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宝塚歌劇月組東京特別公演「HAMLET!!」観劇 [┣宝塚観劇]

ロック・オペラ
「HAMLET!!」
(河合祥一翻訳「新訳ハムレット」(角川文庫刊)を参照)

原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本・演出:藤井大介
作曲・編曲:青木朝子、手島恭子
振付:御織ゆみ乃、若央りさ
殺陣:栗原直樹
装置:新宮有紀
衣装:河底美由紀
照明:佐渡孝治
音響:登孝久
小道具:増田恭兵
歌唱指導:矢部玲司
演出補:齋藤吉正
舞台進行:片岡麻理恵、香取克英

宝塚とハムレット、やっていそうで、実は、40年ぶりとのこと。
その前回上演の年(1969年)に生まれた藤井大介先生が、ハムレットを生バンドを入れたロック・オペラとして蘇らせた。
藤井先生が参考にした翻訳は、こちら。

新訳 ハムレット (角川文庫)

新訳 ハムレット (角川文庫)

  • 作者: ウィリアム シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 文庫


実は、私も、数年前にこの「新訳 ハムレット」を読んでいたので、主題歌「TO BE OR NOT TO BE」の歌詞はすごーく、入りやすかった。

冒頭、亡霊たちがハムレットの物語を甦らせる展開は、「エリザベート」に似ている。
ハードなコスチュームが、まんま藤井先生の趣味だなぁ~と思いつつ、その中で、白いドレスに身を包む蘭乃はなちゃんの可愛さに、まずノックアウトされた。(狙い通り?)
可愛いドレス姿なのだが、足元はブーツだし、ロング手袋の代わりにハードな皮のアームカバーをつけてるのが、ホント藤井テイスト満開で大好きだ。こういう衣装でも、十分に甘い、砂糖菓子のような女の子がヒロイン…10年前の藤井先生演出のシェイクスピア作品、「から騒ぎ」を思い出しながら、楽しく観劇した。

さて、シェイクスピア作品の中でもダントツで上演頻度の高い作品、「ハムレット」。世界中で、「ハムレット」が上演されない日はないとさえ言われている。
私も、さまざまな「ハムレット」を観ているが、実は、ハムレットという人がよくわかっていない。
いや、内面がとても複雑な人だってのは、わかるが、まず、設定として。

シェイクスピア全37作品のうち、登場人物の年齢がはっきりとわかっているのは、3人だと言われている。(劇中に年齢が出てくる)
ジュリエットの13歳、リア王の80歳、そして、ハムレットの30歳だ。
登場人物の年齢を書くことが稀なシェイクスピアが、敢えて書いたこの三人の年齢。
ジュリエットは、ほんの少女だ、ということを強調したかったのだろうし、リア王は、気の毒なほどの老人なのだということを知らせたかったのだろう。でも、ハムレットは?

ハムレットが30歳だ、と聞いて、意外に思う人は多いと思う。
なんとなく、未成年な印象をみんなが持っているのではないだろうか?
それは、なんといっても、前王が亡くなった時、30歳の王子がいるなら、当然王子が即位している、と思うからだろう。
そう、ハムレットは、当然の王位継承者でありながら、そして国民に絶大な人気がありながら、即位できなかった王子なのだ。その辺の考察については、こちらの記事に詳しいので、よかったらご覧になってください。(私ったら、ここで大空祐飛のハムレットが観たいとか書いている。ま、3年近く前の記事なのでお許し下さい。)
ハムレットがなぜ父王の死後、王位に就けなかったのか、それは、ここでも言及している通り、この芝居の背景にあるノルウェーとの戦争・外交を乗り切る政治手腕が必要だったことと関係が強いのかな?と今も考えている。
今回の舞台では、ノルウェーとの関係やフォーティンブラスがまったくカットされている。と同時に、ハムレットが30歳であることを語るセリフもカットされていた。潔い!!!

若いハムレット、王になるには、未熟と判断されるほどに若いハムレット、それが藤井大介のハムレット像ということだ。

ちなみに、王が亡くなった時、王の息子と王の弟が王位を争い、王の弟が即位した、というと、「あかねさす紫の花」、その後の展開が浮かぶ。あれも兄弟で一人の女を奪い合ったし…。病死したと伝えられる天智天皇、46歳の若さで急死したこともあり、昔から変死説もある。あれが、弟に暗殺されたのだとしたら、そしてその原因に額田王のことがあったとしたら、まさにハムレット=大友皇子になるかもしれない。
あの時、大友皇子を演じた明日海りおがハムレットをやったら、どんな演出になったかな?と、ちょっと興味を持った。そして、まさみりって、全然違う個性だな、と改めて感じた。

閑話休題、今回の「ハムレット!!」は、登場人物の衣装や髪形などが藤井先生の好きそうなハードロック系に統一されていることもあり、ビジュアル面で楽しいハムレットだった。
あと、原作では男性のローゼンクランツを女性にしたり、最初に亡霊を目撃し、ホレーシオと一緒にハムレットに奏上するバーナードとマーセラスをホレーシオの妹にしたり、と娘役用の役を水増ししていたのは、うまいな、と思った。
また、旅芸人の一座を呼ぶ宴を中東風仮装舞踏会にすることで、ロックな衣装が着たきりにならない配慮もされている。狂ったオフィーリアが着る衣装も、アシンメトリーなデザインや、これまでと白とパステルグリーンの色彩を反対に採ったことによる効果を狙っていて、しかも蘭乃によく似合っていた。
シェイクスピアの芝居は、上演される数だけ解釈があっていい、というか、それだけ奥が深くて面白いので、これはこれで面白いものを観た、と満足の舞台だった。
あと、バウなのにバンド生演奏というのは、収支的に挑戦だったと思うが、英断だったと思う。やっぱりロックはライブ感が重要だもんね。
役者の感想は、後日、改めて。

それにしても、可愛い可愛い蘭乃はなまで持って行って、どこまで花組娘役は可愛くなるんだろう?


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