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「愛と死のアラビア」原作に挑戦 その2 [┣宝塚作品関連本等の紹介]

「原作に挑戦」のその2です。

既にお気づきのことと思いますが、「その1」の段階で、お芝居は終了します。
しかし、その時、原作本はまだ上巻の2/3辺りなのです。では、めげずに、書かれていないトマスのその後の人生です。

第11章 生への帰還
太守の奥方、アミナは、アッバス長官を自室に呼ぶと、一通の手紙を種にやんわりと脅迫を始める。そして、その秘密を守る代償として、トマスの命乞いをする。
アッバスは、そのことが逆に奥方の秘密を握ったように思いこみ、そのこともあってこの交換条件に応じた。
トマスは最後の朝を迎えた気持ちだったが、現れたイブラヒムは、彼に無罪放免を伝える。

第12章 トゥスンの結婚
2年前にアルバニア人の娘と結婚したイブラヒム・パシャには、まだ男児が生まれていなかった。
そのこともあり、トゥスンが初陣に出る前に結婚することが決まった。相手はカイロの族長(シャイフ)ミカルの娘。
トマスは花婿の友人として結婚式に参列した。とはいえ、結婚式には、新郎と新婦の父親しか出ない。
トゥスンは、自分が結婚したらトマスも結婚させ、二人の息子を兄弟のように育てたい、と夢を語るが、トマスは、顔も見たことのない娘と結婚することには、なかなか納得することができない。
しかしトゥスンは、会ってみて、好みの娘でなければ、いつでも離縁できるし、もう一人妻を迎えてもいい…と、気にしていない。
この結婚式の夜、トマスは、少々メランコリックな気分だった。独身の友人を一人失う気分、そして、結局、スーダン遠征への参加が太守に拒まれたこと、がその原因。
そんな時、トマスは、アジズの親友だったマムルーク、スレイマンが自分をじっと見ていることに気づいた。

第13章 誘惑の夜
トマスは30分ほどの短い時間だったが、ドナルドと再会することができた。
ドナルドも、トマスとおなじように、イスラム教に改宗していた。なぜなら、国に帰ったら彼は軍医ではないのに、ここでは医者として尊重されている。そして、もっといい身分を求めるためには、キリスト教でいるわけにはいかなかったから。
それでも、お互いが新しい世界を受け入れ、宗教を受け入れたことを祝福しあう二人。
そしてメドヘッドが新設されたアルバニア連隊の一つで副官になっていることも、ドナルドが教えてくれた。
それからしばらくして、メドヘッドがトマスを訪ねてくる。
彼は、トマスの部下になりたい、と言ってきた。トマスは、今の自分の仕事は訓練将校で、自分の部下になったら前線に行くことはできないのだ、と言う。そんなことは、どうにでもなるものだと思っていました、とメドヘッドは、屈託なく言い返す。
メドヘッドにとって神のごとき存在だった自分が、ちっぽけな人間であることを示し、メドヘッドを失望させたことがわかったので、トマスは落ち込む。
そして、ついナイリからの誘いに応じてしまう。
まだ少女のようなナイリだったが、シースルーの衣装を着て、不思議な香料を焚いた部屋で待ち構える彼女を見てトマスは欲望をそそられた。
しかし、彼女が教えてほしいと言い出した歌が、トゥスンに向けて歌った歌「乳兄弟」だったので、トマスは、ナイリを恐ろしく思い、目が覚めたようにその場を辞去した。

第14章 ナイリの奸計
スレイマンは、ナイリの愛人の一人だった。
アジズの復讐のためにトマスを殺害計画を練っている、というスレイマンに、うまくすれば、それをトゥスンの命令にすることができる、とナイリはアドバイスする。そして、自分が聴いたトゥスンの結婚式の夜のトマスの発言を悪く解釈してスレイマンに伝えるのだった。
ナイリはトゥスンを愛していなかったし、自分が得られなかったトマスの愛情を得ているトゥスンが許せなかった。
酔っている時に、讒言を聞かされたトゥスンは、とっさにトマスを殺してやると叫んだ。
これを聞いていた小姓のアリが、屋敷を抜け出して、トマスに緊急事態を告げた。トゥスンの酒癖が悪いのは有名だったので、このままでは、本当に暗殺隊がトマスを襲うと思ったのだった。
アリの発言を最初は信じられなかったトマスも、身を守るために武装して襲撃隊を待ち受けた。

第15章 刺客たちの襲撃
トマスは、10人の刺客に一人で立ち向かい、8人を殺した。(スレイマンともう一人が逃げた)
事前に計画が漏れていたことを知らずに襲撃してきたということはあるにしても、8人を一人で倒したのは大きな武勇伝だった。
親友を自らの命令で殺したと思い込んだトゥスンは落ち込んでいたが、生きたトマスに会え、その胸に顔をうずめて号泣した。その涙で、トゥスンが自分を買った日から、少しだけ残っていたわだかまりがすべて消えたことをトマスは知った。
ナイリは、この件でとうとう堪忍袋の緒が切れた母親によって、婚姻の計画が進められることになった。

第16章 マムルークの壊滅
ムハンマド・アリは、とうとうワッハーブ派に占拠されている聖地を解放する戦争を始めることにした。
ある日、太守の宮殿で、カイロのマムルークを招待した盛大な宴が開催された。
そしてその帰り道に、参加したマムルークは、太守の兵隊によって皆殺しにされた。ワッハーブ討伐のため、半数の兵隊がエジプトを後にしてアラビア半島に向かう。その時、マムルークがエジプトの実権を握ろうとする可能性は十分にあった。
必要なことだったとはいえ、卑怯なことでもあった。
トマスはこのことを聞いた時、吐きそうになった。マムルークは憎悪していたが。
今度の、戦争にはトマスはベドウィンの騎兵隊のうち二つの連隊を指揮することになっていた。そんなトマスのもとにメドヘッドがもう一度やってくる。今度は司令官になったトマスなので、自分を使ってほしいというのだ。
そしてメドヘッドは副官としてトマスに付くことになった。
一方オスマン医師となったドナルドは、カイロの大病院で働いている。もう戦地へ行きたくはないらしい。
アラビアに行く前に、トマスはドナルドに今生の別れを告げた。

