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シアタークリエ「音楽劇 ライムライト」観劇 [┣ミュージカル・音楽劇]

音楽劇
「ライムライト」

原作・音楽: チャールズ・チャップリン
上演台本: 大野裕之
演出: 荻田浩一

音楽・編曲: 荻野清子
美術: 伊藤雅子
照明: 勝柴次朗
衣裳: 朝月真次郎
ヘアメイク: 林 みゆき
音響: 大野美由紀
振付: 木下菜津子
演出助手: 伴・眞理子
舞台監督: 中西輝彦
企画: 仁平知世
プロデューサー: 吉田訓和

宣伝美術: 永瀬祐一
宣伝写真: 西村淳

原作は、1952年に製作された映画。
映画を見ていないので、今回、初めて「ライムライト」という物語に触れたが、60年以上前に製作されたとは思えない現代的なストーリーだな…と、まず思った。
普通、こういう映画では、おじさんは、若い二人の幸せのために身を引くじゃないですか[exclamation]
さすが、生涯現役、70代になっても子供をもうけている人は考えることが違う[exclamation×2]


かつて一世を風靡した喜劇王カルヴェロは、人気が凋落し、酒に溺れる毎日を送っていた。ある日、彼は、同じアパートの一室からガスの匂いを感じ、ドアを蹴破って中で倒れている若い女性を助けた。彼女はテリー(テレーズ・アンブローズ)といい、バレリーナだったが、足が動かなくなって舞台で倒れ、将来を悲観して自殺を図ったのだった。
医師の話では、以前患ったリューマチ熱は完治しており、彼女が歩けないとすれば、それは精神的なものが原因であるとのことだった。
話を聞くと、テリーは幼い頃母を亡くし、父親はいない。姉が母親代わりになって彼女を育ててくれた。その姉が、彼女が大好きなバレエを続けられるように…と、街角で客を取っていた事実を知ったテリーは、ショックで踊ることができなくなってしまった。文房具店で働き始めたテリーは、貧乏な音楽家の青年に淡い恋をする。彼のために、お釣りを多く渡していたテリーは店をクビになってしまうが、成功した青年のコンサートを聴きに行き、その音楽を聴いた時、突然踊りたくなり、踊ってみたら、とてもうまく踊れた。そして、エンパイア座のテストに合格して再びバレエを踊るようになった。ところが、舞台に出る直前に、一座の者から「お前の姉が何をしていたか知っている」と囁かれ、足が動かなくなって倒れてしまった、とのことだった。
カルヴェロはテリーを励まして元気づけるが、一方で、カルヴェロ自身は、完全に笑いが取れなくなっており、舞台に出ると、つまらなすぎて、客がみんな帰ってしまうのだった。
落ち込むカルヴェロを今度はテリーが励ます。一幕の終わりには、気持ちが入り過ぎて、すっくと立ち上がって―[exclamation×2]
こうして再び踊り始めたテリーは、またたく間にエンパイア座の人気者になっていた。スターになったテリーの口利きで、カルヴェロも名前を変えて舞台に立っていた。テリーは、新作バレエの公演も演出家のOKが出て主役に選ばれ、その作品にカルヴェロも道化役で出演することになる。初日、緊張のあまり踊れないと嘆くテリーを、カルヴェロは、ぎゅっと抱きしめて、送り出すのだった。
この新作バレエ、作曲家は、テリーの初恋の相手ネヴィルだった。ネヴィルもまたテリーに恋をしていたが、既にテリーの心はカルヴェロでいっぱいになっていた。イギリスが第一次世界大戦に参戦することになり、ネヴィルは徴兵されてしまうことになるが、そんな状況でもテリーの気持ちは変わらない。
しかしカルヴェロは、テリーにはネヴィルが相応しいと考え、い二人の未来のために身を隠し、ストリート芸人として日銭を稼ぐ日々へ。偶然、ネヴィルがカルヴェロを見つけ、すぐにテリーに伝える。再会した二人。そんな中、カルヴェロの復帰公演が企画される。絶対成功するように…と、客に拍手と笑いのキッカケまで仕込むテリー。舞台は大成功となるが、既に酒でボロボロになったカルヴェロの心臓は、最期の鼓動を刻み始めていた。
踊るテリーの姿を見ながら、カルヴェロは静かにその生涯を終える。

ミュージカルの起源は、大道芸にあった、と聞いたことがある。つまりボードヴィルというヤツね。
カルヴェロ人気の頂点は、ヴィクトリア女王のダイヤモンド・ジュビリーというから、1897年かな[exclamation&question]当時のロンドンでは、ボードヴィルのショーが毎晩行われていて、「スター」というのは、星は夜になると必ず出る=毎晩香盤に名前がある、というところから、人気者をスターと呼称するようになったらしい。
日本でボードヴィルというと「演芸」というイメージになると思うが、もっと幅広い分野の公演が行われていたようで、オペラのアリアとかクラシック・バレエとか、おおぜいの女性によるラインダンスとか、日本語ではないが、古い時代の用語としての「レビュー」が一番近いのかもしれない。
20世紀に入ってアメリカで一世を風靡する“ジークフェルト・フォーリーズ”などのレビューは、ボードヴィル文化を1本の作品に纏めて上演してしまおう!というあたりが新しいところで、当時のイギリスのボードヴィルは、あくまでもそれぞれの演目は独立していて、人気のある演目(出演者)だけが、毎晩お呼びがかかる「スター」になれたのだった。
日本では、英国のバレエというと、ロイヤル・バレエ団!みたいなイメージが強いが、英国は、フランス、ロシアと違い、組織だったバレエ団の発祥は遅かったようだ。ロイヤル・バレエは、バレエ・リュスの流れを組むバレリーナが1931年に創設したものがスタートなのだそうだ。
ということで、プロのバレリーナのイメージは、現代日本で考えられるものとは、少し違っていると思われる。

