚相手、パーシモン卿の愛人だったシグリットともねんごろになっているし、親友の婚約者にも手を出すし、女海賊だってとりあえず手は出しておく。そして、彼を愛した女はすべて殺される。反逆者であるティリアンは、愛ゆえに彼のすべてを知りたがる“女”を警戒しているのだ。
これじゃ、ロマンスなど生まれる余地はなく…宝塚として成立するとはとうてい思えなかったのだ。
それをやってしまう、齋藤先生の勇気には敬意を表したいが、幕が開くまでは少し心配なのも事実。
しかも、娘役トップの遠野あすかちゃんの演じる役が、女海賊ギルダだというのだから。
ギルダは、イギリスにもスペインにも与しないフランスの女海賊。それゆえに、政治と陰謀に巻き込まれて、反逆者・ティリアンのスペインへの忠誠表明の証として、スペインに護送される途中、船火事を起こして逃走、ティリアンの命を狙うが、賞金稼ぎに殺されてしまう役。
全身に深い傷痕があるのに、船から離れられない。「船乗りには船がすべてです」と言える女。かっこいいけど、大きく娘役から逸脱している役。普通なら、男役があえて娘役として演じる役だと思う。それがトップ娘役なんだから、この作品は、宝塚の従来のイメージを覆すような作品になりそうな予感はある。
最後に、ひとつ気になることがある。
レオンくんの役名が、ルミナス・レッド・ベネディクト(原作)ではなく、ルミナス・レッド・ドレイクである点。
齋藤先生は、レオンくんに伝説の海賊ドレイク船長に重なる人物を演じさせるのだろうか?

【去年の今日】
ENAKに「ME&MY GIRL」の復刻版発売の記事が出ていて、その写真に研4でヒゲをつけたご先祖さま役の祐飛さんが出ていた、という話題。
可愛かったんですよね、ほんと。


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