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「シャングリラ」初日感想詳細 [┣宝塚観劇]

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写真は、ソラ氏。(「奥のほそ道」で芭蕉に同道した、門人の曾良)

今回、初日が火曜日なので、観たいけど観れない方も多かったと思います。
ネタバレしても何でも、内容が知りたい方は、下記、「結末までほぼネタバレ」よりお入りください。
ただし…私も1回しか観ていないので、途中、勘違い等ありましたら、どうぞご容赦ください。ついでにご指摘いただけたら幸いです。

***以下「結末までほぼネタバレ」***

「シャングリラ―水之城―」
核戦争が起こった後、近未来の日本が舞台。
近畿地方の砂漠に一機の軽飛行機が墜落した。乗組員は行方不明―
砂漠に倒れている一人の青年(大空祐飛)を、一人の娘(野々すみ花)が助け起こした。その背後に、過去のとある情景が展開する。
病気の母親に水を持ち帰ろうとする兄弟。しかし、それは許されないことだった。核戦争以来、飲み水は貴重品、余所者が勝手に持ち出すことは許されない。
(なぜか水はペットボトル)
兄(彩花まり)は観念して水を返そうとするが、弟(真みや涼子)が逃げようとして目を斬られる。傷ついた兄弟に水を渡そうと、一人の少女(夢涼りあん)が進み出るが、兄は首を振って去っていく。
それは、青年の記憶か、それとも娘の?

プロローグのダンスは、タップのような音から始まる。
まさか大空にタップを踏ませるような冒険はしないのだが、景気づけに足を踏みならす時点で、なんか違う感が漂う…。ダンスてセンスなのよね、ほんと。こういう早くてカウントのハッキリしたダンスは、いろいろと難しい…。とりあえずソロが終わると、色々なグルーピングで、宙組生のダンスシーンが展開される。
大空が抜けると、高度なテクニックのダンスになるってのは、もう宙組のデフォなのか?
次から次へとダンサーが登場して、いたたまれない中、なんとなく、そこに鳳翔大がいてくれるだけでホッとする。大ちゃんファンの皆さん、すみません。
野々がダンサーなのはわかっていたが、キビキビしたダンスも素敵。こうした野々のダンス力を発揮できる場面があるのはすごくいいことだと思う。これからも相手役さんにとらわれず、ガンガン気持ちいいダンスを見せてほしい。
出てくるメンバーの衣装は、種々雑多。そんな中で、蘭寿がふつーにスーツなのは、かなり違和感。前回公演「カサブランカ」でもスーツを着こなしていた蘭寿だが、ラズロとは違った色がハッキリと出ているところがさすがだと思う。

娘は旅芸人一座「蛇の目座」の一人、美雨(ミウ)。元は水源の村の神官の娘だったが、父を殺され、水源を奪われたので、村人と一座を組んで放浪している。
一座の座長夫婦の風(フォン=十輝いりす)と雲(ユン=鈴奈沙也)。ほかに座員は、涙(ルイ=七海ひろき)、蒼(ソウ=蒼羽りく)、紅(コウ=愛月ひかる)。記憶をなくし、名前もわからないという青年に娘が名をつける。“ソラ”と。空色の瞳だし、記憶がなくて空っぽだから…と。
ソラには、とりあえず嵐(ラン)の残していった服が与えられた。
嵐とは、座長夫婦の息子で、水源を開放するために、反乱軍に入り、シャングリラに向かったきり行方不明になったという。
親切にしてもらった礼に、ソラは身に付けていた首飾りを渡そうとする。
それを見て、美雨が凍りついた。それは、美雨の父の形見で、嵐の無事を祈って手渡したものだった。
よく見ると、「シャングリラにて待つ 嵐」と刻まれている。
美雨はそれを見て、シャングリラに行く、と言い出した。すると我も我も、という感じで、全員がシャングリラを目指すことになる。
その夜、ソラは美雨の一人歌うのを聞き、彼女の心を聞き出す。
美雨は嵐が好きだった。妹のように愛されていると知りつつ、好きだと言わずに旅立たせたことを後悔していた。だから、後悔しないために後を追うのだと。
美雨が去った後も砂漠にとどまっていたソラは、兵士(風羽玲亜)に呼び止められ、詰問されて彼を殺してしまう。
翌朝、一同は、風の持ってきた前世紀の遺物、ジープに乗って東を目指した。昔の首都、トウキョウにシャングリラのヒントがあるという。
ジープで、新幹線の線路跡を辿りつつトウキョウを目指す場面が、ちょっとコミカルなマイムで構成されているのだが、そのセリフのない場面で、超下級生の蒼羽、愛月らと談笑して違和感のない(同世代っぽい)大空ってすごいと思う。
ここから、小説家志望の涙が旅の記録を書きとめるという設定で、涙による場面説明が時々入る。特にそれがなければ…とも思わなかったが、入った方が親切ではあった。

シャングリラでは、氷(アイス=悠未ひろ)と海(カイ=北翔海莉)が、戻ってきた雹(ヒョウ=蓮水ゆうや)と霙(ミゾレ=藤咲えり)から空についての情報を聞いている。あれ?ソラと名付けられた青年は、本当に空という名前?

