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「こころ」 [┣本・映画・テレビその他エンタメ紹介]


こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 文庫


初めて、夏目漱石の「こころ」を全部読んだ。


「先生」の遺書にあたる第三部の、それも一部を、高校生の時に教科書で読んでから××年…“iBooks”で本を読んでみようと思ったものの、どんな見え方をするのか、ちょっと不安だったので、まず無料の書籍の中から、選んでみた。
そういえば、ずっと「こころ」について気になっていたんだよな、と思い、迷わず「こころ」を選んだ。


「こころ」は三部構成の物語。
大学生である「私」が、「先生」と呼ぶ人に出会い、親交を深め、大学を卒業し、実家に帰るまでが第一部。
実家に帰り、父親がだんだん病重くなる中、「先生」に就職の斡旋を頼んでみたものの、返事はない。そんなある日、「先生」から長文の手紙が届き、それが「遺書」だと気づいて、瀕死の父親を置いて上京するまでを描いたのが第二部。
第三部は、先生から届いた「遺書」の全文という構成。
すべて、「私」という一人称で書かれているが、書いているのは、第一部・第二部が大学生の「私」であり、第三部は「先生」ということになる。そして、その手紙の内容は、ほぼ「先生」の大学時代になるため、読んでいて軽く混乱する。「私」と「先生」が重なるような感じ。
そして、「先生」の人生は、先生自身が幕を引いてしまったので完結しているのだが、瀕死の父親をほったらかしにして夜汽車に乗り込んだ「私」のその後がひどく気になる読後感だった。


でも、緻密なストーリー展開で、とても面白かった。
高校生の時は、森鷗外が好きで、漱石はどうも読みづらくて苦手だったのだが、そうでもないな…と気づき、今は、「夢十夜」に取り組んでいる。


紙の本じゃなきゃ読んだ気がしないとか言っていたが、意外とiphoneでも読めるもんですね。


ずっと好きだった「お嬢さん」と結婚できたのに、自分が出し抜いたKへの贖罪から、妻への愛情を表すことなく逝った先生を思う時、先生に死を決意させた乃木将軍の自死とのシンクロを高校時代より強く感じた。その一方で、奥さんの身になって読んでいる自分も感じた。
西南戦争で旗を奪われ、申し訳のために死のうと思いながら、結局、明治天皇に殉死したということは、三十五年間、死を思いながら生きてきたわけで。しかも、乃木将軍は、奥さんも夫に殉じている。三十五年、死を思って生きた夫、しかも、子供たちも戦死して、最後は殉死に付き合うって、ちょっと想像ができない人生。
先生の奥さんも、好きな人に愛されて結婚したはずなのに、定職にも就かず、ずっと冷たくされ、心を打ち明けることは一度としてなく、子供もいなくて、そして最後は勝手に自殺されて…こちらもかなりつらい。
そう考えると、女性に迷惑をかけずに一人死を選んだKが一番マシかな。あ…下宿で自殺(ナイフで頸動脈を切った)したから、お嬢さんの母上には迷惑だったか…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]


迷惑な男達と、翻弄される女達…それが「こころ」に残った。


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