シアター・クリエ「RENT」観劇

「RENT」

脚本・作詞・音楽：ジョナサン・ラーソン
演出：エリカ・シュミット
訳詞：吉元由美
音楽指揮：池上知嘉子
振付：辻本知彦
ミュージカルステージング：岡千絵
ヴォーカルディレクター：安崎求
美術：ディビッド・コリンズ
衣裳：ミシェル・R・フィリップス
照明：高見和義
音響：本間俊哉
ヘアー＆ウィッグデザイン：Sakie　先恵
メイクアップ：LYAR
コンダクター／キーボード：佐藤真吾
音楽制作：東宝ミュージック　森岡孝夫
演出助手：福原麻衣
プロダクションステージマネージャー：白石英輔
舞台監督：八重樫慎一
アドヴァイザー：アンソニー・ラップ
プロデューサー：小嶋麻倫子
スーパーヴァイザー：田口豪孝

「RENT」と私について、まず書いておきたい。
「RENT」との出合いは、1998年。日本初演の東京凱旋公演が最初の観劇。翌99年にも観劇している。そして、2002年のガラコンサートも観劇している。が、各1回しか観ていないとも言う。
映画版の「RENT」も初日の翌日に鑑賞。熱心に見えて、その1回しか観ていない。
ブロードウェイ来日公演にも行ったが、たしか仕事が終わらず遅刻だったような…。その次の来日公演は、誘ってくれた友人が病気で行けなかったし…中途半端かつ不運すぎる。

何が言いたいか、というと、私は「RENT」というミュージカルがけっこう好きなんだと思うが、いわゆるレントヘッドではないということだ。「RENT」への知識は、たぶんとても浅いと思う。
今回、シアター・クリエ版感想を書くにあたって、レントヘッズの方々の感想ブログをたくさん読ませていただき、これはやばい！と思った。過去の「RENT」の記憶も相当曖昧で、かなりてきとーな第一印象をブログに書いてしまったことを、心底後悔した。

今回は、じっくり腰を据えて観劇した結果を、じっくりと書こうと思っている。
ここまで4公演を観劇、一応全キャストを観たわけだし。

ACT1
12月24日クリスマスイブ。ここNYのイーストヴィレッジでは、マーク（森山未來）とルームメイトのロジャー（K／RYOHEI）が悲惨なクリスマスイブを迎えていた。かつてのルームメイト、今はビルのオーナーであるベニー（白川侑ニ朗）から家賃の支払いを求められている。が、払う金なんで彼らにはなかった。
映像作家であるマークは、自分達の日々をフィルムに記録することを思いつく。
廃屋のようなビルの屋根裏、ヒューズが飛んで電気は使えず、ドラム缶で紙を燃やして暖を取る。
友人のコリンズ（米倉利紀）は彼らを訪ねる予定が、強盗に遭ってコートを奪われ、怪我をしてしまう。

その昔、観た「RENT」、なにやら巨大天体望遠鏡のような装置が舞台中央に置かれ、宇宙空間というか未来空間というか…そんなイメージを持っていたのだが、今回の舞台では、普通の屋根裏部屋的空間が舞台。
派手にドラム缶の中で紙を燃やしていた。あれでも消防法はクリアしてるのか！
YOKO（ケロさん）は、最初下手袖から登場する。
長いソバージュヘア、ランニングの下に長袖Tシャツ。手も足も長くてかっこよく、初日は登場しただけで、胸がきゅんと締めつけられた。

最初の大きなナンバーは「RENT」。
ベニーは下宿人からオーナーの娘と結婚して新しいオーナーになった当初は、長年の友人だった二人からは家賃を取らないと言っていた。が、今は気が変わった。彼らのような、若いアーティストのためのスタジオを建設しようとしている。そのために、マークとロジャーには家賃か立ち退きかを迫っている。
突然、去年からの家賃（RENT）を支払えと言われて、怒るマークとロジャーのナンバー。
YOKOは、ここでセットの後ろのドアから登場し、髪を振り乱して踊り、セットの蝋燭にライターで点灯しながら俊敏に動いたりしている。

酷い目に遭ったコリンズは、そこでエンジェル（辛源／田中ロウマ）と出会う。
出会った時に、互いにHIVポジティブであることを明かした二人は、そのままいい雰囲気に。

一方、ロジャーは、HIVポジティブである自分の前途に暗澹たる思いを抱いている。もし、一曲だけでも、自分の生きた証となる曲を作ることができたら…悲痛な面持ちで、彼は「One　Song　Glory」を歌う。
そこへ、ミミ（DEM／Jennifer Perri）が現れる。キャンドルの火が消えてしまったと言って。

