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「カンパニー」あれこれ [┣公演内容の考察・検証]

月組公演「カンパニー」、脚本へのバッシングが止まらない。
主にネット上のつぶやきなので、黒髪の貴公子・高野悠(美弥るりか)のように悠々と構えていればいい気もするが、石田先生、無駄に叩かれているような気もして、ちょっと気になっている。


「カンパニー」は原作の小説がある。
書いたのは女性の作家・伊吹有喜だが、主人公の青柳が、奥さんに愛想尽かされた40代半ばのサラリーマンで、会社人間が多く登場するため、非常におっさんくさい雰囲気の作品である。実のところ、宝塚で上演すると決まった翌日に原作本を購入し、半分まで読んだが、そんなに面白くないな…と思って途中で投げ出してしまった。
この手の話(サラリーマンの意に沿わぬ出向と、その先での奮闘記)なら、池井戸潤の方が数倍面白い。
しかし、実際に上演されてからあらためて読むと、これがどういうわけか、数ヶ月放置されて発酵・醸造したかのように面白くなっているからビックリする。
石田先生が物語の交通整理をしてくれたことで、紆余曲折する小説のポイントがハッキリしたのかもしれない。


でも、設定は、原作小説の方が全部味があってよかった、とは思う。というか、ストーリーは同じでも、キャラ設定が変わると、そのストーリに納得性が低くなる…というか。その辺が、塩梅っていうヤツかもしれない。


[1]青柳誠二(珠城りょう)は、「バツ1の40代半ば、しがないサラリーマン」という設定(原作では誠一。バレエ団での愛称は、それゆえにイチさん)だったはずが、なぜか、妻に先立たれた若きイケメンになっていた。珠城が演じる以上、若きイケメンになってしまうのは仕方ないが、妻に先立たれた…という設定は、逆効果だったのではないか、と思った。奥さんと別れている方が、実は、美波(愛希れいか)に惹かれていく過程が自然になるのではないだろうか。
舞台での彼は、亡妻を今でもものすごく愛していて、そんな思い出は美化されるものだから、別の女性に惹かれていくのを1時間半のミュージカルで創るのは難しい。なんだか、唐突な気がした。
それとも、男性である石田先生的には、離婚の方が創りづらいのかな[exclamation&question]


[2]青柳の出向の原因は、「可もなく不可もなくの仕事ぶりと、離婚」という設定が、脇坂専務(光月るう)から由衣(海乃美月)を庇ったことになっていた。合併に当たり、総務や経理のような、両社ともに存在する部門は当然、人がダブつくのでリストラの対象になりやすい。そうすると、やる気のなさそうな人材から、無体な異動=体のいいリストラをすることになる。
これは、時間的な制約上の変更かもしれないと思うが、青柳の成長物語にするためには、ちょっと残念な変更かな、と思う。
最初から、スリを捕まえたり、異動に対する発言も前向きだったり、彼をリストラする意味がわからないだけでなく、「彼が変わる物語」ではなく「彼が周囲を変える物語」になっている。それじゃ、この作品をやる意味さえ、もうないんじゃないだろうか。


[3]鈴木舞(美園さくら)の結婚相手は、イベントで対談したことがあるチャラチャラしたカタカナ職業(インナービューティー・アプロ―チャー)の男だったが、これが、幼馴染のやさしい芸人に変更された。このことで、由衣の「お前が孕ませたんだろうが!」(原作では心の声だけど)の意味が変わってくる。
そもそも、この原作、舞の授かり婚について、それほど肯定的な設定になっていない。
それをそのまま舞台に反映すれば、由衣のあの台詞も、あそこまでいやーな空気の中で言う羽目にはならなかっただろう。もう、ホントに見ててつらいわ…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]リピーターの99%があの台詞が発せられる前から、拒否反応を示す中、絶叫する海乃を思うと涙が出る。が、原作を読んでいる私としては、その99%のうち、90%くらいが、石田先生だからああいう無神経な台詞になっていて、それがイヤ…的な拒否反応に思えて、いや、それ、原作にあるから[exclamation]と、擁護したくなってしまう。
たぶん、石田先生は、この、間内澄人を演じた千海華蘭のキャラも考えて、心優しい幼馴染の芸人にしたんだろうな、と思う。それは石田先生のやさしさなのだと思っている。
でもね、原作の間内は、「有名人の鈴木舞と付き合うオレすげぇ」的なチャラい男だから。出産後の舞が世間から忘れ去られそうになると、復帰のアプローチをするような男だから。舞と二人三脚で頑張って来た由衣にとっては、本当にこの男に舞を任せられるのか…一瞬考えてしまうような相手なのだ。だから、「結婚しますよ」と言われてキレるのだ。
その間内のキャラを変えると、由衣が酷い女になってしまう。
実際、女性の作家であっても、「お前が孕ませたんだろうが!」や、「ナマでやったの?」(「阪急電車」)というあからさまな台詞を書く。そこに至る当然の前提がある時に。原作にあるからと、そのまま使うとこのように火傷することを、石田先生には肝に銘じてほしいと思う。