トウキョウは、先の戦争の時、中国に割譲されたので、今は中華街になっている。
そこで、うまいこと客引きに引っ張られ、店に連れて行かれる一同。ここはポンファ通りか…
店主の欣欣(ヤンヤン=天羽珠紀)が、美雨が身に付けているあの首飾りを見て、興味を示す。店の中には、反乱軍メンバーの文雀(ブンジャク=鳳翔大)と飛燕(ヒエン=愛花ちさき)がいて、彼らにコンタクトを取ろうとしている。ここはリックのカフェか?
そして、そこへ突然入ってきて、銃撃戦を始める雹と霙。記憶がないままに応戦するソラ。雹がソラを見て驚く。ソラは、その男が自分を知っているらしいと直感する。
ここで、欣欣、文雀・飛燕、そして蛇の目座の一行が身分を明かし、互いの情報を開示する。
水源は枯渇していない、という情報を公開しようとして、嵐たちの反乱軍は、アジトを襲われ壊滅したらしい。が、そこには嵐の死体はなかった。嵐一人が連行された可能性が高い。文雀と飛燕は、この情報を地下出版しようと、地下新聞の発行元、欣欣に会いに来ていて難を逃れた。
が、情報を公開しようにも、嵐がいないと、PCのパスワードがわからない。
ここで、ソラが“miu”と入力すると、PCは作動した。

ここまでの状況で、行方不明の嵐もまた、美雨が好きなんだろうな、と思った。

どんなに拷問されても口を割らないラズロじゃなくて、嵐(蘭寿とむ)は、牢獄に入れられる。そこには、浄水機オンディーヌの製作をするためにシャングリラに呼ばれ、完成後に囚われた霧(フォグ=純矢ちとせ)がいた。霧こそ、水源の存在を蘭たち地下組織に向けて発信していた女性だった。
この二人を同じ房に入れちゃいけないとか、雹や霙は考えなかったんだろうか?
この辺で、しょっぱなに出てきた兄弟と、小さな男の子(実羚淳)と女の子(結乃かなり)を連れた青年(風馬翔)の出会いが描かれ、なんとなく、それが氷、空、海、雹、霙なんだろうなぁという想像ができてくる。

ところどころに挿入されるシャングリラの状況から、王と呼ばれている海は傀儡で、実権は氷が握っているらしいことが分かってくる。
そして、海は兄の空を慕っているが、氷は造反した空を事故に見せかけて殺そうとしたのではないか?という疑惑が生まれてくる。
少しずつ、蘇ってくる記憶を恐れながら、戦いに巻き込まれていく空。そして、自分の過去は思い出せないのに、身体は戦闘体験を覚えていて、勝手に動いていく。空を見て、一瞬躊躇した雹を撃った時、空は彼の名を呼んでいた。
一幕の終わりは、空、美雨、氷、海と子供時代の彼らが錯綜して終わる。
ありがちだが、構図は綺麗だった。

だいたいの謎は一幕で明かされ、二幕は、シャングリラに到達した空と氷、海との対決や、その他の収束が描かれていく。一幕で死んだ雹もダンスシーンなどで復活してくれるのが嬉しい。空と雹のダンス場面はすごくいい。
なんとなく「シルバー・ローズ・クロニクル」で、凰稀かなめを2番手として遇しつつ、同期の緒月遠麻にも同じ位の場面を与えていて、小柳先生の侠気を感じたのを思い出した。

嵐と再会した美雨は、彼に愛を打ち明けないし、嵐もまた美雨より、出会ったばかりの霧の方が気にかかるらしい。この辺の愛情の移り変わりについては、特になんの言及もないのだが、いつの間にか、嵐より空の方が気になる…的ソロのひとつでも入れた方が盛り上がったのでは?という気がする。
もともと“ソラ”の名は、空色の目であることとともに、昔出会ったその瞳の少年を忘れられなかったから…なのだし、嵐ではなく空を思うようになったのは、自然な流れではあったが。

水門を強引に開放すると、それをやる人間も水流に飲み込まれてしまうのだが、かつて、水源の村を襲い、美雨の父親を死に追いやったことを思い出した空はその役を買って出る。
が、最後の対決の後、海を撃ってしまった氷は、自分が犠牲になることで、水門を開放する道を選ぶ。
死ぬこともできず、弟の海も死なせた空は、一人ぼんやりとどこかへ立ち去ってしまう。
美雨は、嵐に空を止めるように頼むが、空の気持ちが分かる嵐は、彼を行かせる。
嵐、氷、海が自分達の手は汚れている…と自覚する歌があるのだが、その時点で、空はまだすべてを思い出していないので、そこでは歌わない。自覚した嵐、氷、海は図らずも、それぞれ違った方法で、罪を購うこととなる。
嵐は、霧と共に浄水機を普及させ、新しい世の中を作ることで、自分の罪を清算していく。
最後に自分の罪を知った空は―

それ位は舞台を観て楽しんでいただきましょうか。

フィナーレは用意されていないが、カーテンコールの時にダンスシーンが織り込まれていて、けっこう満足させてくれる。小柳先生自らが選んだ音楽も、斬新で面白い。
あ、本文中に書いていないが、芳芳(花露すみか)の歌声が、なかなか聴かせた。


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