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四国でミュージカル!「よろこびのうた」 [┣ミュージカル・音楽劇]

大劇場公演観劇後、愛媛県に渡った。
四国は、香川県に二度行ったことがあるが、愛媛県は初。


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おや、なんと、松山も椿を市の花にしているみたいですね。
愛媛県の県庁所在地松山市。そこは、伊予鉄道(いよてつ)の天下なのでした。


松山2.jpg


この伊予柑カラーのバスや市電が街じゅうを走っている。


松山3.jpg


郊外に向かう電車も伊予鉄。
とりあえず、これに乗って、郊外の「見奈良(みなら)」という駅へ。


坊っちゃん1.jpg


やってまいりました。めっちゃ郊外。このレスパスシティというモールに、坊っちゃん劇場という劇場がある。


坊っちゃん2.jpg


こちらです。
地方が建てた劇場(ハード)は全国各地にあるが、この劇場は、四国にゆかりのある題材をもとに、オリジナルのミュージカルを制作し、1年間の長期公演を実施し続けている。そんな風にソフトも自分達で用意しているところは少ない。


しかも、このオリジナルミュージカル、けっこうすごい人々にスタッフを依頼しているのだ。
今回の「よろこびのうた」は、脚本・羽原大介、演出・錦織一清、音楽・岸田敏志(=旧名・智史)…というビッグネーム。
出演者も総勢13名という、本格的なものだった。
客席数だって450席あるからバウホール並。それが、GWという好条件とはいえ、そこそこ7-8割埋まっていたので、すごいと思った。


レスパスシティの向かい側にある建物は、最近、突然クローズアップされた施設「松山刑務所」。


坊っちゃん4.jpg


はい、こちらです。


そんなわけで、周辺には、ほかにあまり建物もなく、のどか~な風景が広がっていた。


坊っちゃん3.jpg


坊っちゃん劇場は、劇場スタッフの数も充実していて、みなさんすごく親切。地方劇場としてのクオリティーの高さは、こんぴら座に匹敵するかも。全然コンセプトは違うけど。あ、こちらも人力で動く盆があった。


「よろこびのうた」


脚本:羽原大介
演出:錦織一清


音楽監督・作曲:岸田敏志
振付:神在ひろみ
装置:土屋茂昭


衣裳:山田靖子
ヘアメイク:我妻淳子
照明:高山晴彦
音響:松岡修平
効果:中村俊夫
小道具:岩辺健二
脚本協力:入江おろぱ
編曲:稲田しんたろう、村井一帆(piano参加)、荒木博司(ギター参加)
歌唱指導:西野誠
相撲指導:西予市乙亥大相撲
ドイツ語指導:ルードフラ・ライネルト(愛媛大学)
琴演奏指導:歌昇鈴
演出補:大杉良
舞台監督:石井忍
企画制作:坊っちゃん劇場


さて、今回の「よろこびのうた」は、お隣、徳島県が舞台になっている。
2018年は、日本でベートーベンの第九「歓喜の歌」が歌われて100年の節目になる年なのだそうだ。
100年前、第一次世界大戦のただ中、徳島には、板東(ばんどう)俘虜収容所があり、そこに千名近いドイツ兵が収容されていたそうだ。
物語は、板東俘虜収容所のドイツ兵と、その周辺に住む日本人を中心に展開する。


板東俘虜収容所に新しい所長が赴任してくる。その松江所長(小林遼介)は、捕虜を人道的に扱うという近代的な思想の持ち主…と見せて、その実、敗者に同情的な会津藩出身の軍人だった。 ともあれ、彼の赴任以降、ドイツ兵たちは、徳島の地で、パンを作り、畑を耕し、ビールを作って自ら消費し、また、地域の人にその技術を伝授していた。また、この収容所には軍楽隊があり、土地の人に西洋の音楽を教えてもいた。 そんな町の中に旅籠があり、その一人娘の明子(帆風成海)は、初めて聞いた西洋の音楽に魂を奪われてしまう。典型的な家父長である父・豪太郎(中村元紀)に内緒で音楽を習う明子には、もうひとつ秘密があった。軍楽隊のミハエル(四宮貴久)と恋仲になっていたのだ。
そして、収容所でも所長の自由すぎる対応が軍本部の知るところとなったり、とうとう戦争が終わってドイツ兵の送還が決まったり、兵士たちがスペイン風邪にやられたり、刻々と状況が変化する。明子も旅館の一人娘として、婿を取るために見合いの話が決まる。
二人の愛の行方は?そして、明子たちは「よろこびのうた」(第九)を歌うことができるのか?
というのがあらすじ。


