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「愛と死のアラビア」原作に挑戦 その3 [┣宝塚作品関連本等の紹介]

「その3」になりました。ようやく、ヒロイン登場となります。

第22章 アノウドとの出会い
略奪の夜、我慢できずに街に出たトマスは、ひとりの女を助けた。父を殺され、家を焼かれ、自らも辱めを受けようとしていたところを助け、総督府に連れ帰った。
女は、左手の指を3本傷つけられ、うち1本をほとんど失いかけていた。
トマスは、少年兵のヤシムに命じて、手当の準備をさせた。そして、既に用をなさなくなった指を切断してやり、傷口を洗い、アラック酒で消毒した。
手当てが終わると、トマスは再び街へ出た。そして、女と出会った場所に行き、彼女の父親の死を確かめた。
翌朝、女は軍医の手当てを受け、ヤシムが彼女のための手伝い女を見つけてきた。トマスの指示通り、ガマのような老女だった。
手当てを受け、気を取り直した女と、正式に挨拶を交わし、事情を聞くと、女には既に身内はひとりもいないようだった。
「ならば、必要な時は私を兄と思って下さい」
と言うトマスに、女は、アノウドという自分の名を告げるのだった。

第23章 トマスの結婚
トゥスンが同じ日、メディナに乗り込んできた。
彼は、略奪の夜について、司令官のアーメドの責任を追及し、彼を解任する。
再会したトゥスンに、トマスはアノウドのことを話した。彼女が身内を持たないことをトゥスンは懸念する。嫌になった時に帰す里がないからだ。
また、トマスは、アノウドにも正式に結婚を申し込んだが、彼女も同じことを懸念した。が、トマスの出身には、嫌になった妻を離縁する風習がないことを知ると、もし必要な時は、二人目の妻を娶ってほしい、私はその方を妹として遇します、と伝え、父の喪が明けたらトマスの妻になると誓うのだった。

第24章 婚礼の夜
婚礼が終わり、夜が訪れた。
トマスは、男たちにはやされながら、“女の館”に入った。
イスラム社会では、新婚初夜においては、女は男にどれだけ抵抗してもよく、その抵抗に打ち勝つのが男の勤め、ということになっていた。事実、トゥスンも新婚の翌朝には、頬に爪痕があった。
一方、西洋の慣習からいけば、このような場合、まず、キスをして相手の緊張をほぐすものだろう。ところが、イスラムの世界では、女の身に付けているもので、唯一男が勝手に外してならないものが、顔を覆うヤシュマクなのだという。
静かに手を取り、傷痕が治っていることを確認し、帯を解こうとしたが、アノウドは抵抗を見せず、ヤシュマクも自分で外してくれた。
初めて見るアノウドの顔は決して美人ではなかったが、大きく表情豊かな口元をしていて、トマスは彼女の顔を気に入った。痩せすぎではあったが、肌の色は、恐ろしいほどに白かった。
初夜に当たり、新妻は、腋と下腹部の毛を毟り取られてしまうらしい。その痕が赤みを帯びていて、トマスは気の毒に思った。また、翌朝になれば、女達が、彼女がトマスのものになったという証を確認に来るらしい。もし、その<印>がなければ、アノウドは“お気に召さなかった女”か、“尻軽で槍が貫くべき壁がなかった女”と陰口を叩かれるらしい。
トマスの方も、イスラムの掟を守らなければならない。ことの後は、必ず沐浴して身体を清めなければならないのだ。冷たい水に身を浸しながら、トマスは、万物と強い一体感を感じていた。
2日後、トマスは、メッカへ向かった。トゥスンは、アノウドと結婚したトマスに嫉妬していた。そんなトゥスンに、トマスは、結婚したからといってトゥスンへの思いがなくなるわけではない、と明言するのだった。

第25章 メッカにて
ヨーロッパでは、ナポレオンがモスクワ侵攻に失敗していた。
ジッダ港には、ムハンマド・アリが来訪していた。
トゥスンから連絡をもらい、トマスは、一緒に鷹狩りをした。が、トゥスンは、心ここにあらずといった感じで、結果は散々だった。
理由を聞くと、父・ムハンマド・アリからひどい指示を受けたという。
ムハンマド・アリとメッカのガーリド大総督は、互いに相手の利を損なうことをしないと、コーランにかけて誓っていたが、実のところ、ムハンマド・アリはガリードを除きたがっていた。そこで、トゥスンにそのための謀略を命じたのだ。
丸腰でトゥスンのもとに訪れたガリードは、武装した兵士に包囲され、すべての権限をムハンマド・アリに移譲することに同意した。その卑怯な行為に加担したことを、トゥスンは悔やんでいた。

第26章 魔女ガリア
ガーリドの解任により、ムハンマド・アリは信用を失っただけでなく、人材も多く失い、同盟していたベドウィンはワッハーブ派に流れて行った。
1ヶ月後、ムハンマド・アリの命令により、トマスは、要塞の町、トゥラバを攻めることになった。
ところが、トゥラバは、未亡人で魔女が支配しているという噂があり、兵士たちの士気は落ちていた。また、ガーリドへの仕打ちに怒った部落民たちが、道々襲撃してくるという災難もあった。
トゥラバ最初の戦闘は手ひどい損害を被った。
兵士たちは、トゥラバ攻略を諦めきっていた。
トゥスン、トマスら将校が集まって会議を開き、トゥラバからの退却を決めた。
負傷兵のうち、ラクダの背に乗せて運ぶことすらできない者は、友人・親族の手によって、とどめをさされる。トマスは、前日見舞ったムーサのことが気になり、テントに行った。彼はまだ生きていた。トマスは友人として、彼にとどめをさした。

