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月組東京公演「ME AND MY GIRL」観劇 その1 [┣宝塚観劇]

UCC&シャディ ミュージカル
「ME AND MY GIRL」 

作詞・脚本:L・アーサー・ローズ、ダグラス・ファーバー
作曲:ノエル・ゲイ
改訂:スティーブン・フライ
改訂協力:マイク・オクレント
脚色:小原弘稔
脚色・演出:三木章雄
翻訳:清水俊二
訳詞:岩谷時子
音楽監督:吉崎憲治
編曲:前田繁実、脇田稔
音楽指揮:伊澤一郎
振付:山田卓、麻咲梨乃、若央りさ、藤井真梨子
ハットトリック指導:ケンジ中尾
装置:石濱日出雄、関谷敏昭
衣装:任田幾英
照明:今井直次
音響:大坪正仁
小道具:伊集院撤也
効果:切江勝
歌唱指導:矢部玲司

言わずと知れた人気ミュージカルの3度目の再演。初演は1987年、この時は、史上初めて次の同組公演が続演となり、つまり1987年月組の大劇場公演は、ミーマイを2回やったことになる。次が、天海・麻乃コンビの退団公演となった1995年、震災の後、まだ花の道の修復もままならない頃に、震災で客足が遠のいた大劇場に、再びたくさんの観客が戻るきっかけのような公演だった。
そんな伝説のミュージカルに、2008年の月組が挑んだ。
今回の話題は、トップ娘役・彩乃かなみの退団公演であること、そして、伝説の初演パーチェスター・未沙のえるの再登場
でもって、大空ファンにとっては、“大空祐飛のいない月組公演”でもある。
まあ、それは、先に、花組公演を観ていたので、そんなに気にならず、フィナーレナンバーになって、“そういえば、前の公演は、このメンバーの中で踊ってたなー”と思ったくらいだった。

さて、このミュージカルは、1場が非常に長いので、場面ごとではなくて、ナンバーごとの感想、みたいな感じで書いていこうと思う。
ちなみに、私は初演は観ていなくて、天海版の再演も1回しか観ていない。但し、初演はCDを持っていて、天海版はビデオを持っている。そしてDVD-BOXも買ってしまったので、ある程度なら過去公演もわかる、というレベル。
書いているうちに、前の公演との比較になることもあると思うが、何か思い違いなどがあったりしたら、ご指摘いただきたい。

第1幕

Overture
「自分のことだけ考えて」~「ME AND MY GIRL」
という楽しいナンバーで盛り上がる。「ME AND MY GIRL」では、別緞帳の真ん中に描かれた絵柄の周囲をハートがぐるぐる回るという可愛い演出も。

「ヘアフォードの週末」
この一曲で、すべてを説明してしまう、という素晴らしいオープニングの楽曲。
ヘアフォード家に招かれた紳士・淑女がスーツケースを持って、ロンドンからやってくる。たぶん30人位いるはず。こんなに招待できるなんて、どれほどの家なんだ、ヘアフォード家!
紳士・淑女が続々と到着すると、ジャッキー(明日海りお/城咲あい)が出迎える。ジャッキーも歌に入り、ヘアフォード家のお世継ぎが見つからない、弁護士が探しているという流れに。
ジャッキーの歌は、少しキーが低いらしく、娘役の声のままでは歌えないらしい。あいあいもここは地声で歌っていた。
そこへジェラルド(遼河はるひ)が2階から、弁護士が世継ぎを見つけた!と歌う。ジェラルドの横を、すまして通り過ぎる弁護士のパーチェスター(未沙のえる)が最高!
さあ、どんな男がお世継ぎなのか、盛り上がって、曲は終わる。すごい。この一曲で全部説明しちゃったよ。