ここから下巻になります。

血と砂 下―愛と死のアラビア (3)

血と砂 下―愛と死のアラビア (3)

  • 作者: ローズマリ・サトクリフ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本

第17章 アラビアへの遠征
トマスは、アラビア半島へ向かうため、スエズ港を出て紅海を下る。
ここで初めてこの小説のサブタイトル「愛と死のアラビア」が内容に沿うわけで、「その1」で終わったあの芝居が「愛と死のアラビア」なんてわけは、絶対にない。
まったくもってうんざりする。
途中、ヤンブーで上陸し、ヤンブー城に入城する。
トマスは破格の昇進により、アラブ人、トルコ人、アルバニア人の騎兵部隊全体の指揮官となっていた。一方、かつてトマスの上官だった(ええ、上官だったんですよ)ザイドは、その下でたった一つの騎兵連隊の指揮をとっていたが、そのことで二人の友情にひびが入ることはなかった。
ヤンブーに到着してわかったことは、戦況は決してトゥスンの側に有利ではないことだった。
しかし、賽は投げられた。メディナ攻略が決定した。

第18章 攻撃前夜
酒宴をもうけ、トマスとトゥスン自らが剣技を見せて、その勇猛さを見せつけたのに、周辺の部族は、エジプト軍、ワッハーブ派のどちらかに味方することを恐れており、情勢を見守りたいのが本音といったところだった。
エジプト軍の勝利が確定的になったら、後押しをすることはやぶさかでない、という雰囲気。
しかし、イエハイネ族の族長の身分の低い母を持つ息子、ユセフだけは、トゥスンとともに攻撃に参加すると言ってくれた。

第19章 ジェダイダの敗北
トゥスンの軍がメディナに向かう細い山道に達した時、アブドッラー・イブン・サウド率いるワッハーブ派の大軍が到着した。
すぐさま激しい戦闘になり、敗色は濃厚になった。
トマスは、退却の命令を出すが、トゥスンは、負けを認めるのが耐えられないかのように、前進し続ける。
ザイドにトゥスンの後を追うように頼み、トマスは、部下をまとめてからトゥスンの救助に向かう。トゥスンは、勇敢に戦い続けていたが、そこにザイドの姿はなかった。
アブドッラー・イブン・サウドは、この時、父親に、トゥスンとトマスの勇敢さを報告している。

第20章 メディナへ
ザイドの馬が帰ってきた。
主人を乗せずに。大量の血を浴びた馬は、そのまま繋がれた。
それから8か月。息子から報告を受けた太守は、軍資金や武器弾薬をヤンブーに送ってきた。増強部隊も派遣された。そして、副司令官として、アーメドが派遣された。
トゥスンは、アーメドがトマスの上官になることを、こころよく思わなかったが、トマスはそんなトゥスンをなだめた。
ジェダイダも無事に通り抜け、メディナに到着したが、そのぶ厚い城壁を見る限り、そこは難攻不落に思えた。
アーメドはトマスに、坑道を掘って城壁を爆破するように、という命令を下す。

第21章 メディナの略奪
激しい戦闘が一日あって、アーメドは街を落とした。
メディナ守備隊長は、条件付きで降伏し、アーメドは3日分の食料と水を持って市を出ることを許した。
しかし、その約束はその晩、反故にされる。
卑怯なアーメドからの夕食の誘いを断って、トマスは家に帰った。遠くで、女の悲鳴が聞こえる。無法な略奪が続く街の悲鳴を捨ててはおけず、トマスは夜の街に飛び出して行った。

ここでだいたい2/3が終わった。
次でようやくアノウドが登場する。
どんなに無理やりな芝居だったんだろう…というか、これ、宝塚に向いていたんだろうか?


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コメント 2

でるふぃ

夜野さま、ありがとうございます。
イブラヒム・バシャの名前が出なくなった頃から、
斜めに読んでいたので、こんなお話だったとは・・・知らなかった。
後の方が、おもしろそう?

「血と砂」という題名は、そのまま、使えなかったんでしょうね。
「愛と死のエジプト」より、「愛と死のアラビア」の方がスケールが大きくて、
インパクトありそうだから、このタイトルにしたんでしょうか。

先ほど、世界地図帳をめくっていて、外国製だったので、
アラビア半島と、エジプトの間にある海に、RED SEA と表記があり、
それを見つけて、おうっと、心の中で湧き上がる、熱いものがありました。
あのショーは、好きです。

by でるふぃ (2008-09-20 23:01) 

夜野愉美

でるふぃさま
そうですね。面白い場面は前半にも後半にも散らばってる感じです。戦闘シーンなんかは地理がわからないとイメージが湧きづらいので、読んでてちょっと退屈なところもあります。
トマスが剣をふるってガンガン戦っている場面なんかは面白いですが。

日本で「血と砂」というと、やはり、ケロさんと祐飛さんの演じたあの作品(闘牛もの)が一般的ですし、本のサブタイトルをそのまま舞台のタイトルにしただけ、かもしれませんね。

紅海は英語ではRED SEAですよね。ちょっとした芝居とショーの共通点かもしれませんね。Red Hot Seaは、南の海っぽいですが。
by 夜野愉美 (2008-09-22 00:47) 

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