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「はじまりのカーテンコール」観劇 [┣演劇]

「はじまりのカーテンコール~your Note~」


原案・演出:植田圭輔
脚本:伊勢直弘
音楽:稲垣大助
美術:古謝里沙
照明:仲光和樹(E-FLAT)
音響:天野高志(RESON)
衣裳:小林洋治郎(Yolken)
ヘアメイク:小林純子、星野智子
演出助手:河原田巧也
舞台監督:石井研一郎


「植田圭輔初演出作品」という宣伝文句に誘われ、観に行きました。
てか、それが宣伝文句になるっていう、植田圭輔がすごいというか。


ゆうき(高崎翔太)、つとむ(田村心)、りょう(安西慎太郎)は、高校の仲良しトリオ。
そろそろ将来について考える時期、ゆうきは生家の酒屋を継ぐことが決まっていて、つとむは進学予定。できれば、県立大学を狙っている。そんな二人に、りょうは、俳優になりたいという夢を話す。驚く二人だったが、すぐにりょうの夢を応援するようになる。そして、東京でオーディションを受けたりょうは、その帰り、雨の中、スリップした車にはねられ、18歳で他界する。
りょうの兄、るい(古谷大和)が、りょうの遺品の中から見つけた「演技ノート」を、ゆうきに渡したことで、ゆうきの人生が変わる。ゆうきは、りょうの夢を自分が叶えようと思うようになる。だが、東京で俳優になりたいというゆうきに対して、父親(和泉宗兵)は猛反対する。実は、父親は、俳優を目指していた過去があった。挫折したゆえに、息子に同じ思いをさせたくなかったのだ。
父に逆らったまま、東京に出たゆうきは、居酒屋でバイトしながら俳優の道を目指していた。バイト先の先輩(河原田巧也)も俳優志望で、ゆうきにやさしくしてくれていた。ある日、ゆうきは、受けたオーディションで、審査をしていた演出家ウエマツ(根本正勝)から、りょうの夢を受け継いだ話をボロクソに言われ、食って掛かってしまう。
それがウエマツの心をとらえ、ある舞台に出るチャンスが回ってきた。が、そのことで、バイト先の先輩の嫉妬を買ったり、共演者のナツキ(田村心)と気持ちが通わず、うまくいかないことが続く。どん底まで落ちたゆうきの心を救ったのは、やはりりょうのノートだった。
そして、ゆうきの初舞台の幕が上がるー


アフタートークで植田自身が語っていた通り、ストーリー自体は、そんなに珍しい内容ではない。
しかし、ディテール部分のリアリティが、俳優発信の作品らしく、とても面白かった。
まず、ゆうきの挫折部分が深く、途中、出口が見えなくて、これ、どうなるんや[exclamation&question]と、真剣に心配した。そこにリアリティがあった。簡単に解決なんかないんだね、演技の道には。
あと、きっかけに過ぎないと思っていたりょうのノートの内容がめちゃくちゃ深くて、「りょう、生きていたら、世紀の天才俳優になったのでは[exclamation&question]と思った。途中で消えるりょうというキャラクターは、作劇上、バトンを渡したところで終了する存在になりがち。でも、彼のノートの内容を聞くことで(ノートの内容をりょう自身が読み聞かせ、ステージ下でゆうきがノートを読みながら聞いている)ゆうきも気づきがあるし、さらに、観客が、演劇における俳優という仕事の深さを言葉で知り、なるほど、俳優ってすごいんだと思うし、それを現場経験なしに研究していたりょうという青年のすごさが全肯定できてしまう。フィクションの登場人物の死を、全身全霊で悼むことになる。その丁寧な描き方に、俳優ならではの作劇だなと思った。
(脚本家は別にいるが、細部にわたって、植田自身が何度も説明し、書き直してもらったのだという。植田の情熱もすごいし、それを汲み取って、レベルの高い脚本に仕上げた伊勢さんもすごい。
居酒屋の先輩役は、それほど出番は多くないが、河原田は演出助手も含めてのオファーだったようだ。この役も、ありがちに見えるが、ちょっとしたすれ違いから、心がねじ曲がってしまうことってあるよね…と、納得の作り。決して悪い人物ではないことが感じられて、好印象。
ゆうきは、稽古場で演出家に一挙手一投足に注意され、頭が沸騰して演技にならない。これすごいわかる~[exclamation×2]と、ものすごく思った。なんで、こんなに、ゆうきの心情が伝わるのだろう[exclamation&question]と思ったら、昔、お茶のお稽古を課外活動でやったときに、お師匠さんがめちゃくちゃ厳しくて、頭が真っ白になって、一秒ごとに叱られたあの感覚だ。伝わる、すごい伝わるよ…[ひらめき]根本さんの怖さがめっちゃリアル。
そして、田村心の劇中劇の演技が、適当にうまくなくて、そのリアルがやばいと思った。ナツキも少し先輩なだけで、初舞台の俳優なので、そんなにうまいはずはなく…熱量はあるけど、演技力はこれから…なレベルの出し方がとても良かった。


開演時間が平日にしてはちょっと早すぎなのは気になったが、奇をてらわず、丁寧な舞台作りになっていたことは、好感が持てた。俳優として、まだまだ観ていたい植田圭輔なので、二足の草鞋であれば、今後もこんな機会をもってほしいなと思う。


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