[4]由衣は、全日本に入れるような実力ではなかったが、小学校の先生が唱えた「努力、情熱、仲間」を信じていた。それが幻想かもしれないと中学で気づき、推薦でバレーの名門校に入った時に確信する。努力に努力を重ね、ようやくレギュラーになった時、練習のし過ぎが原因で故障引退を余儀なくされた。それが彼女のアイデンティティの根源になっている。
全日本のセッター出身では、由衣のキャラが変わってしまう。彼女は世界を見たことになる。それは、鈴木舞や、高野と同じレベルだ。
そこに到達した人の見る世界を由衣は知らない、としなければ。世界を前にした時の心理状況もわからない。そこが重要なのだ。だから、あれだけの情熱で高野の後を追い、彼を知ろうとするのだ。
これ、けっこう大事なことなんだけどな。


[5]水上那由多(月城かなと)は、人気ユニットのバーバリアン・Jのメンバーではなく、下部組織である“スピリット”のメンバーで、この舞台を機にステップアップして、Jメンバー入りを狙っている。また、バーバリアンの事務所も那由多の下剋上を話題にしたくて、ドキュメンタリー撮影班をバレエの稽古場にまで派遣している。
これが原作のリアリティーだ。スピリットは、J事務所でいうところの「ジュニア」みたいなもので、スケジュールも分刻みでなく、ピンで動けるので、舞台出演なども簡単に組める。
忙しいアイドルがバレエの王子様を演じるというのは、無理がある。ヘリコプターを使ったとしても、バーバリアンとしての活動と両立はできない。少なくとも、本番に関しては、他のメンバーが彼一人のために、休演日も含めた4日間、オフになってしまうわけだし。
また、この「白鳥の湖」が3日間の公演なのに休演日を設けているのは、バレエの主役が連日踊れるものではないことに起因している。バレエ全幕に出演することは、それだけのダメージを身体に与えるのだ。
普通は、Wキャストで公演を組むのだが、有明が後援することから、社長令嬢・有明紗良(早乙女わかば)と、有明のCMキャラクターである高野と、イメージソングを歌うバーバリアングループの那由多というトリオを動かせない。それで、3日間の公演なのに休演日を入れて、ギリギリ三人が全公演出演するということにしたのだ。
せっかくバレエをテーマにした舞台なのに、観に来たバレエ関係者が、「ちょっとねー」って思っちゃったら、宝塚も損だし、原作者も損するんじゃないかなぁ。


[7]紗良と青柳は、原作では、あまり面識がない。あくまでも社長令嬢。青柳の妻は、そもそも有明の社員だったが、縁故採用で、その縁故というのが、紗良のおばあちゃん(社長の母)と、彼女の母親が同じフラワーアレンジメント教室に通っていた、というものだった。母が亡くなった後は、妻が通っていて、娘のように可愛がられているので、青柳の悪口をあることないこと吹き込んでおり、それが異動の一因にもなっている。紗良は、バレエ団に出向となった青柳の本当の人柄を知り、それをおばあちゃんにも伝えてくれたが、その程度の付き合いだったりする。
舞台では、青柳の亡妻と親友ということになっているので、「ともちゃん」とか呼んで、青柳がどれだけステキかということを説明する一端を担っている。でも、それ、必要だったかな…[exclamation&question]見れば、青柳さんがステキなのは、わかるんだけど。


[8]敷島版「白鳥の湖」の原型は、敷島瑞穂(京三紗)が、ヨーロッパで活動していた時に、自ら考案し出演した作品。
この作品で、瑞穂先生は、ロットバルトとオディールを踊って人気に。「エリザベート」でトート閣下が一瞬ベールを被ってマリー・ヴェッツェラになる演出みたいなもんですかね。敷島先生、原作では長身の女性だったようです。
でも、このままでは、敷島先生しかやれない「白鳥…」になってしまうので、内容を改変し、当時ケガのため引退を考えていた年下の旦那様にプレゼントした。作品は好評だったのに、旦那様はその直後、自ら命を絶ってしまう。それで瑞穂先生は、この作品を封印してしまった。
この作品におけるロットバルトは、主役以上に主役というか、作品テーマを背負った人物なのだが、やはり、故障を抱えた旦那様にプレゼントしただけのことはあり、出番は少ない。だから、体調に不安のある高野が、この作品の上演とロットバルト役を願ったわけだ。
なんだけど、宝塚版では、この作品で、先生の旦那様がロットバルトとオディールを踊ったという設定になっていて、当然、高野もそれを踊ろうとしている。
もしもーし[exclamation×2]
3幕でオディールのナンバーを踊るくらいなら、王子を踊ってもいいんじゃね[exclamation&question]


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