次に、最初に登場したジャッキーとジェラルドの紹介。
「自分の事だけ考えて」
ヘアフォード家の財産をアテにしていたジェラルドは、お世継ぎ登場にショックを受けている。が、ジャッキーは、もうジェラルドを見限って、お世継ぎにターゲットを絞っている。
“今にみてごらん トップへ登るわ”
の歌詞は、いつ聴いても刺激的だ。
しかも、明日海が歌ったあと、遼河が「僕は一体どうなるんだ?」と嘆くあたり、冗談に聞こえない。
ジャッキーの周りには、なぜか【仲買人】(桐生園加・青樹泉・星条海斗・龍真咲・光月るう)がいて、自分勝手に歌い踊るジャッキーをフォローしている。
週末は市場も開いていないと思うので、彼らもヘアフォード邸で少し休日を楽しもうとしているのだろうが、ジャッキーとジェラルドの痴話げんかの間中、仕事の話で(←間違いない!)盛り上がっているのが笑える。

それにしても、歌の場面はともかく、芝居になると、遼河のジェラルドは、いったいどうしてしまったのか?という役作りだった。ぼくはー、とか、●●なんだー、とか、語尾をいちいち延ばすのは、なぜなんだろう?…と思えば、スタッカートに切ったり、意味が分からん。
ジェラルドは、貴族であることがレゾンデートルである青年だ。「働けばいいわ」とジャッキーに言われて、「家名に傷をつけるのか?」と聞き返すが、それは別に「働けない」とか「働く能力がない」という意味ではない。働かないことがステータスなのだ。そのかわり、いざ鎌倉という時は、誰よりも前線に行って命を捨てる。それが貴族の青年の在り方=高貴の身は義務を伴う=だから。
なんで、変な青年にしちゃったの?あひに千回でも聞きたい気分だ。

ここで一家の人間が登場する。
ディーン・マリア公爵夫人(出雲綾)、ジャスパー・トリング卿(北嶋麻実)、フレデリック・バターズビー卿(一色瑠加)、その夫人クララ(憧花ゆりの)…ジャッキー(ジャクリーン・カーストン)とジェラルド(ジェラルド・ボリングボーグ)を含めてみんな親戚とのことだが、全員苗字が違う…
つまり、一族みんなこのお屋敷に住んでいるということなのだろうか?
先ほどの1曲(ヘアフォードの週末)で、すべてを説明していると書いたが、実は詳細はよくわからない。何度再演を重ねても、全然わからない。謎は深まるばかりである。
たとえば、マリア公爵夫人は、ヘアフォード伯爵より身分が高いわけですよね。なんで、伯爵邸に住んでいるの?とか。家族は、どうしてるの?とか。まあ、ジョン卿がプロポーズするくらいだから、未亡人ではあるんだろうが。

ここで、そのジョン・トレメイン卿(霧矢大夢)が登場する。
一瞬にして、場の空気が変わる。
やっぱり、きりやんにはミュージカルが似合う。歌っても踊ってもいないうちから、これがミュージカルであることを体現している。すごい!

一族が、おそらく、ヘアフォード卿の遺産を受け取る権利のある一族が、一堂に会したところで、弁護士のパーチェスターが語る。
亡くなられたヘアフォード卿には、若気の至りというか、不幸な関係を持った女性がいて、二人はすぐに別れ、女は亡くなったものの、男の子が一人生まれている。遺言状にはその子が現れた場合の条項があり、今回、彼が現れたのだと。
それは即ち、バターズビー卿夫妻と、ジェラルド、ジャッキーにとっては、遺産相続のチャンスが永遠になくなったという意味でもある。まあ、ジャッキーは可能性がゼロではない。現れた青年と結婚すれば、間接的に遺産を手にできる。

