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宝塚花組東京特別公演「マスカレード・ホテル」観劇 [┣宝塚観劇]

ミステリアス・ロマン
「マスカレード・ホテル」
~原作 東野圭吾「マスカレード・ホテル」(集英社文庫刊)~


原作:東野圭吾
脚本・演出:谷正純
音楽監督・作曲・編曲:吉崎憲治
作曲・編曲:植田浩徳
振付:尚すみれ、御織ゆみ乃
装置:新宮有紀
衣装監修:任田幾英
衣装:加藤真美
照明:勝柴次朗
音響:切江勝
小道具:下農直幸
演出助手:熊倉飛鳥
舞台進行:荒川陽平
舞台美術製作:株式会社宝塚舞台
録音演奏:宝塚ニューサウンズ
制作:藤枝太一
制作補:恵見和弘
制作・著作:宝塚歌劇団
主催:阪急電鉄株式会社


東野圭吾の人気小説で映画化もされた「マスカレード・ホテル」を宝塚で上演[exclamation]
木村拓哉&長澤まさみ主演の映画を見たのは、もう1年前…になるのか。びっくり[あせあせ(飛び散る汗)]あ、ミニ感想はこちらです。


宝塚版の「マスカレード・ホテル」は、木村拓哉が演じた新田役を瀬戸かずや、長澤まさみが演じた山岸役を朝月希和が演じる。宝塚でも、原作のあるミステリ作品を上演したことは何度かあったが、そのまま現代日本人の役を日本人名で演じるのは珍しい。
11年前の「逆転裁判」は、成歩堂龍一じゃなくて、フェニックス・ライトだったもんね。少しずつ、宝塚も変わってるんだな…と思う。


通常のミステリ作品だとネタバレ問題があるものだが、ここまで有名な作品だと、犯人も動機もちゃんと知られた上で、あの場面をどう表現するのか…みたいな方に興味が行くので、そういうミステリの上演というのも、面白いな…と思った。
脚本・演出は、谷正純先生。
昨年、引退すると噂になっていたが、どうやら撤回なさったらしい。デビュー後の10年間は、「皆殺しの谷」と言われていたが、ここに来て、殺人犯を捕える方に行くなんて、大きな転換である。
とはいえ、この舞台化が難しそうな作品を、どう料理するのかな[exclamation&question]という期待には、あんまり応えていただけなかったような気がする。
難しさ…それは、本作品を左右するフロントをどう設置するか、また、どんなカタチのカウンターにするか、にあった。本作品では、チェックインカウンターは、舞台後方に正面に向けて設えられ、チェックインする客が、客席に背を向けるスタイルになっていた。(一番コンパクトなホテルの方式)また、客がホテルに入ってからフロントに至る動線が、よくわからない。このため、ホテルのグレードが低めに見えてしまったのが、とても残念[バッド(下向き矢印)]
この「コルテシア東京」というホテルは、五つ星ホテルではないかもしれないが、ビジネスホテルではない。
高級ホテルとビジネスホテルの違いはどの辺にあるか…というと、ロビーの雰囲気が大きく違う。高級ホテルは、広くてゆったりしているのだ。これ、映画では出せるけど、舞台では難しい。空間を空間として演出しなければならないからだ。また、この作品、ロビーも出てくるが、客室も出てくる。ついでにバックステージ(支配人室)も出てくるので、谷先生は場面転換して、これを処理していた。そのため、チェックインカウンター自体ハケる必要が生じ、それほど重厚な質感を生み出すことができなかった。
(カウンターのデザインはおしゃれだったので、かえって「ラブホか[exclamation&question]」という揶揄まで生んでしまい、気の毒な気はした。)
大劇場公演なら、盆を使って転換も出来たと思うし、別箱でも、セットを組むことで対応することも出来たと思うが、セットを組まなかったのは、フィナーレナンバーをどうしてもやりたかったから…[exclamation&question]
あと、動線が見えない芝居は、方向音痴の私には、すごく見づらい。
それ以外は良かったと思うが、そもそも映画も良かったし、同じようなつまみ方をしていたから、特に谷先生の手腕を感じる部分はなかった気がする。