ということを長々書いたのは、テリーがロイヤル・バレエのプリマに選ばれて、ジゼルを踊る…的な話ではないということをまず言いたかったから。野々すみ花が素晴らしいダンサーとはいえ、現代の現役バレリーナと比較してプリマのレベル?と聞かれたら、それは違う。だからリアリティーのない舞台と思われたら、ちょっと悔しいので、ちゃんと背景を書いておきたかったのだ。
野々すみ花は、この「ライムライト」という作品のヒロインとして相応しいバレリーナなのだ、と。

と言っておきながら、こういうことを書くのはどうかと思うが、私的には、この「ライムライト」という音楽劇は、「語り過ぎ」な舞台だった。
役者ってのは、10書かれている台本の1しか表現できない人もいれば、10書かれてれば100表現できる人もいる。
100表現できる役者を集めて、シンプルな芝居を見せたら、そりゃ「語り過ぎ」になる。台詞だけでなく、肉体でも語れる役者が揃ってるんだもん、その上、オギーの超丁寧な演出だもん、どうしたって、「もうわかった、わかったから」という気持ちになってしまうのは否めない。
オギーとしては、この素敵な物語を120%理解しない限り劇場を出さねーぜ的感覚だと思うが、作品のテンポ感からいくと、もう少しラフな描き方の方が、ストレスは少ないかもしれないと思った。

それでも、野々すみ花の“時分の花”としてのテリーを観られたことは、やはり幸せだった。
不安に怯える野々。絶望に打ちひしがれる野々。無表情の野々。無邪気に笑う野々
歩けない芝居をする野々の姿は、足を縛って生活した北嶋マヤのようではないか!
興奮して、すっくと立ち上がる野々。それは、「クララが立った!」な感動だった!
野々が五番のポジションを取る。交差するひざ下のラインの美しさ。レッスン着姿がまたなんともいえずに魅力的。
バレエを踊る野々。躍動する野々。ススでポアントになった時に、見事に上半身が引き上がる野々。リフトされる時には、完全に体重がなくなる野々
ロマンチックチュチュにハイヒール姿で登場する野々
どれもこれも、有難すぎる野々の姿…[ぴかぴか(新しい)]
[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]
カルヴェロへの思いを引きずりながら、ステージに立つテリー。
カルヴェロが死ぬ最後の瞬間、目に焼き付けたいと願うのも当然に思える、どの一瞬も絵になる渾身の動き。ほとんど後ろ姿なのに、カルヴェロへの愛だけを胸に踊り続けるテリーの腕の動きのひとつひとつを持って帰りたいほどの思いが湧き上がった。
(すいません、アヤシイ人になってしまった…)

気持ちを落ち着けて、その他のキャストについて。
まず、主演の石丸幹二久々に石丸熱がヒートアップしちゃいました!
主題歌のみならず、最後の大道芸のアンコールで歌った「マイ・ソング」、そして大道芸の歌、どれもこれもがカルヴェロの温かい人柄を表わすような美声。メロメロです~[揺れるハート]
カルヴェロ日めくりカレンダーが作れそうな名言の数々が、どれもずっしりと心に響き、酔いしれた。
とりあえず、ジキハイいかねばっ!

ネヴィル役の良知真次は、とてもカッコいい青年。心が綺麗で、テリーへの愛だけではなく、カルヴェロとも真摯に向き合っている姿に心洗われた。

保坂知寿、植本潤、吉野圭吾が贅沢な使われ方をしていて、もったいない、ありがたい…とひれ伏したかった。

そして、佐藤洋介舞城のどかの踊りが素晴らしすぎて…こちらも、もったいない、ありがたい…と拝みつつの観劇となった。


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Qちゃん

こんにちは。私も7/13の公演に行きました。夜野さんの分析すばらしいです。納得でした。
個人的には保坂知寿さんのファンなので、歌声を期待したのですが、冒頭少し歌っただけでしたね。それでも、久しぶりに歌声が聴けて満足です。
野々さんステキでしたね。テリーの一途な思いが伝わり思わず涙していました。
これからもブログ楽しみにしています。
by Qちゃん (2015-07-18 22:19) 

夜野愉美

Qちゃんさま
コメントありがとうございました。
保坂さん、ステキでした。大家さんだから、面倒なことはゴメン!って切り捨てない優しさと、おせっかいやきな姿に、イギリスのお芝居ってこういう人いるよねーと。そして、小間使い専門の元女優という過去もすごく想像できる役作りでした。

ブログ拝見させていただきました。観劇されたということは、体調はもうよろしいのでしょうか?早く本調子になられますように…
by 夜野愉美 (2015-07-18 23:57) 

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