もう来年書いてもしょうがないので、ちょっと昔語りを。
1999年1月4日、仕事始めのこの日、私は仕事の後、宝塚観劇を予定していた。初宝塚という会社の後輩男子と定時にタイムレコーダーの前で待ち合わせをしていた。
当時宝塚は、東京では1000days劇場という期間限定の劇場で公演をしていたので、場所がわからないと可哀想だなとか仏心を出して、20分ほど待っていた。でも来る気配がなかったので、しょうがない…と劇場へ向かった。
当然、開演に遅れて席へ着くことになったのだが、席についてしばらくしたところで、それまでの一切のことを忘れ、芝居に没頭してしまった。
プガチョフ役は、演じるはずだった紫吹淳のセリフ回しが想像できるほど、紫吹へのアテ書きだった。それを拙いながら懸命に演じている下級生。
そう思いながら観ていたのに、気がついたら、紫吹淳のことは気にならなくなった。
下級生だっていうことも、プガチョフがおっさんの役だってことも。
“俺は賭けを打って出るんだ”の言葉に悲壮感はなく、命懸けの勝負に挑む若々しい危うさにすっかり心を奪われた。セリフ以上に、プガチョフの心意気がダイレクトに心に流れ込んできて、それで私は思い出した。
WSSで、言葉が出てこなくて、もどかしいチノの中の思いが、そのまま客席の私になだれ込んできたことを。
あー、この役者、好きだ、と直感で思った。
とはいえ、今、プガチョフを演じているこの人が好きでも、ショーになったら、わからなくなるんじゃないのかな?そう思いながらショーを迎えた。
オープニングの総踊りの中に、超小顔のスタイルのいい男役を見つけた時、よっしゃー!と思った。
あれから、13年か。
ちなみに、後輩男子は芝居とショーの間の時間に入場してきた。
男子は芝居より仕事を取るということがよくわかったので、それ以来、会社の男性と一緒に観劇する時、遅れると言われた場合は容赦なく置いて行くことにしている。