<出演者感想>
瀬戸かずや(新田浩介)…警視庁捜査一家警部補。映画では木村拓哉が演じたちょっと一匹狼的な刑事を、アキラ氏がどう演じるのか、楽しみにしていた。てか、そうだよね、こういう役、文句なくカッコいい[exclamation×2]冒頭の長髪はカツラだったが、こちらもよく似合っていた。どの場面もステキで、これは惚れるやろ[exclamation&question]と思ったが、原作通り、事件を追っている間は、特にロマンスもなく…その辺がもったいない、と思った。でも、香水も付けてない山岸の香りだけで“この部屋だ[exclamation]”と気づくのは…愛、だよね[黒ハート]そういうのを納得させるイケメン力が瀬戸かずやなのだ[exclamation]
フィナーレナンバーは、白に紫が織り込まれた特上の新調燕尾で、デュエットダンスを踊る。これがあるから、あの装置だったのか…と納得させるフィナーレだった。てか、フィナーレナンバーの衣装でパレードって珍しくない[exclamation&question]


朝月希和(山岸尚美)…ホテルコルテシア東京のフロントクラーク。映画では長澤まさみが演じている。若いが、総支配人の信頼も厚く、最初は新田を敵視しているが、その努力を一番最初に認めたのも彼女。説明台詞が多く、しかも早口で言わなければならなかったりして、滑舌が辛そう…。でも、有能なホテルマンである部分は、しっかり伝わったし、恋愛抜きの作品であっても、ヒロインとして成立していたのは、さすがベテランの味。
フィナーレは、一転してしっとりと美しいダンスを見せてくれた。


汝鳥伶(藤木総支配人)…警視庁の捜査に協力する…という大バクチを受け入れてしまう懐の大きさを演じられるのは、やはり汝鳥しかいない。映画では石橋凌なので、ちょっとイメージが違うのだけど、その分、受け入れる理由も違う感じがして、役者次第で印象って変わるな…と思った。汝鳥支配人の根底にあるのは、警察への信頼なんじゃないかな。命懸けで客を守ってくれるだろう…っていう…。
フィナーレナンバーでは、もちろん踊っていなかったが、総支配人の衣装が、フィナーレの男役群舞で使われる衣装にマッチしていて、この辺は、衣装スタッフ(加藤さん)の力量を感じた。


高翔みず希(栗原健治)…宿泊客。フロントで新田の姿を見て逆上、突然、モンスタークレーマーに転じる。映画では、生瀬勝久が演じていた。生瀬は、クセのある役が大得意だが、気弱なおじさん役が多い高翔なので、大丈夫か[exclamation&question]と思っていたら、実にいやらしいモンスタークレーマーになっていた。さすが組長[exclamation]


飛龍つかさ(能勢金治郎)…品川警察署の巡査。新田とは、この捜査に入る前、別の捜査で組んでいて、一方的に慕っている。映画では、小日向文世が演じていて、定年間近のおじさん刑事だったが、若くてチャラい刑事にしたことで、宝塚らしく若手スターの活躍する場が増えた。
新田の妹を紹介してほしいと言い続けている青年で、その新田を飛び越えてちゃっかり妹を口説いていた、というラストシーンには、膝を打った。憎めないキャラクターがピッタリで、どんな役でも安心して任せられるな、と感じた。
フィナーレシーンでも群舞の中心で大活躍。三拍子揃った実力派の面目躍如だった。


音くり寿(長倉麻貴)…映画では松たか子が演じた、重要人物。冒頭、片桐という名の盲目の老女として宿泊し、山岸を試すようなことを繰り返し、あたかも信頼を寄せたように振舞うが、その実態は…という役。松たか子が演じた役をやらせる…というだけで、への信頼が分かる。
老女の役を演じる…って、舞台版の方が演じ切れる…というか、老人風の声音とか、映画だと作り過ぎ…って思われるけど、舞台では自然に感じられる。そこをうまく生かした素晴らしい演技でした。あと、歌唱シーンでもソロで活躍していた。さすがです[黒ハート]


東野圭吾なのでストーリーはしっかりしているし、フィナーレもバッチリついて、安心して観劇できる公演だった。新生花組公演、どちらも順調な船出で何よりでした。


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