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頑張れ、南海まり! [┣南海まり]

私の観劇仲間では、「不幸の中で微笑を絶やさない南海まり」に人気が集中している。
もともと南海まりは、上品で愛くるしい笑顔が魅力の娘役だ。
私が注目したのは「花の業平」(東京公演)だった。キャスティングミスなのだろうか、この麗しいみなみちゃんは、よりによって市井の物売り一派にいた。そしてぶんちゃん(絵麻緒ゆう)扮する梅若に声をかける。「本当はいいうちのぼっちゃんなんだって?」そして、「ほんとかどうか、ためしてみるか?」みたいに気安く触られちゃう役…。「はきだめに鶴」だと思った。思わずプログラムを開いて、出演者を確認したくらい綺麗だったし、可憐だった。

そんなみなみちゃんに転機を与えたのは、「萌え」のみを追求して作品を作り続ける男、齋藤吉正
2002年秋「ヴィンターガルテン」のカテリーナ役は、その後のみなみちゃんの運命を決定付けるものだった。
主人公のクローゼ(朝澄けい)は、その爽やかな容姿と優しそうな態度で女性にモテるが、実は、ナルシストで親友のクラウス(真飛聖)を愛している。(クラウスもクローゼを愛しているが、二人はお互いの感情が愛だとは終生気付かず、それぞれに女性を翻弄してしまうはた迷惑なやつらである。)
カテリーナもクローゼに惹かれる。そして、一緒に逃亡し、いつの間にか結婚して子供を産んでいる。カテリーナは「私、幸せよ」といつも言っている。クローゼはまったく妻を顧みていない。口先だけの優しさである。だいたいユダヤ人の妻を連れて戦時中のドイツに密入国するなんて、それは妻を愛している夫のすることではない。夫は自分の都合しか考えていない。そしてクローゼは、密入国した後、撃たれて死亡。カテリーナはアウシュビッツで亡くなった…とセリフで語られるのみ。
そんなカテリーナの不幸度アップに貢献しているのが、彼女の口ぐせ「幸せよ」と演じるみなみちゃんの慈愛に満ちた笑顔だった。そう、慈愛に満ちた笑顔…。

次の大劇場公演「ガラスの風景」では、ダンス場面などで真飛と組んで踊っていた。
真飛は、みなみなど眼中にない。だいたい、いい家のぼっちゃんだが、危ないことをやっていそうなキャラである。そんな真飛をみなみちゃんはずっと見つめている。「私はあなたのすぐそばにいるのよ」的な笑顔を浮かべて。報われない。報われてもたぶん不幸になる。
みなみちゃんの近くには、もっと健全で優しいぼっちゃんがたくさん集っている。
でも、みなみちゃんは、不幸を振りまきそうな真飛を見つめる…。

以後、私達はみなみちゃんの役の不幸を想像しては、その笑顔を堪能してきた。そして…
役ではなく、みなみちゃん本人を題材に最大の不幸が提供されてしまった…。

退団する麻園みき・汐美真帆のために3組のデュエットダンスが中詰に用意された。
歌は二人の同期である高央りお。
パートナー役は副組長の万里柚美と南海まり。
最初、コンビは逆だったらしい。南海ちゃんは背が高い。身長的に考えても、長身の麻園にみなみちゃんというのが妥当だったと思う。が、振付の関係でコンビが変更になった。まるで運命のように。
かくして、みなみちゃんの慈愛に満ちた笑顔が、我らがケロさんに向けられることになった。
ケロさんは、パートナーを本当の恋人のように見つめる。だから、振り向いてもらえない人を愛している…という不幸ではない。どんなに愛し合っていても、それは、期間限定の、別れが決まっている愛-そういう不幸だ。
そういう状況において、「だから深入りしちゃいけない」と自重する男もいる。けれど、ケロさんというのは、「それでも100%愛する」人なんだな。残された人は、後で失ったものの大きさに打ちひしがれるけど、そんなことは知ったこっちゃないとばかりに。
このコンビをきっかけにみなみちゃんはケロさんにとても気に入られたらしい。
ディナーショーのメンバーにも選ばれ、たっぷりデュエットダンスを踊り、「夜のボート」を歌った。
そして東京公演のデュエットダンスも有り余る愛を降り注いで去って行った。

みなみちゃんの不幸は、本人がその不幸に気付いていない点が最大の不幸だった。
今回の不幸は、本人も気付ける質の不幸だ。いなくなると分かって愛し、最後の日も、涙を流しながらそれでも微笑んでいたのだから。不幸を知って南海まりの慈愛に満ちた笑顔は、どう変わっていくのだろうか?頑張れ!南海まり!!

PS.組替えで、「みなみちゃんとキャラがかぶる」と評判の白羽ゆりちゃんが星組に来て、みなみちゃんの上に入る。そういうポジション上の不幸もまたみなみちゃんに似合いである。
もっとも、厳密に言えばキャラはかぶらない。背が高くてちょっととろそうな可愛い娘役というところまでは合っているが、となみちゃん(白羽)には不幸な中で「私、幸せよ」ととんちんかんに微笑むキャラは似合わないのである。


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