ファナティック・ショー
「Apasionado!!Ⅱ」

作・演出:藤井大介
作曲・編曲:青木朝子、手島恭子
録音音楽指揮:御崎惠
振付:羽山紀代美、御織ゆみ乃、若央りさ、ANJU、KAZUMI-BOY
装置:新宮有紀
衣装:任田幾英
照明:佐渡孝治
音響:実吉英一
小道具:石橋清利
歌唱指導:矢部玲司
演出助手:野口幸作
衣装補:河底美由紀
舞台進行:片岡麻理恵、阪谷諒子

大空祐飛がトップになる、と聞いた時、それなら、こんな作品が見たい!なんて、色々友人と話したが、ショー作品はこれといって思いつかなかった。もともとショースターではない上に、番手スターになってからも、ショーで場面を貰うことがほとんどなかったので、想像できなかった。
初めてショーの場面をもらったのが、「レ・ビジュー・ブリアン」のエメラルドの男で、これはワンシーンだけ。一つの景を丸々任されたのは、「ファンシー・ダンス」のチャンピオンの場面(研15の終わり)が初。しかも、よりによって、ダンスコンペでチャンピオンになってスターになる、という“何のイジメですか”的シーンだったため、毎週息を止めて観ていたし、次の「MAHOROBA」では、物語性のあるショーの中で2番手きりやんと対で登場するのがデフォだったので、単独で場面をもらえることはなかった。
そんな状態でいきなり2番手となったので、「Red Hot Sea」の時は、大空祐飛、ショーで使えるのか?と、実はファンのくせに心配していた。
ところが、大空は、ショーも芝居だ!という、新たな基軸を打ち出してきた。ついでにフィナーレナンバーではとびきりの笑顔ができる&ハッタリもきくらしいと知った。そんなわけで、なんとなく、ショーも大丈夫かも…という気持ちになってきたものの、結局、2番手でやったショーは、この「Red Hot Sea」だけで、トップとしてショーをやる、というのは、もちろん未知数。
果たして、どんなものになるのか、まったく想像がつかなかった。

芝居については、一度も不安を感じなかったのに、大空祐飛さん、得意と苦手の差がでかすぎますな。

というわけで、不安もいろいろあったが、なぜか、「ショースター瀬奈じゅんのショーだから」という不安は持っていなかった。
あ、私、藤井先生のアレンジ能力に絶大な信頼を持っているらしい、とその時、気づいた。
あと、ショースターとして一番大切な「ハッタリがきく」ことは、すでに証明済みだったことも大きいかもしれない。
さて、その「ハッタリ」、自信に裏打ちされていなければ、あっという間にボロが出る。
大空の場合、いったい何に対しての自信なのだろう?
普通は、歌とかダンスなんだけど、残念ながら、それは自信を持つレベルではない気がする。
お茶会なんかでは、「みんな、私のことが好きなんだよね?」という、自分の魅力への自信に満ちているが、さすがに劇場ではそうもいかないだろう。
で、この「Apasionado!!2」(正しいタイトルは、ローマ数字の「Ⅱ」を使用しているが、環境依存文字なので、本文中では、アラビア数字の「2」で表記します。)の初日、私は、ミュージカルの鉄則を思い出していた。
「歌は語れ、芝居は歌え」
なるほど、この人の自信の源は、芝居なんだ!ストンと納得した。
それも天才的な演技力ではなくて、長い年月をかけてじっくりと醸成してきた、確実な底力。それが人の心に訴えかけ、その人の記憶や想像力を喚起する。まるで、フィッツジェラルドの小説のように。
ひとつひとつの場面が芝居のように繋がっていく、そんな新感覚のショー、「Apasionado!!2」を観て、宝塚のショーの新たな可能性を見出したような気がした。
ついでに言うと、これまで、自分の好きだったスターがトップにまでなった経験が三度あるのだが、どのケースも、お披露目では、芝居はわりと堪能したものの、ショーが気に入らなくて、スターになるということは、あんな変な衣装を着るということなんだな…とまで思ったこともあった。特にKSさんのお披露目なんか、あまりのキャラ違いに意識が遠のきましたよ、ほんと。
そういう意味では、「私はこうなんです」と人に見せ、主張もできる状態(学年)でトップになった大空は、幸福だったのかもしれない。

さて、ここから感想ですが、「大江山花伝」もたいがいだったが、ショーになると、ほぼ全編ファン語りで、相当に気持ち悪いのではないか、と思う。
それでもいいわ!という方のみ、自己責任で下記「SACHIKO」よりお入り下さい。

***以下「SACHIKO」***