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国立劇場十二月歌舞伎公演「元禄忠臣蔵」(第三部)観劇 [┣演劇]

いよいよ、元禄忠臣蔵も今月で終わり。
松本幸四郎の内蔵助、そして討ち入りのあった十二月公演、三部作の最終月、ということもあり、チケットは即完売。私は、ようやく追加公演を購入しての平日観劇となった。
三ヶ月連続で観劇すると、国立劇場から記念の手ぬぐいをいただける。
↓それが、これ。タイトルの横に、内蔵助を演じた三人の役者のサインと大石の絵が染め抜かれている。

真山青果作「元禄忠臣蔵」通し上演の第三部である。
今回は、「吉良屋敷裏門」「泉岳寺」「仙石屋敷」「大石最後の一日」の四編を観劇した。主役の大石内蔵助役は、今月は、松本幸四郎である。

「吉良屋敷裏門」
当然、討ち入りシーンをしっかりやってくれると思ったら、ナシ(笑)
これは、意表をつく、というより、芝居としてどうなんだ?と素朴な疑問。
ただ、歌舞伎で有名なだけに、同じにならないように、ということに気を遣ったのかも?(そういえば、刃傷シーンもカットだったし)
リアルな人間ドラマが見られたのは、芝居好きとしては面白かったが。
寺坂吉右衛門の離脱騒動を経て、ようやく、内蔵助(幸四郎)が登場、一同が勝鬨をあげる。ご丁寧に三度あげていた。
磯貝役の信二郎が、通し役で、2番手的な役どころ。これが実に美しい。
歌六の安兵衛も二枚目ではないが、いい男だと思う。二枚目、という点では、間十次郎(高麗蔵)ものっぺりしていてよかった。

「泉岳寺」
前場面で、間十次郎と武林忠七(秀調)の間でどっちが一番槍(or太刀)をつけたかでもめる場面がある。この場で、焼香順位一位を十次郎、二位を忠七と内蔵助が決めたことで、十次郎は躊躇する。あのパニックの中で、誰が一番先に上野介に傷を負わせたかなんて、本当のところはわからない。
が、忠七が十次郎を促すことで、無事焼香が終わる。
義士たちは、この場で切腹すると思っている。が、内蔵助には、そういう気持ちはなかった。彼はご政道に異議を唱えるためにこの討ち入りを敢行している。だから、ここで勝手に切腹などはできないのだ。
ご政道に対しての抗議行動としての討ち入りであれば、幕府の処分を受けてはじめて抗議の内容に対する幕府の答えがわかる勝手に死ぬわけにはいかないのだ。
一同が焼香を終えて立ち去ろうとする時、高田郡兵衛(門之助)がやってくる。
もし上杉勢(上野介の息子は、上杉家に養子に入っていたため、上杉家が復讐に立ち上がったら…という懸念があった)が来たら、一手に引き受けると言って槍を持っている。
親友の堀部安兵衛が、そんな郡兵衛を諌める。どんな理由があろうとも、脱落した郡兵衛は、脱落者なのだ、と。名誉はないが、生き続けることはできる。だから、達者で暮らせ、と、安兵衛は言う。
頭がよくて先が見えたから、郡兵衛は脱落した。利口者なら、仇討などはしない。そう諭す安兵衛は、真の意味で頭のいい武士だな、と思った。

「仙石屋敷」
幕府大目付、仙石伯耆守(三津五郎)の屋敷に吉田忠左衛門と富森助右衛門が仇討の届出をする。取次ぎの用人までもが、仇討の成功を喜んでくれる。
通常、届け出る「奉行所」ではなく、大目付の屋敷に訪れたのは、この仇討を「幕府に裁いてもらいたい」という大石の意思だ。
検分の日。仙石伯耆守は、かなりノリノリで、詳しい状況を大石らに語らせる。
実際の討ち入り場面がない分、義士に語らせ、それを検分する仙石伯耆守らが、感動しながら聞いている、というだけで、十分に伝わるものがあった。
この場面では、義士たちの互いを思いやる心に感動。
その証言をうまく取り上げて捌いていく、仙石伯耆守役の三津五郎が手際よく、人情家でもあって、ステキだった。

「大石最後の一日」
処分が決まるまで、各大名家にお預けとなった46人。(寺坂は浅野家へ報告するために出頭前に隊を離れ、彼が討入に加わったことは、仙石伯耆守の調べでも語られなかったので、お預け→切腹を免れる)
細川家にお預けとなった、大石に、細川家の嫡男(15歳)が、一生の宝となるような言葉を、と願う。大石は、「人はただ初一念を忘れるな」という言葉を残す。
最後のエピソードは、磯貝十郎左衛門の恋。
磯貝は、浪人乙女田杢之進の娘、おみの(芝雀)と婚約していた。が、討入が決まって出奔、取り残されたおみのは、磯貝の心が自分にあったのか、それとも討入という大望を遂げるための隠れ蓑であったのか、それを知りたくて、男装して細川家に入り込んでいた。
大石に呼び出された磯貝は、決して本心を明かさなかったが、大石から、見合いの席で弾いた琴の爪を肌身離さず持っていることを指摘され、とうとう、本心から婿であったと告げる。
そして大石らに切腹の沙汰が下される。と同時に、目付、荒木十左衛門(歌六)は、公の発言としてではなく、吉良家が断絶し、後継ぎの義周は信州にお預けとなったと伝える。こうして、ようやく、喧嘩両成敗のご政道は、守られたことになり、大石は、涙ながらに礼を言う。
一方、おみのは、磯貝の誠の心を聞いて満足し、義士たちの切腹前に、自らも命を断つ。
最後の最後に芝居らしい盛り上がる場面を持って来て、このリアルな歌舞伎、元禄忠臣蔵は幕を閉じる。

主演の松本幸四郎、実は歌舞伎で観るのは初めて。
あの、両眉が異常に接近した化粧は、いつもなんだろうか?かなり奇異な感じがした。(すみません、素人なもんで…)
終始抑えた演技が必要な大石内蔵助だが、抑えた中に、彼の信念が見て取れる、わかりやすい演技だったと思う。
二枚目の役どころだった中村信二郎と相手役の中村芝雀は、美男美女でステキだった。磯貝は、お預けの間、ずっと「むしり」(月代が伸びてザンバラになった状態)という鬘なのだが(しかも一人だけ)、最後の切腹に赴く場面だけは、月代を剃り直している。それは信二郎さんの信念らしい。たしかに、むしりより月代を剃った方がずっと綺麗。
(ちなみに大石は、月代を伸ばしているのだが、髪が薄くなっているっぽい髪形だった。)
中村歌六は堀部安兵衛も荒木十左衛門もどっちもいい役で、演じていて気持ちいいだろうな、と思った。両方とも熱演。
あと、やっぱり今月は、坂東三津五郎に尽きる色気があって、緩急自在で、本当に気持ちよく見ることが出来た。

【去年の今日】
二週間ぶりに観劇して、みっちゃんに色気の芽生えを感じたらしい。(ファンの方からしたら、遅すぎ…なんでしょうが…)
今は、宙組のみっちゃん。頑張ってるかなー?


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