というわけで、一族の前に、ビル・スナイブスン(瀬奈じゅん)が登場する。
一家はビルに質問を浴びせる。
どこに住んでいるか、とか、職業はなんだ、とか。ビルは、それに対して、色々な答え方をする。
駄洒落だったり、別の意味の言葉を使ったり、スラングだったり、言葉遊びに満ち満ちているこれを日本語に訳した故・小原弘稔先生のご尽力は相当なものだたろうと思う。
ただ、それがもう20年以上前のことなので、ここは、脚本をいろいろと手直しした方が、今の観客には伝わりやすい面も出てきているように思う。そして、脚本を書いた先生が演出するという宝塚の特長が悪い方に出ているのか、自分が脚本を書いていない芝居の演出力が著しく低い。
亡くなった小原先生の真意が完全に伝わらなくなっている。
であれば、三木先生が原文から翻訳し直して、三木先生のミーマイを作った方が演出意図が確実に伝わると思う。
瀬奈のセリフとマイムは、意味が通らないものが多かった。
ビルという自己紹介で、ビルディングを手で作って説明する、というのも、かなり苦しい。しかも、ビルを作るのに、同じ高さの四角を何個作っても、それはビルディングに見えないということから演出しなければ、本当の演出家ではないような気がする。非常に細かいことではあるが。

ビルは、ランベスでは普通の青年なのだろうと思う。
急に貴族の家に呼ばれてテンションも上がっていただろう。
そこで、ランベス流に最高のご挨拶をしたつもりが、貴族様には通じなかった。通じないことは、すぐにわかる。わかったって、どうしようもない。ビルはオレ流を貫くしかない。
なんか、ビルってかわいそう。貴族って冷たいなぁ…

というような、感想を持った。この場面で。
それは、ありだと思う。一つの解釈として。でも、そういうビルだとHAPPYなミュージカルにはならない。悪い人が誰も出てこないミュージカルでもない。
とにかく、なんか、すごく丁寧な芝居を見た気分になった。

ビルがつむじ風のように去って、ジョン卿は、この青年にヘアフォード家を継がせてはいけない、と言う。
貴族らしからぬビルが、マリアの負担になることを心配しているのかもしれないし、単純に相応しくないからやめておいた方がいい、という後見人としての冷静な判断なのかもしれない。
霧矢の芝居には、迷いがないので、そういうことはあまり気にならないし、ここではジョン卿は反対なんだな、ということが分かればいいのだ。
しかし、マリアは、ビルの正当な権利のために、彼を教育し、ヘアフォード家の跡取りとして育て上げることを一人で決めてしまう。

ここで、有名なナンバーが入る。
「家つき弁護士」
未沙のえるは、21年前の初演でパーチェスターを演じた。
その演技は伝説となっていたそうだが、当時の未沙は研15だったわけで、それを考えると今の生徒は幼いというか、成長が遅いのかもしれない。
とにかく、このナンバーはめちゃくちゃ楽しい。
娘役たちは、娘役としてギリギリの振付に挑戦しているが、完全に振りきれた憧花のダンスと表情に注目だった。綺麗な顔して、どこまでもやる役者根性のある娘役だと思う。憧花と同期の城咲は、2番手娘役として、この振付に挑戦しているが、何をしても可愛らしさが出ているのがすごいと思う。
これだけプロの娘役も、今どき珍しい。
そしてマリア役の出雲綾。
マリア役は厳格な役だと思ってきたが、出雲のマリアは決して厳格なだけの女性ではない。それが後半に生きてくるのだが、その魅力がまず発揮されたのが、ここのダンスだ。実に楽しそうに踊っている。
そんな娘役陣を相手に男役陣はどうか、というと、やはり未沙に目が奪われる。
あの軽妙なダンスは、未沙ならでは。
そして、霧矢のジョン卿が素晴らしいのは当然だが、バターズビー卿を演じた一色が控え目ながら、ちょっと情けない貴族らしさをしっかり体現していて目をひかれた。
ジャスパー卿の「このお屋敷に抜け穴があるんですかな?」というセリフに、夫婦で「ないです、ないです」と答えながら退場する件が、妙に好きだった。

さて、ビルには、魚市場で働く恋人のサリー(彩乃かなみ)がいる。
サリーの登場からは、ページをあらためて、書いていきたい。


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