ミミは同じアパートの下の階に住んでいるらしい。
ロジャーはマッチで火を点けてやる。が、ミミは、自分で吹き消したりして、なかなか出て行かない。そのうち、ミミは、ドラッグの包みを落としてしまい、探し始める。
ミミはロジャーの死んだ恋人、エイプリルに似ている。が、それだけでなく、どうも前に見たことがある、と粘るロジャーに、ミミは、SMクラブのダンサーだと明かす。「手錠をしてないからわからなかった」二人の心が通い合う。自己紹介する二人。

さて、「RENT」には、繰り返し様々なボイスメール（留守番電話）が登場する。
登場人物たちの家族や友人からの留守電は、彼らが孤立した人間でなく、バックボーンを持った、我々と同じ人間だということを思い出させる。
ここで、安崎求とYOKOがジョアンヌ（SHIHO）の両親に扮する。
下手側スケルトンのセット上で、ジョアンヌへの思いを勝手に語る母親。ジョアンヌはハーバード卒の弁護士でレズビアン。両親は土地の名士という感じ。娘の人生を認めつつも、世間体も大切らしく、恋人のモーリーンは連れてこないでとか、ブラジャーを忘れずに（←ここでYOKOは自分の胸を持ち上げている）、とか言っている。

マークとロジャーのところに、コリンズが差し入れを持って現れる。
一緒にやってきたのは、エンジェル。ここで、エンジェルがドラァグ・クイーン（女装するゲイ）であることが明かされる。
エンジェルは、ストリートドラマーをしていて、ふと車を留めたお金持ちの女性から、毎日うるさく吠える近所の犬を黙らせてほしいと頼まれる。エンジェルがドラムをたたき続けると、うるささに耐えかねた犬（秋田犬のエビータ）は、マンションからダイブして死んでしまった。そのお礼として貰ったお金があるらしい。そのお金を、「Today　for　You　Tomorrow　for　Me」と言って、エンジェルは、コリンズだけでなく、その友人のマークやロジャーにも気前よく振舞う。（Today　4U）
このナンバーは、ストリート・ドラマーであるエンジェルの見せ場なのだが、日本版のエンジェル役の二人は、厚底靴を履いてのダンスとドラムパフォーマンスが、かなりいっぱいいっぱいだった気がする。
映画の「Today　4U」はすごかったので、ちょっと残念。でも、日に日によくなっていったと思う。

ベニーは、このアパートの隣の空き地からホームレスを追い出して、そこに、アーティストのためのスタジオ、「サイバーランド」を建設するつもりでいる。マークの元恋人モーリーンが、抗議パフォーマンスを計画しているというので、それを阻止してくれたら家賃をタダにしようという条件を持って現れるが、誰も同意しない。

そのモーリーンの抗議パフォーマンス会場では、マイクトラブルが起こっていた。
マークが手伝いに行くと、モーリーンはいなくて、ジョアンヌがマイクを前に四苦八苦していた。
ぎこちない二人。やがて、モーリーンのことを歌いながら、二人はタンゴを踊り出す。（Tango：Maureen）
セットの後ろのドアから、真っ赤なドレスを着たモーリーン（Mizrock／望月英莉加）が登場し、アンサンブルの男女と次々と組んで踊る。YOKOは、男役っぽい振りでモーリーンをリードしていた。

コリンズとエンジェルはライフサポートの集会に参加する。
ここの仕切りは、ポールという男性がデフォルトなのだが、YOKOがポーラ名で演じていた。
落ち着いた、しっとりした印象。
自己紹介しているところに、マークが走って登場。静かなライフサポートを切り裂くように、ここで、ミミのステージが繰り広げられる。（Out　Tonight）
日本初演のステージでは、ライフサポートは、下手側に設置されたセット上で展開されていて、ミミに邪魔された感じはなかったのだが、今回、完全に割って入られてる
ライフサポートの目の前で踊り狂うミミは、そのまま、マークたちの屋根裏部屋に窓から入り込んで、一人、しょんぼりしているロジャーにキスをする。
ミミは肉感的な女性なんだろうと思うが、今回のキャスト、特にJenifferの方は、ダイナマイトバディという感じだ。「Out　Tonight」は、かなり暑苦しいナンバーになっている。
ライフサポートに参加しているエンジェルは、微妙なメイクと服装で、美しい設定ではないのだろうか？と真剣に悩んだ。エンジェルは、ドラァグ・クイーンなのだから、外にいる間は、完璧に女装しているのかと思ったのだが。
やっぱり、エンジェルは綺麗な方がいいと思う。

ロジャーとミミは互いに惹かれあっている。
が、ロジャーは、HIVポジティブである自分が、誰かを愛することに対して激しい躊躇がある。
徹底的に拒否するロジャーとめげないミミが争うように歌う。

ライフサポートでは、エイズが発症して人としての尊厳をなくす日が来たら…と、不安におののく人々。（Ｗｉｌｌ　Ｉ…）
この歌が、輪唱のようになっていて、繊細に響く。ロジャーとミミが歌う激しいサウンドとの対比がすごい。

（つづく）