第27章 峠の攻防
翌朝、退却の前に敵の攻撃が始まった。彼らは口々に、解任された大総督の名を呼んでいた。
ベドウィン騎兵隊は、トマスの命令のもと、歩兵を庇うように敵陣との間に割って入った。
このため、退却は容易になったようだったが、斥候が敵兵はトマスたちが残してきた大砲をこちらに向けているとの情報を持ってきた。
トマスは斥候に、奇襲できる道を尋ね、奇襲作戦は見事に成功した。
大砲は、使用されないまま、そこにあった。味方が退却した後、それを追う敵兵に向けて、この大砲を撃つことをトマスは決意する。
神はトマスに味方し、大砲で敵兵を撃退することができた。また、敵の狙撃兵を銃で狙撃し、倒すこともできた。ターイフに後退するまであと少し。しかし、トマスもトゥスンも疲れ切っていた。

第28章 つかのまの安らぎ
トゥラバからの必死の退却から1か月、トマスは、ターイフとメッカの間を行き来する日々が続いていた。
そこで、トマスは、ターイフに家を借り、アノウドを住まわせることにした。
ターイフの下宿の中庭には、ダマスクローズが咲いていた。トマスは、アノウドのための、そのバラを1日1本摘んでもいい、という約束を大家と結んでいた。
トマスの新居には、トゥスンも訪れ、トゥスンとアノウドは姉弟のように親しむのだった。
一方、その頃、エジプト軍の敵、ワッハーブ派の指導者、サウド・イブン・サウドが死んだ。

第29章 メディナ総督
ムハンマド・アリは、最近死んだメディナ総督の後継として、トマスを据えようとしていた。それを聞いたトマスは、躊躇する。なぜなら、メディナは、メッカと並ぶイスラムの聖地。異人種である自分に務まるとは思えなかったのだ。
しかし、ムハンマド・アリは、そのようなことには頓着せず、トマスを総督に任じた。
一度、ターイフの家に帰り、アノウドにそのことを告げると、アノウドもトマスに吉報を告げた。トマスの子を身ごもったというのだ。

第30章 メディナ入城
トマスは総督としてメディナに入城したが、3日後には、すぐにナジュド遠征が控えていた。
数週間、カッシムでの戦闘が続き、そして、ムハンマド・アリからの指示によってトゥスンは父と合流、トマスはメディナに帰ることとなった。

第31章 カッシム侵攻の賭け
ムハンマド・アリの侵攻によりトゥラバも陥落し、凱旋したムハンマド・アリは、捕虜となったワッハーブ派の兵士のうち12人をメッカで串刺し刑に処した。この結果、ムハンマド・アリは部族民たちの同盟を多く失うこととなった。
そんな状況を放置して、ムハンマド・アリは再びカイロに戻ってしまう。ナポレオンが流されたエルバ島を脱出したというニュースのせいだった。スルタンがこの機に乗じてエジプトをムハンマド・アリの手から奪い去ろうとしている可能性があったのだ。
その結果、トゥスンは、ひとり放置されたも同然だった。彼は、解放されたメッカを守るために、ほとんどひとりでワッハーブ派に立ち向かわなくてはならない。(トマスは、メディナに帰らなければならない。)
もし、何かあったら、「千里の遠きにはせてでも」必ず行くから、と誓うトマスだった。

第32章 窮地に陥ったトゥスン
窮地に陥ったトゥスンからの使者がメディナに到着したのは、アノウドの出産がもう今日か、明日か、といった頃だった。使者は、かつて、部族民の中から、トマスにつき従ってくれた族長の息子、ユセフだった。彼はトゥスンからの伝言を伝え、死んだ。
サウドの息子、アブドッラー・イブン・サウドが出撃していた。
トマスは、トゥスンの意志がどうであれ、メディナ総督として、全兵を出すことはできなかった。自分を含め250騎で出撃する、それがトマスの決定だった。その中に、トマスはメドヘッドを入れた。
出発までの短い間に家に帰り、トマスは、アノウドと束の間の時間を過ごした。

第33章 トマスの危機
斥候が知らせたところによると、ワッハーブの兵は騎兵1000以上、歩兵3000以上だという。
もし、トマスが来ているなら…危険な賭けだが、成功すれば両軍で挟み撃ちにすることができる。
トゥスンは進軍を開始した。

第34章 最後の戦い
トマスもまた、同じことを考えていた。
ただ250騎で立ち向かう以上、トゥスンと合流できなければ、死しか待ち構えていない。
トマスはメドヘッドにメディナへの伝令を頼み、死地へと赴いた。
しかし、メドヘッドはアノウドへの伝言を伝えることはできなかった。彼女は、夫の異変を感じ取ったのか、早朝、突然跳ね起きて、階段を踏み外し、お腹の子供もろとも事故死していた。
アブドッラーは、トマスの遺体を前に、敵ながらその偉大さを称えるのだった。

その後の物語
トゥスンと疲弊したワッハーブ派は、講和を結んだ。
メッカ、メディナはスルタンの支配下におかれ、カッシムや北の牧畜部族はアブドッラーの支配下ということになった。
しかし、ムハンマド・アリは数ヵ月後にこの条約を破棄し、長男のイブラヒムを長官に任じて新たな遠征軍を組織した。左遷されたトゥスンは、伝染病にかかり24歳で没している。

壮大な物語でした[あせあせ(飛び散る汗)]
そして、実は、舞台が終わった後の物語が100倍面白かったのですが、そこには、イブラヒム様が出ないので、やっぱり、あの時点で終わりにするしかなかったのね、と都合のいいことを考えている大空ファンなのでした(汗)


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