いや~、感動しました[exclamation]
上演時間は2時間とコンパクト(休憩あり)なのに、内容は盛りだくさんで、出演者一人一人にちゃんとドラマがあって、しっかりと世界観が伝わってくるし、そこから今日にまで続いている明治史観や、敗戦ドイツのその後についても思いを馳せることができ、とても勉強になった。
第二次世界大戦後の戦争への反省の度合いが、日本とドイツでは大きな違いがあると感じていたが、もしかすると二連敗しないと人は心底反省しないのかもしれない…なんて変なことを考えたりもした。


地方発信の文化としてのミュージカル作品がこの地に根付いていることに、驚きと賞賛の思いを感じつつ…「よろこびのうた」無事完走をお祈りしております。 
では、ざっと出演者感想です。


四宮貴久(ミハエル)…前の収容所が鹿児島県だったことから、鹿児島弁を話す変わったドイツ人。軍楽隊のメンバーで、明子に一目惚れする。最初は、彼女をドイツに連れて帰ろうと考えているが、旅館の一人娘である明子の苦悩を知り、婿入りを決意する。
一途な愛を貫くミハエルを体当たりで演じていて、本当にドイツ人に見えた。


帆風成海(明子)…旅館の一人娘であるということは重々わかっているが、ミハエルに惹かれる気持ち、そして、西洋の音楽への思いを諦めきれない逡巡が伝わる。そして、強い意志をもってミハエルとの愛を選び取る現代的なヒロインを等身大に演じていた。可愛かったです。


村上幸央(パウル・エンゲルス大尉)…職業軍人。ドイツに誇りを持つあまり、日本人には心を許していない。本当にドイツ人が演じているのかと思った。それくらい見た目からピッタリ。


小林遼介(松江豊寿所長)…会津出身の軍人。敗者を見る目が優しいのは、明治維新以降の会津藩出身者のつらい境遇ゆえ。優しさとかたくなさのバランスが見事だった。


中村元紀(豪太郎)…明子の父。典型的な頑固おやじ。しかし最後には、娘可愛さにミハエルとの相撲に負けてくれたり、やさしいところもある。いろんなところで、かっこよかったです。


脇山尚美(絵美子)…明子の母。恋を諦めた結婚によっても幸せを得ることはできる、と経験で知っているが、明子の想いの強さに負け、亭主関白の夫をうまく動かしてくれる。理想的な明治の母を素敵に演じていた。昔の日本女性は、すごかったのね。


梶雅人(マイスナー上等兵)…収容所内のドイツ人通訳。戦前は日本で仕事をしており、日本人の恋人がいる。ミハエルの恋をあれこれサポートする二枚目半の役どころが、ピッタリだった。


小野佑子(きよ)…マイスナーの恋人。マイスナーと結婚するつもりだったが、家族を救うために別の人と結婚してしまう。ワンシーンの出演だったが、印象を残した。あと、冒頭の注意事項の説明役も担当している。


ちなみに、ホタテちゃんの出演は、6月までとのことでした。


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歴史好き

坊っちゃん劇場で「よろこびのうた」の前に上演されていたのが、
「52days」ですね。(子規と漱石の同居期間が52日)
バッティングセンターのオヤジ長嶋貞治が狂言回しになるという、
石田テイスト満載の作品だったようです。
by 歴史好き (2018-05-13 22:15) 

夜野愉美

歴史好きさま
先日、教えて下さった石田先生の作品は、こちらで上演されたものだったのですね!なんと、前から宝塚歌劇団とは交流があったということだったんですねー!!!
過去作品は、ジェームス三木さんとか、錚々たるメンバーが執筆されていました。石田先生…すごいかも…
by 夜野愉美 (2018-05-15 00:08) 

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